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66.出陣式の時のあの人

 ■ 幕僚総監 ■

 総監と付く役職は基本的に監督者又は統率者と言う意味合いが含まれることが多い。

 幕僚総監については、同位又は上位であっても【帝国】幕僚全てに意見できる立場であり、時として皇帝の代弁者としての責務を持つ。

 皇帝の意思により選ばれる役職ゆえに空席の場合もある。

 皇帝の信任を得て尚そのことに溺れることなく国のために動けるものにしか勤まらない為、皇帝以外にも罷免権がある。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 無事復讐を果たし、肩の荷が下りた気持ちでログイン。

 やっぱりヒュージスライム倒した後に一言キメ台詞でも言うべきだったかな?とか考えるくらい今日の気分は余裕がある。


 いつも通り受付に行くと、兵長とどこかで見たことがあるような人が話している。


 「おう、ちょうどいいところに来たな。例の件、報告したら上もすぐに対応してくれたぜ」


 「おはようございます。例の件って言うと蛇の方ですか?他の樹に会いに行く方ですか?」


 「両方だ。こちらが新たな指示を届けてくれた」


 「やあ、久しぶりだね。出陣式以来か、今回の活躍は聞いているよ。こちらの期待に応えてくれたこと嬉しく思う」


 そうか、出陣式の時に話しかけてきた偉い人だ。


 「お久しぶりです。出来ることをやっただけなのでうまくいって良かったですよ」


 「おいおい、なんていう話方してるんだ。顔見知りだって聞いてたが、こちらの役職を知らないのか?幕僚総監だぞ。

 しかも、今回お前が苦戦してる間、なにげに上を説得して引き伸ばしをしてくれた人だからな」


 「あっそうだったんですか、ご迷惑おかけしてすみません。にしてもそんな偉いヒトがこんなところまで来てもいいんですか?」


 「いや、気にしないでくれ。言葉遣いも私は堅苦しいのが苦手な方だし、公式の場じゃなきゃ構わないさ、前回の時は特に名乗りもしなかったしね。

 後、引き伸ばしについても私自らここに来たのも思惑のことがあってだ」


 「思惑ですか?」


 「まあ、全てを話すと時間がかかるから掻い摘んで説明すると、今回の件【教国】の動きが妙に早くてな。不自然だったので警戒をしていたんだ。

 しかも、ヒュージスライム討伐の報告も上げて、向こうとの合同調査の結果も上げたのに、今度は帰ろうとしない。

 そして、君からの報告も討伐の件しか表に出していない筈なのに、なぜか蛇の件を探りに入れてきている節がある。

 怪しいだろ?」


 「怪しいですね。でも、報告に場所も上げてるんだから、調査に行っちゃえば良いんじゃないですか?」


 「そうも行かないな。ヒュージスライムが討伐されてもすぐに瘴気が消えるわけじゃないからな」


 「その通りだ。兵長は経験上分かると思うが瘴気が消えるのには多少時間がかかる。その洗浄を理由に【教国】が留まっているわけだが、汚染度としては、自然浄化されるレベルだ。明らかにおかしいな。

 と言う訳で、ちょっと行って死と再生の蛇を倒してきてくれないかな?」


 「いや、ちょっと行ってって、そんな軽くていいんですか?」


 「じゃあ、出陣式をして・・・」


 「ちょっと行って来たいのは山々なんですけど、瘴気があるんじゃ自分の中隊は動かせないですよ?どうするんですか?」


 「誰か【ニューター】に知り合いはいないのかい?」


 「100人は無理ですね片手で数えられるくらいですよ」


 「そうか、あまり【教国】の手には乗りたくないが、報告を聞く限り病毒の発生の危険もあるようだからな、あまり悠長なことも言っていられない」


 皆一様に考え込むような姿勢をとっていると。


 「話は聞かせてもらった!」


 「「「誰だ?!」」」


 「いや、俺だけどさ、アンデルセンだよ」


 「おう、最近は【帝都】中心に術士隊率いて動いてるって話だったがな、戻ったのか?」


 「へ~最近見ないと思ったら【帝都】に行ってたのか、そういえばこの辺りじゃ術兵はいないもんな。いつの間にか隊を率いることになったんだ?おめでとう」


 「はじめまして、噂は聞いているよ。【帝国】は【ニューター】が少ない上【兵士】になる者はさらに少ないからね」


 「おう、意外と知られてるんだな。まあ、いい。一応俺はコレでもそれなりの規模の【ニューター】のクランに属している。んで、特殊な大物を狩れるって言うなら、声かけてもいいぜ?」


 「条件は何だろうね?」

 

 すかさず聞く辺り、幕僚総監は駆け引きが得意なのかね?


