73.メスはでかいそれが自然界だった
■ 雪鳥蜥蜴 メス ■
雪国の一般的なフィールド魔物、雪鳥蜥蜴のボス型
多くのオスに守られながら、主に洞窟の奥で卵を守っている。
パーティや腕に自信のあるものなら単独で挑む通常のフィールドボス
レアドロップは少ないが、序盤の装備を整える素材としては悪くないだろう。
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奥に進むと明らかに巣と思われる木や藁の塊がある。
ただし、大分でかい。雪鳥蜥蜴なら5匹は入れるんじゃあないかって大きさだ。
そのまま巣に近づくと、ふと自分の上に影が落ちる。
瞬間的にヤヴァイと思い、すぐに横っ飛びに逃げる。転がりながら自分がいた場所を見ると雪鳥蜥蜴がいる。
ただし大きさは3~4倍はあるだろう。
これがメスか。
見た目の凶暴性も威圧感もオスの比じゃない。
『キュアーカッカッカ』
一声鳴くと覚えのある衝撃だ。
だが、ユニオンボスほどの力は無いと見える。それが逆に自分に余裕を生ませた。
じっと相手を観察する。
すると突然一飛びで突進してくる相手、
しかし、これはオスの攻撃パターンと変わらない。
自然とショートソードでブロックする。そして硬直させる。
硬直したところに一撃を加える。
そして硬直が解けて動き出した瞬間、
警戒して身構えるやいなや、雪鳥蜥蜴の目を貫通する矢。
一声鳴いて転倒する。
ちょっとの間の硬直後、ジャンプするようにすぐに立ち上がる雪鳥蜥蜴、首から後頭部に抜けるように急所にショートソードを突き立てる。
そして、硬直する。
硬直が解けた瞬間矢が飛んでくる。
完全にルーチンワークだ。自分の剣こそ攻撃力が心もとないが確実に急所に当てて硬直させることで、何もさせずに倒しきる。
多分突撃兎並みか、その辺りのボスだったのだろう。非常にあっさりとしたものだ。
ふと振り返れば早くもカヴァリーとビエーラが倒した魔物にナイフを突き立てている。
そして、メスの雪鳥蜥蜴にもナイフを突き立てると
「その巣に有るのが卵なの、必要なだけ持って行くといいの」
と言うことなので念のため2つ持って行くことにした。
数自体はたくさん有ったのだが、あまり乱獲するのも悪いだろう。
ドロップアイテムは別にいらないと言ったが、魔石(中)をくれたのでありがたく貰っておくことにする。
確かにいつまでも支給品の剣ってわけには行かないだろうし、今回は貰っておくことにする。
魔鋼剣を使っていた時は平気で報酬に変えてしまっていたのだが。
思ったよりあっさりと卵を手に入れてしまったので、手伝ってくれた二人にお礼を言って、次の目的地に向かうことにする。
ちなみに二人はこれから一緒に黒い森で狩りだそうだ。
何でも二人乗りの後ろに乗りながら騎乗状態での弓の使用を試すのだとか、なかなか面白そうなことを考える。
次の目的地は祭殿だ。
やはり祝福といえば教会か祭殿だろう。
いつもの祭殿に赴くといつもの【巫士】さんがいたので、いつも通り銀杯に袋ごとお金を投げ込むことにする。最近ではお金にも大分余裕があるし、金貨100枚程度だが。
しかし、止められる。
「いつも多額の寄付をありがとうございます。今日はどういったご用件でしょうか?そういつも多額の寄付をいただかなくてもご用件は伺いますよ?」
「いや、こちらで食い詰めた子供達を預かってると聞いてますので、少しでも良いものを食べさせてあげて下さいよ」
と言ってさっと銀杯に袋ごとお金を投げ込む。
「キィィヤァァア、だから、また、そんな今日はいくら入れたんですか!!そんなに寄付して何が目的なんですか!!」
「ああ、目的ですよね、卵もってきたんで浄化の祝福をお願いしたいんですよ。二つお願いしたいんですけど?」
