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82.輸送隊【鉱国】を目指して

 ■ ドワーフ ■

 ファンタジー定番の種族である。

 鍛冶が得意で膂力があり矮躯である。

 そして、何より髭が特徴的なほど立派である。くれぐれも馬鹿にしたりしないように。気分を害して何も売ってもらえなくなるかもしれない。

 ちなみに女性は矮躯であるが、顔つき等は歳相応に変化する。髭は大量に生えない。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 思った以上に準備に時間がかかってしまったが、ようやっと旅に出ることになった。

 目的はなんであれ、旅をすることに大きな期待があるのは確かだ。とても興奮している。


 折角RPGをはじめたのにずっと【帝国】に引きこもっていた理由が今となっては分からない。

 まあ、スキンヘッドのおっさんに流されるままに任務を繰り返してたからなんだけども。


 しかし、だからと言って今までの任務の日々を後悔している訳ではない。むしろ、戦闘スタイルにしても取得したスキルにしても自分に合っているとしか思えない。

 もしかしたら、プレイヤーの性格や向き不向きなんかを読み取り、促す方法でもあるのだろうか?

 素直にNPCの言うことを聞いておけば必要なものはちゃんと揃うのだ。

 ある意味では自分の中に最初からある物が引き出されたような。そして自分に欠けた物が埋まっていくようなそんな感覚だ。


 だとしたら、自分と教官の出会いは運命だったのか?つまり自分のヒロインは教官・・・・


 うっかり発想があちこち飛んだ挙句に気持ち悪いことを考えてしまった。


 平和でのどかな環境で歩いているとまるで散歩をしている時のような状態、ある意味でフローにも似た感覚になるが、どうにも発想があちこち飛びすぎて訳のわからないことになる。

 まあ、それが楽しいのだけど。


 今はNPCの輸送隊を連れて【鉱国】に向かっている。途中魔物に出くわすも街道沿いを歩く分には強魔物は出てこないようだ。あっさり数の暴力で撃滅。

 そして本格的に旅を始めると初めて知る事が色々とあるものだ。

 例えば道端のセーフゾーンでログアウトできるはずが、輸送隊を率いている場合は村か町の様な人のいるところじゃないと不可だったり。

 【兵舎】や【営業所】のような拠点じゃなくとも宿屋でログアウトできたり。

 NPCには何気にスタミナのような物が設定されているようで、あまりに無理して歩かせると疲れて動けなくなるので、時々休憩をしなければならなかったり。

 ちなみに【兵士】系の任務の時は皆鍛えてたから大丈夫だったのか、もしくは誰かしら『休憩しましょう』って言ってくれたので、気がつかなかった。


 休憩ついでにそこいらで<採集>を使って草をむしってみたり、石ころを拾ってみたりする。草なら薬草やハーブや食材なんかが取れるし、石なら鉱石の破片や宝石だったりする。

 宝石と言っても数が取れる天然石みたいな感じだが、嫌いじゃないので取っておくことにする。


 ひたすら大河沿いを溯る様に東へと歩を進める。左手側つまり北側はずっと山だ。高くなったり低くなったりするが、まるで人を寄せ付けないように鬱蒼としている。


 時折、川上から船が下ってくるが【鉱国】から【帝国】への物資運搬船だろうか?

つまり下りはいいが、上りの輸送が滞っているのだろうか?

そうでなければ【鉱国】は特殊金属の産地でプレイヤーの生産職も集まっていると聞くし、よほど良い金属製品が輸入されているのだろうか。


 しかし、クラーヴンは鉄が一番バランスが良いって言ってたし、自分はあまり食指が動かない。

 まあ、ミスリルとかは見てみたいけど、見れればそれでいい。


 まだ見ぬ【鉱国】に思いを馳せながら数日、毎日少しづつ村や町を進んでいくと行き止まりだ。

 大河はまだ続いているが、完全に山間に入ってしまう。

 そして左手を見るとぽっかり山に穴が開いている。脇には詰め所の様なものが建っているので、誰かいないか確認してみることにすると


 如何にもな重装兵らしき髭もじゃの人が詰め所らしき小屋の窓からこちらに声をかけてくる。

 

 「その格好は【帝国】からの輸送隊か?一応、用件を聞かせてもらおう。特に入国に規制は無いがな。見たところ指名手配犯もいないようだしな」


 とのことなのでここは素直に応えることにする


 「どうもこちらの輸送隊は【帝国】から食料の【輸送】を頼まれましたので、【営業所】に収めた後、商業組合で捌いてもらう形になります。自分も鞄にある程度売る為の商品を詰め込んでいます。

 ただ、それらを預けた後自分だけは別行動で、貴国の軍関係者の中でも出来るだけ偉い方にお会いしたいのです。本当は偉い方とはお近づきになりたくないのですが、生憎と【兵士】の任務としてどうしても行かねばならない場所があるので挨拶させていただきたい」


 「なんか妙な言い方だな。本当に嫌々お偉いさん方に会いたいようだ。まあ、とりあえずは街に入るといい。荷物を置いてから上へのつなぎを付けるのが良いだろう。ついて来い」


 そう言って窓から顔を引っ込めて、横にある出入り口から髭もじゃのおっさんが出てくる。


 随分奥行きのある建物だな?と回り込んで建物を確認するが、異常は無い。異常なのはおっさんが小さすぎることだった。

 それにしてもどうやって窓から顔を出してたのかと小屋を覗き込むと踏み台がある。


 「ああ、もしかしてドワーフだったりしますか?」と訊ねると


 「あ?気がつかなかったのか?この立派な髭と厚みのある重甲な体躯はドワーフの証なんだがな」

 

 「じゃあ、やっぱり鍛冶が得意だったりするんですか?」と重ねて訊ねると


 「俺は暴れるの専門だな。鍛冶なんかが得意なやつは他に沢山いるから街を回ってみると良い。だが、お前さんはお偉いさんに用があるんだろ?【兵士】の任務って言ったな。だったら【兵舎】の方だ」


 そんな話をしながら山にあいた穴の中へと歩を進めると、そう行かない内に大きな扉があり、横のレバーやら器具やらを髭もじゃのおっさんが操作すると扉が開く。

 扉の内側にはまた別の髭もじゃの小さいおっさんがいて、一言二言言葉を交わしたかと思うと案内を変わる。

 最初のおっさんは元の小屋の方へ帰っていった。

 隊のみんなで中に入り新たなおっさんについて行く。


 そこには街が広がっていた。しかし上は土の天井だ。そこ、ここに街灯のようなものがあり、明るく保たれているが、まさに地下国家と言った具合だ。


 【運び屋】の【営業所】に着いたので、輸送隊を一旦解散し、持ってきた荷物を預ける。そして自分の持ってきた酒も5樽残して預ける。

 【古都】の【営業所】のおっさんと似たようなターバンを巻いたドワーフがいたので【兵舎】の場所を聞き、向かうことにする。


 拍子抜けするほど平穏無事に【鉱国】にたどり着いてしまったが、ここからが問題だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] エルフが森国に居ないって話だからドワーフも居ないのかと思ってました
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