72.でっかい卵は誰の卵
■ 雪鳥蜥蜴の卵 ■
人が持てば両手で持つほどの大きさである。
片手でもてないことも無いが練習が必要であろう。
雪鳥蜥蜴は元は鳥のため卵で増える。そして外で狩をするのはオス、卵を育てるのはメスと完全に役割分担がされている。
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「話は聞いたの!」
でっかいカモシカのような生き物が自分の前に止まり、二人乗りをしている。
一人はカヴァリーだ。とうとう二人乗りを手に入れたのか。
たまに顔を合わせれば話す程度だったけど、奥さんと二人乗りをしたいっていう情熱は伝わってきたから、素直に喜べる。
温厚な好青年だし、いい人だなとは思っていたけど後ろの奥さんも可愛らしくていい人そうじゃないか。
まあ、ゲームなので見た目が現実どおりって訳じゃないが、伝わってくる雰囲気も悪くない気がする。
「やあ、カヴァリー、ログイン早々に現れてどうかしたかい?後ろにいる人が前に話しに聞いた奥さんだろ?とうとう二人乗りを手に入れたんだな、おめでとう」
「こんにちわ隊長。確かに後ろにいるのが妻のビエーラです。今日は自分と言うより妻の方が用があるというので一緒に来ました。」
そういいながらシェーベルから降りる二人、さりげなく奥さんが降りる時に手を貸す姿が様になってる。現実でも乗馬が趣味って言ってたけど上流階級なのか?
てっきり農業高校出身とかなのかと思ってた。
「話すのははじめましてなの。でも私は何度も隊長を見かけてる」
と言って急に殺気を放つ奥さん
一点を一部のズレもなく必ず打ち抜くような完全な点の殺気、これは・・・・
「まさか黒い森の?」
「そうなの、普段はあそこを狩場にしているの。やっぱり見立てどおり私の気配に気がついていたの」
「そっか、あそこで魔物の気配がすると思ったらすぐに消えたりしたのはそういうことだったんだ。何度もお世話になりましてありがとうございます。よろしくお願いします」
「別に気にすること無いの【帝国】のために働いている隊長さんにちょっと力を貸しただけなの、よろしく隊長」
そう言ってぺこりと頭を下げる奥さん、動作が可愛らしいし、きっとぞっこんなんだろうなカヴァリー
「ところで話を聞いたって何のこと?」
「そう、【協会】で話を聞いたの大きな卵を探してるって、この辺りなら一種類しか思い当たらないの案内してあげる」
「そういうことか、それはありがたいけど報酬はどうするの?」
「別にいつも旦那がお世話になっているの、気にしなくていいの」
と言うことなので素直にお言葉に甘えることにする。
再びシェーベルに乗る二人、ゆっくりとしたペースで行くので歩いて付いていく。
のんびり世間話をしながら歩いていくが、最近では【帝国】もプレイヤーが少しづつ増えているらしい。
特に集団戦イベントの後にゲームをはじめた新規プレイヤーが【帝国】からスタートしているらしいが、自分は全然気がつかなかった。
なんでも全身黒い服を着たプレイヤーがゲームのホームページの宣伝に出ているとのことで皆そのプレイヤーを探しているのだとか、黒と言えば王国の騎士にいた筈だが別人らしい。
奥さんことビエーラは弓使いらしいが特に【訓練】はしていないそうだ。ただなんとなく使い始めたら思ったより手になじむので使っているのだとか、ヘビーボウガンのようだが、服も白ければボウガンも白い、こだわりがあるのだろうが非常に可愛らしく似合っていると思う。
それでも一応クエストを受けた方が良いと思うと伝えておく、殺気からしても実力者だとは思うがなおさらのこともっと上を目指せるプレイヤーなんだろうなって素直に思う。
何気にビエーラはクランのマスターだそうだ。
名前は『六華』皆弓兵で白い服を着ているらしい。
雪に隠れながら魔物を狩るクランだそうだ。何だか暗殺者みたいなクランだな?って言うのが正直な感想だ。
<戦陣術>を取ってる人はいないようだが、斉射だけでも有ると戦いやすいだろうに。それとも完全な散兵戦術なのだろうか?隊列も組まずに現代的な戦闘指揮が出来るとしたら相当のつわものだ。敵に回していい相手じゃない。気をつけよう。
そんなこんなで、たどり着いたのは洞窟。
と言ってもそんなに狭いものじゃない。入り口は広いし、奥はもっと広がりがありそうだ。
だが、その広い入り口からは入らずにぐるっと小山を回りこんでいくと、明かりが自然と入るような穴がいくつもある。
そこから覗くとどうやら中は雪鳥蜥蜴の巣のようだ。
「というわけで雪鳥蜥蜴の巣を襲撃して卵を奪うの」
「言い方がすごく悪役っぽいけど」
「言い方がどうであろうとやることは一緒なの、私はここから数を減らすから隊長は正面から行って欲しいの。ちなみに普段外で狩ってるのはオスなの。巣にはメスがいるから気をつけるの」
「分かった、行ってくるよ。カヴァリーはここで奥さんの護衛な」
「ええ、隊長気をつけて」
そして、正面から巣に入り込む。待ち受けるのは雪鳥蜥蜴の集団。
もう少し入り口が狭ければ囲まれる心配も無いのだが、やるしかない。
一歩踏み込むと一斉に襲い掛かってくる。
今日は<戦陣術>と<行軍>は外して戦闘に使えるスキルを入れている。
一つは
<威圧>
一斉に動きが止まる雪鳥蜥蜴、手近な相手から急所の首を刺していく。
支給品のショートソードじゃ攻撃力が心許ないが、雪鳥蜥蜴なら倒しなれている。
確実に急所をえぐり、死体はそのままにどんどん刺し殺していく、流石に巣だけあって数だけは多いがどんどん倒していく、一定時間ルートしない死体はいずれ消えてしまうが、今更惜しむような相手ではない。
あまり深いりせず、まずは倒せる相手を減らしまくる。
集中しすぎたせいか、気がついた時には雪鳥蜥蜴の死体の山に囲まれていた。
そして、奥へと踏み込む、目的は雪鳥蜥蜴の卵。
メスには気をつけろといわれたが、この先にいるのだろうか?