 「MVP特典だな。後は魔物の素材、後何より大物を討伐したって言う事実が俺たちのクランに箔をつける」


 「今回は、こちらの中隊長も参加するから君達単独と言うわけには行かないし、討伐証明部位はこちらに貰うけど?」


 「そりゃあ、仕方のないことさ。この討伐の発起人は隊長なんだろうから否は無い。譲渡不可のMVP特典についてももちろん何も言わない。うちは参加できれば自然とさっき言った条件が満たされるだろうし、それで十分だ」


 「君達のクラン名は?」


 「嵐の岬」


 「いいだろう。しかし今回は100人での戦闘だ。集団戦を得意としている人はいるのかい?」


 「そこは、ボスと相談しなけりゃならないが、正直俺は隊長に率いてもらうのが一番いいと思ってる。ただ人を動かすだけじゃない。スキルや経験、実績が伴ってるのがあんただ」


 「そうは言われても【ヒュム】に指示出すのとは勝手が違うんじゃないの?アンデルセンだって確か集団で使える術を探してたんだから、自分で率いれば?」


 「俺はまだ小隊長なんだよ。しかもうちのクランだと人を率いるようなジョブやスキルを持っている奴がいない。士気にしても説明はしたがいまいち理解が足りてないのが現状だ」


 「士気管理すら出来ないのに集団戦って、そんな無茶苦茶な」


 「まあ、そこんところをうちの連中にも解説してやって欲しい。何より俺がこれ以上、上に行くのにどうしたら良いのか知りたい。お前さんて言う先を走るプレイヤーがいるのに方法が分からない」


 「普通に任務やってれば勝手に上がるよ。今は【下士官】なんだっけ?」


 「いや、兵科は術兵だけど?」


 「変わってないじゃない。後、兵科取ってるとよっぽどの実力者じゃないと上に行けないらしいよ?」


 「ま・じ・か・よ!どうすりゃ良いんだ?」


 「まあ、思い当たるのは二つかな?」


 「なんだ?」


 「一つは【兵士】からやり直して【下士官】になること。

 もう一つはミランダ様に相談することかな」


 「何でミランダ様だよ。あのもにょもにょ言ってる婆さんだろ?」


 「何でって、最強の軍師って呼ばれた。軍を動かす術のエキスパートらしいよ」


 「そういや、初めて【座学】受けたときにそんな話してた気がするな」


 「差し出がましいようだが、私からも一つアドバイスさせてもらうとアンデルセン君は少々任務をこなしている数が少ないようだね。評価はやはりこなした仕事の量と質から来るものだよ」


 「え?魔物を狩って報酬を得るだけじゃ駄目なんですか?」


 「「「そりゃあね」」」


 「声を揃えて言わなくてもいいだろうに、そうか、分かった、任務やるようにするよ。

 っと話がそれたな。うちのボスには連絡を入れておく。ポータルも開通したし、ある程度メンバーの予定をあわせて近日中に顔合わせと行こう」


 「では、話はまとまったということで私は失礼するよ。樹の方の件は蛇が片付いてからとしよう」


 「了解、色々とありがとうございました」


 「では、また」


 「じゃあ、俺も早速ボスに連絡を入れて今回の件話し合ってくるぜ、じゃあな」


 「じゃあ、近日中にまた」


 「さてと、なんか複雑になっちまったな」


 「そうなんですか?嵐の岬と蛇倒せば良いんじゃないですか?」


 「まあ、お前はそれで良いさ。とりあえず一つ一つ集中しろ。ただ、な。

 あの幕僚総監が動くって事は皇帝陛下の意図が含まれてるって事だ。まだ若いが皇帝陛下の懐刀と呼ばれる男だ。少しは気を張っていけよ」


 「了解」


 折角肩の荷を降ろしたと思ったら、また乗せられる。人生ってそんなものなのだろうか?

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