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71.生き字引はボケている

 ■ 手長えび ■

 現実では温帯熱帯の淡水に生息するが【帝国】にも生息している

 【帝国】の場合はチーリィ川で見られ雪手長えび又は白手長えびと呼ばれる。

 味は大きく変わることは無いが地元の人には愛されている。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 翌日も訓練場につくとさらに人が減っている。

 バルトとアンデルセンはいたので事情を聞いてみると


 「悪いな隊長。昨日のあれで今まで倒せなかったユニオンボス攻略に希望が見えちまってよ。

 皆どうにか士気関連のスキルやら装備やらアイテムやら手に入らないか探してるんだよ。

 士気に関しては何気に今までも装備のテキストに出てきてたが、フレーバーテキストくらいにしか思ってなかったもんで、放置してきたからな今更焦ってるわけだ」


 「今回の蛇討伐に対するモチベーションが下がったわけじゃない。

 昨日の討伐にしたって集団戦のノウハウが無ければ苦しかっただろうからな。

 まあ、それぞれに手に入る力を出来るところまで手に入れようとしているところだ。

 すまないがこの人数で今日のところは何か先に進められることを考える方向で進むつもりだ」


 ということだ。

 確かに今まで倒せなかった魔物を倒せると成ればテンションも上がるだろうしやむを得ない。

 それならば、こちらも少しこちらで動かせてもらうかね


 「じゃあ、そっちが落ち着くまで自分は自分で動かせてもらうよ。

 お互いのやり方もそれぞれ見れたわけだし、準備を整えよう。

 一応相手は病毒使うみたいだから、その辺の対応も忘れないでよ」


 「分かった。状況が変わればメールする。時間制限もあることだお互い取り急ぎ準備するとしようか、そうだ忘れてたぜ、こいつを渡しておく」


 と言って、バルトが黒い胸甲を渡してくる。


 「これは?」


 「〔古代海鰐の胸甲〕だな。特典だけ交換してドロップアイテムの分配忘れてログアウトしただろう?シャーロッテの奴がおまえさんの装備はどれもコレも限界だって言ってたからな。分配する素材の量としては少ないが加工賃も含めって事にしておいてくれよ」


 「分かった。ありがたく貰っておくよ」


 そう言って今日のところは嵐の岬の面々とはひとまず別行動にする。


 一応貰った防具を分析すると

 〔古代海鰐の胸甲〕 背中の甲殻部分を使用して造られている。


 自分で見えるのはコレくらいだ。装備スキルはついてないようだ。

 見た目的には服と同じく黒く、肩から吊る形で両脇はベルトで固定する。見た目的には好きな部類だ。

 

 装備を変更したことで<跳躍>も<掴み>もスキルセットしなければ使えなくなってしまった。

 今後はセットして少しづつ育てて行こう。タイミングが合って合成できれば助かるな。


 そして【兵舎】に行くとちょうどいいところにルークがいた。


 「ルーク、例の件どうだった?」


 「一応話はつけてきましたよ。例の生き字引が避難して世話になってるところでも『いつでも好きな時に来ればいい』ってお墨付きが出たし、ただちゃんと話が聞けるかは・・・・」


 「何だ珍しいな、変な濁し方をして」


 「まあ、会ってみればわかりますよ。すぐに行きますか?なら案内しますけど、まだ次の任務は受けてないし」

 

 「そうか、じゃあ行こう。場所は遠いのか?」


 「いや、そんな事無いですよ。隊長も知ってる場所だし、それこそちょっと行って話を聞くだけですよ。何の問題も有りません」


 「そっか」


 話をしながらルークの後を付いていく、どうやら城門から出るわけじゃ無さそうだ。

 確かに最初は【古都】目指して避難したわけだし、親類縁者がいればそのまま留まっていてもおかしくない。

 着いた先は


 「モリーさんの薬屋ジャナイカ」


 思わず語尾が変になってしまう。


 「そうですよ、渓谷の生き字引はモリーさんの縁者だったんでそのままここでお世話になってるみたいです。

 ところで何をごそごそと取り出してるんですか?」


 「いや、手土産だけど?」


 「手土産いらないって言ったじゃないですか!まあ、別に駄目とは言わないですけど何もってきたんですか?」


 「乾燥した手長えびが安かったから、えびせんべいにしたんだけど、駄目かな?」


 「そして、まさかのお手製だった。いや良いですけどね。隊長何気に食事作っても悪くはないし、ちょっとしたお茶会ならおやつとか持ち寄るのは普通ですよ!この辺りじゃ。

 ある意味ちょっと話し聞くだけってスタンスにはベストチョイスですよ」


 「じゃあ、何を興奮してるのさ?」


 「自分の分ももちろんあるんですよね?ってことですよ!」


 「ちょっと多めに作ってきたから、食べながら話すことになればあるんじゃないか?」


 「さっきから何店の前で話しこんでんだい!用があるならさっさと入ってきな!」


  怒られてしまったので店に入りさっさと用件を言うことにする。

 