「な、な、なんです浄化の祝福って?そんな訳の分からないこと言って本当は何が目的なんです?」
いや、訳のわからないことって・・・・どうやら見当違いだったようだ。教会に行ってみるとしよう。
「なんかお邪魔してすみませんでした。また何かあったら伺います」
そう言って祭殿を立ち去ると「キョッピー」と言うまたおかしな叫び声が聞こえる。本当に何なんだろう氷精の【巫士】って。
教会に行くといつもの眼鏡のお兄さんがいるので早速だが話を聞いてみることにする。
「こちらで浄化の祝福ってやっていますかね?」
「やっていませんね。しかし心当たりはありますよ」
流石神官さん博学だ。何でも教えてくれる。
「やはり神の教えとか信仰心とか試されるやつなんでしょうか?それだとちょっと困るんですけど、寄付とかで何とかなるならその方が助かるんですけど」
「正直すぎる方ですね、こと対邪神に関しては我々は無償でお手伝いしますよ。ただ今回は別口です。私の故郷である渓谷に伝わる英雄の話です」
この神官さんは渓谷の出身だったのか、それなら生き字引じゃなくはじめから神官さんに聞けば話が早かったかも知れない。まあ今更言っても仕方ないが。
「浄化の祝福をかけた卵を蛇に食べさせて病毒を防ぎ、大きな蛇を倒してしまったと言われるその英雄は、とある崖沿いにある洞窟の奥にまた崖がありその崖を上ることで不思議な樹に出会い卵に浄化の力を与えてもらったとか」
「随分具体的な物語ですね。もう渓谷で崖があってその先に崖があって不思議な樹って思い当たる場所が一つしかない」
「はっはっはそうですね。何度でも死に何度でも蘇る、死と再生の蛇を倒す為にかなり具体的な形で物語として語り継がれていますからね。今回はあなたが英雄になる番のようだ。
それならばもう一つ教えて差し上げましょう。
その英雄は【教国】から来たものだといわれています。
そして死と再生の蛇を倒すことで神より称号を得て教国の13番目の番人になったとか。
教国には現状12の番人、今では集団で活動する12の機関と呼ばれていますがそれしか存在しません。
もし、蛇を倒すことになれば、いずれあなたも教国と関わることになるでしょう。
そして13番目の番人としての役割を果たすことになるかもしれません」
「13番目の番人の役割って?何なんですか?」
「それは残念ながら私にも分かりません」
なんとも不思議な、そしてもやっとする話だ。
だが、目的地は分かった。まだ頼まれ事は一つも果たせていないが、それを果たす為の頼みだ。
きっと快く引き受けてくれるだろう。
氷宝樹の元に赴くと
「さあ、貴方の持って来た卵をお出しなさい」
事情はすでに知っていると言わんばかりだ。
そりゃあそうだ。蛇を倒してくれって頼んできたのも氷宝樹なら、浄化の祝福をくれるのも氷宝樹なのだ、当たり前のことだな。ならさっさと教えてくれればいいものを
とも思うが、得てしてRPGってそういうものかもしれない。
特に自分がまだよくゲームをしていた頃の古き時代のゲームは。
まあ、いいさとばかりに卵を二つ差し出すと
「片方は無精卵ですから料理に使うといいでしょう。もう片方に祝福を・・・・」
氷の枝から雫が一滴卵に垂れると優しく七色に光りすぐに光が収まる。
〔雪鳥蜥蜴の卵〕→〔雪鳥蜥蜴の卵(祝福)〕に変わったようだ。
とりあえず、コレで準備は整ったか。
装備に関してはやや不安が残るが前線に立ってもらうのは嵐の岬の面々だ。
自分は極力指揮に集中するつもりだ。
後は嵐の岬と合同練習でもして呼吸を合わせ最後の準備で薬類を調達したら
いざ本番死と再生の蛇戦だ。
今日のところはこのでっかい卵の食べ方でも考えるとしよう。