表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/613

76.旅の準備

 ■ 運び屋 ■

 荷物の運搬を仕事とするジョブ

 元より運搬を専門としていた訳ではない。むしろ一箇所に留まらずに生活する者やあえて辺境地に入り込む者達が収入を得る為の副次的な業務であった。

 しかし、いつの間にか世の物流の一部を担う様になってしまった。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 さてと何から手を付けて行こうか。


 ようやっと死と再生の蛇を倒すことが出来たが、まだ氷宝樹からの依頼は残っている。

 氷宝樹の兄弟達に会い、様子を見てくることだ。

 まあ、どこにあるのかも分からないのだが、そんな事を考えながら【兵舎】の受付に行くとデジャヴか?兵長と幕僚総監が話している。


 デジャヴじゃないか、何か覚えのあるシチュエーションだ。


 「やあ、久しぶりだね。無事蛇は倒してくれたようで助かったよ。

 【教国】の連中は今まで粘っていたのが嘘のように帰って行ったよ。どうやら蛇にご執心だったようだが、結局本当の目的は分からずじまいだったね」


 「お久しぶりです幕僚総監。【教国】の事は分かりませんが、次は樹の件を進めないといけないですよね?」


 「そうなんだが、そもそも宝樹が何なのかは知っているのかい?」


 「しゃべる不思議な樹ですかね?氷みたいな見た目の」


 「なるほど君はそういう認識なのか、宝樹は対邪神装備、つまり君の背負っている宝剣の素材となっているんだ。より具体的に言うと宝樹の根の部分がね。

 かつて天より降り立った美しき神の尖兵または神の使いと呼ばれた者によりその製法が伝えられたとされている。

 それ故に宝樹本体を枯らすことの無きよう十分な管理をそれぞれの国で行うことが国家間の協定で決められている。採取していい素材の量や交換する量についてもだ。

 お金とは交換できないし、国交上にどんなに有利不利があろうとも宝樹の根の流通に関してはそれに不平等が絶対にあってはいけないことになるほど重要なものだ」


 「そりゃあ、自分みたいな一介の中隊長の出る幕じゃないですね。今までどおりの任務に戻りま・・・・」


 「君はその宝樹から直接依頼を受けているからね。

 宝樹と話せる機会がある者なんて限られているのにもかかわらずね。

 我々としては宝樹の存在をあまり大っぴらにしたくは無いし、今回は瘴気がらみのため秘密裏に各国首脳部に情報を伝えた結果。

 君に特派員として宝樹の有る国々を巡ってもらうことになった」


 「いや、『なった』ってまたそんな」


 「しり込みしても仕方が無いだろう。それだけ大変な任務になるだろうからね。しかしこの件はすでに皇帝陛下の耳にも入っているし、許可も出ている。

 さらに言うと少しでも他国で動きやすいように君に新たな肩書きを与えることもすでに内定している。

 だが、私も鬼ではない。君に選択権を与えたいと思う。

 1.出陣式をして大々的に送り出す。

 2.内々に大本営で内示を受けて各国のごく一部だけに知らせを出して、秘密裏に解決する。

 私としてはやはり1を推すかね。君は自分の功績に見合った・・・・」


 「2でお願いします。それで、自分のやるべきことは?」


 「うん、それでいい。まずは旅支度を整えること。後こちらから連絡をした場合、速やかに礼服に着替えて【帝都】大本営『イグラント』に出頭すること。

 以上だ。後は各国の意向とぶつからない様にしつつうまく事を運んでくれ、無理さえしなければこちらから咎めだてするようなことも無い。何より長い旅になるだろうから、そのつもりで。

 私からは以上だ」


 「了解しました」


 なんともまた大変なことになりそうだと思いながら幕僚総監を見送る。

 しかしポータル使えば旅なんてあっという間の気がするがそうは行かないのだろうか?