 「いつもお世話になってます。モリーさん。今度病毒使いの蛇と戦うんで病毒に効く薬ください」


 「違うでしょ!隊長!怒られて動揺してるんですか?渓谷の生き字引の話を聞くんでしょ?」


 「ああ、この前の私の伯母さんに話を聞きたい言ってた件だね。構わないよ。

 伯母さんもいい歳をして渓谷で誰の世話にもならずに生きたいなんて言ってる気丈な人だからね。

 私も久々に一緒にいれて安心しているよ。お互い一人身だしね。

 暮らしに困ってるわけでもない。うちの血筋は皆薬の知識を身につけてるからね。

 いつの時代も手に職持ってるもんは強いよ」


 話をしていると一人の温厚そうな老婆がゆっくりと現れる。

 動作こそゆっくりだが、割としっかりした足取りで店の奥から出てきた。


 「モリーちゃん、傷薬だけどね、頼まれた分は出来たから、毒消しもついでに作っておいたから、後そろそろ病毒の薬が売れる頃だから、材料のある分作っちゃったから」


 「伯母さん仕事してくれるのはありがたいけど、何でそんなちょっとの間にそこまで作っちゃうの。もう年なんだからそこそこにしておかないと体悪くするわよ」


 「あらあら、今でも薬作りならモリーちゃんに負けないわよ」


 「分かってるわよ。伯母さんに敵うヒトなんてそうそういるわけ無いじゃない。それよりお客さんよ」


 どうやらモリーさんの伯母さんは薬作りの名手らしい、もしかしたら師匠系のNPCなのかもしれない。時間が有れば薬つくりを習うのも面白いかもしれない。


 「はじめましてこんにちわ、今回渓谷を脅かす死と再生の蛇(メテンプスーコース)を倒すことになった中隊の隊長ですよろしくお願いします」


 「あらあら、モリーちゃんの彼氏かしらね。モリーちゃんの伯母さんのメリーよ。よろしくね」


 「いや、彼氏ではないんですが、まあいいや。渓谷上流に住む蛇について教えてもらっていいですか?」


 「あらあら、渓谷の手長えびが好きなのね。子供の頃から素揚げにするのが私も好物なの。おいしいわよね」


 「手長えびはいいですよね、素揚げ以外にも色々と食べ方はありますけど自分も好きですよ」


 「隊長!えびの話じゃないですよ!早く死と再生の蛇のこと聞かなきゃ!」


 おっと、いつの間にか話を逸らしてしまったようだ。ルークがいてくれて助かったな。


 「ところで、蛇についてはご存じないですか?」


 「そうねぇ、あれはもう亡くなってしまった旦那と一緒に【王国】に行った時ね。暑い日だったわ。

 【帝国】と違って一年の中でも暑かったり寒かったりするんですって、【帝国】も気温の差は有るけど一年中雪で曇り空だものね。吃驚したわ。

 暑い日でなんとなく人の声が聞こえにくいなって思ってたのよ。そしたら旦那がふと変な虫を捕まえて見せてね。

 それの声で聞こえにくかったの。すごい音だったのに、何の音かって気にしないと全然気がつかないものね?

 蝉って言うのよその虫の名前、ジージー言ったりプキキキキって鳴いたり不思議ね本当に」


 「ああ、確かに蝉ってうるさいですよねぇ。でも聞きなれるとうるさいって気がつかなくなるから不思議ですよ」


 「だーかーらー隊長!蛇の事聞きましょうよ!」


 そうだった。このお婆さんはなかなかの手練だな全然思い通りに話が運ばないぜ、ここは手土産を出して話の流れをこっちに持ってくるぜ。


 「ところでたいした物じゃないですがお土産持ってきたんで、食べながら話しませんか?」


 とえびせんべいの包みを出す。


 「ふん、なかなかいい匂いじゃないか」


 と奥から皿をもってきてくれるモリーさん


 「乾燥した物でしたが手長えびが手に入ったので砕いて粉物と混ぜてあげただけなんですがね。つまむ程度にはちょうどいいと思うんですよ」


 と言って皆でえびせんをつまみ始めると


 「うふふ、蝉は食べないわよ」


 と面白そうに話し始めるメリーさん


 「あのね卵を食べるの。それも抱えるほど大きなやつをヒトのみにしちゃうの。

 古の英雄って渓谷の物語に出てくる人は、大きな卵に浄化の祝福をかけてもらって、それを食べさせることで病毒を使えなくして倒したらしいわ。

 でも、時が経てば何度でも蘇る。それが死と再生の蛇よ。

 渓谷の先に不思議な穴があるの。そこの奥にある地底湖に住むといわれているわ。地底湖は天井が抜けてて暗い事は無いそうよ。

 このえびはおいしいわね、素揚げもいいけど砕いて粉に混ぜても食べやすくて良いわ」


 「日持ちもするから多少まとめて作っても無駄にならないですからね。気に入っていただけたのなら多めに作ってきたのでもう一袋置いていきますよ」


 「隊長!」


 「分かってるよ、大きな卵と浄化の祝福だろ。浄化は心当たりが有るけど問題は卵だな。まあ自分の鞄は素材が長持ちする機能付だから手に入れさえすれば悪くなることは無いんだが」


 「じゃあ、卵さえ見つかればいいんですね、ちょっとだけ心当たりがありますよ。狩人の協会の方に行ってみますね。知らせを待っててください」


 そう言って飛び出してしまうルーク。えびせんはまだ有ったのだが持っていかなくて良かったのだろうか?


 「それじゃ、メリーさん、モリーさん話を聞かせてもらって助かりました」


 「渓谷の蛇は病毒を使うんだろ?戦う前にはここに寄りな。薬は多めに用意しておくよ。」


 「分かりました、頼みます。」

 


 とりあえず【兵舎】に向かう、嵐の岬も今は鍛えなおしているところだろう。時間一杯まで今日のところは訓練しておくか

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