 「その顔はポータル使えばあっという間じゃないかって顔だな?」


 兵長には相変わらずこちらのことは全てお見通しのようだ。


 「ええ、まさしくそういう顔なんですけど」

 

 「氷宝樹をはじめ、宝樹ってのはおおよそ人の行きづらい場所にあるらしいぞ。

 つまり旅をしつつもそういった不便な土地を抜けるための方法を模索をしろってことだ。

 各国からはそもそも応援要請すら来ていないんだ。

 こちらの状況を報告してお前を送り込むことを飲んでもらった。宝樹の意志としてな。

 つまりお前が行くしかないし、国に入り宝樹と面会する許可こそ出るだろうが、それ以上の協力をしてもらえるかと言えば別の話だ。

 まあ、他にも理由はあるんだが、とりあえずお前には自分の足で世界を巡ってもらうことになった」


 「また、『なった』ですか」


 「お前に選択権も拒否権も無い」


 「そして幕僚総監よりもひどいよ」


 「その代わり、幕僚総監のようなフワッとした指示ではなく具体的な方法を教えてやる。

 【運び屋】の【営業所】に行くといい。

 そこでジョブを得ることで旅に不可欠なスキルが手に入るだろう」


 「了解、じゃあ新たなジョブを取得に行って、旅に必要なスキルを得て、旅に必要な道具を調達してきますよ」


 「それで、いい。行ってこい」


 とのことなので、まずは【営業所】に行くことにする。

 場所は【古都】の中だし、この辺りの土地勘ならば何の問題も無い。

 そしてそこの受付にはターバンを巻いたおっさんがいる。なかなか精悍な雰囲気だ。この人も世界を旅してきたのだろうか?


 「おう、いらっしゃい、荷物の預かりか?受け取りか?」


 「どうもはじめまして、こちらに登録してジョブを得ようと思って来ました」


 「なるほどな【運び屋】志望か。見たところすでにジョブは得ているようだが?」


 「一応【士官】と中隊長が今のジョブなんですけど、旅をしなくちゃいけない事情が出来まして、こちらに登録に来ました」


 「ふむ、じゃあ簡単にうちの説明だ。世界中にある【営業所】で荷物を預かり、特定の場所または特定の人へと届ける。以上だ」


 「なるほど分かりやすくてすばらしい仕事だ。【兵士】じゃなくてこっちをはじめのジョブに選べばよかったかもしれない」


 「おい、普通はそんな説明じゃわからねぇよ!とかそういうリアクションをするもんなんだがな?

 まあ、実際の内容はやりながら覚えればいいし、やってみなけりゃ何が分からないかも分からないだろう。

 何でも分からないことがあれば聞くといい、後一つ大事な約束だが世界の様々な情報を扱うのもうちの仕事だ。情報の提供を求められたら嘘偽りなく報告する事。当然報酬は払うからな」


 「了解」

 

 「よし、じゃあジョブが【運び屋】になった。中隊長は外すぞ?まあ、もうひとつが【士官】だし無駄にはならないだろう。」


 「えっと、何故中隊長残しじゃ無いんですか?」


 「その辺りはちゃんと兵長と相談済みだ。【士官】がもうすぐこちらに来るだろうからと言われてたからな。

 何でも各国を旅することになるんだろ?そうなると中隊長のジョブについても別の生かし方が・・・・いや、何でもない。 

 取り合えずだ。日頃から【輸送】任務を請け負っているそうじゃないか、ついでに国内を巡って荷物運びの仕事をすることで、貢献度を溜めるといいだろう。

 <登攀>なんかの山を移動するのに便利なスキルや<採集>のような素材集め系の基本汎用スキルなんかもあるといいかもしれないな。

 戦闘系スキルこそ少ないが何なら<ダガー>や<ナイフ>なんかを取れば戦闘だけでなく生産に使用したり補正をかけたりすることも出来るんだ。悪くないだろう?」


 「了解しました。とりあえず現在の自分で受けられる範囲で出来るだけ【帝国】東部の仕事を斡旋してください。マメに【兵舎】に顔を出さないと、いつ【帝都】から呼び出しを受けるか分からない状況なので」


 「分かったいいだろう」


 と言うわけで、今後は【輸送】ついでに【運び屋】のクエストも受けることにする。

 後は旅に必要な道具を揃え無いといけないな。先ほどの話だとダガーが必要になるだろう。そうするとプギオだけでは耐久値が心もとない。

 その他にも諸々必要な物があるだろうからよく相談して準備するとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