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65.再戦ヒュージスライムと新たな依頼

 ■ 宝剣 ■

 特殊な素材を使用し瘴気生物に特効を与える装備の一つ

 【帝国】のものは透き通った水晶の様な姿である。

 国によって姿は違うがその製法の根底は同じであり、かつて神の尖兵又は神の使いと呼ばれた美しきヒトよりもたされた技術であると言われている。

 そのヒトは【ヒュム】とも【ニューター】とも異なる種族である。


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


 再戦の時は来た。

 特訓を始めて早一ヶ月

 兵長の話なんかを聞いているとそろそろ本隊が動いてもおかしくない。

 つまり一人でヒュージスライムに挑むにはそろそろタイムアップ一杯だということだ。

 まだ、絶対の自信があるわけではないが行くしかないだろう。

 装備品は全て修理したが、近い内に新調しなければならないかもしれない。

 とりあえず今回のところは問題ない。

 ヒュージスライム以外の魔物を狩りなおして装備を整えなおしてなんていう時間はないし、気持ちが途切れるのも嫌だ。


 相手は、前回よりさらにサイズが大きくなってしまったが、同じ場所に陣取っている。

 こちらに奇策は無い。

 ただ特訓の通りにやるのみ。

 周りの普通のスライムは全て狩り取っておく、簡単に潰せるとは言え、万が一があってはならない。

 ゆっくり呼吸を整えたら、相手の攻撃範囲に踏み込む、この一ヶ月ずっとこいつを倒すことだけを考えてきたのだ。今更その範囲を外すことも無い。


 まずは、前回と同じ展開だ。

 ヒュージスライムの伸ばしてくる触手を一つ一つ切り落としていく。

 <氷剣術>はまだ使用しない。精神力を残して次の段階に備える。


 順調に体積を減らすヒュージスライムが、ほぼ前回くらいの大きさになってきたところで、警戒を高める。

 すると、前回通り飛び掛ってきた。

 当然この行動は読んでいた為、跳躍で後ろにかわす。

 後ろ向きに跳躍できるのは何気に特訓中に教官から教わった。まだまだ自分の知らない技術は沢山ある。

 

 問題はここからだ。ここから先の行動は読めない。

 跳躍も精神力こそ使わないが、連続で使用できるものではない。再使用までクールタイムのような物が設定されている。その時間は特訓で感覚的に覚えさせられた。


 十分な距離を保ち、ヒュージスライムの動きを観察していると、元の配置にずるずると戻っていく。

 コレが、普通の生き物ならどこを見ているか分かるので、後ろ向きなら奇襲するところだが、

 スライムでは、どうやってこちらを知覚しているか分からない。観察しながら等距離を保ちつつ移動するしかない。

 

 また、同じ配置に戻り攻撃距離に入ると、今度は触手を一本づつではなく同時に複数繰り出してきた。


 体積は大分減っているはずなのに思い切って攻勢に出てきたのだろうか?

 下がって様子を見ようとすると今度は全身も移動しつつ追いかけながら複数の触手が迫ってくる。


 腹をくくるしかない。後退しながら息を吐き出し、一番近い触手を切り落とす。

 ますます増える触手を冷静に観察しながら<氷剣術>を発動する。ここが勝負どころだろう。

 切り落とせずとも、一瞬剣で受ければ硬直が発生する。ちょっとでも切り付ければその触手が硬直する。

 そうやってタイムラグを作りつつ、同時に触手が伸びてこないようコントロールする。

 無理をせず、タイミングを計って切り落とす。


 そうこうしているうちに、ヒュージスライムの動きが急激に鈍る。

 瘴気生物なのに凍傷が効いたのだろうか?

 しかしチャンスは今しかない。まだ、体積はあるし核が露出しているわけではないが、宝剣で突きこめばギリギリの深さだろう。


武技 追突剣 チャージ


 ヒュージスライムの核めがけて宝剣を突きこむ。

 宝剣が表皮に触れたかというタイミングで、足に絡みつき始める触手。

 だが、前回に比べれば断然遅い。そのまま宝剣を抉り込む。

 宝剣の当たるところから蒸気を発してどんどん解けていくスライム、核に触れたと思った瞬間

 ドバッと粘液を撒き散らす。

 

 やられたか?!と思いきや形が保てなくなっただけらしい。

 粘液が全て蒸発していくがコレまでで、一番臭い。

 だが、我慢できる。やるべきことが出来たのだから十分だろう。


 少しの間呆然と立ち尽くしているとどこからとも無く声が聞こえる。


 『邪神の尖兵を倒した貴方にお願いがあります。どうかそのまま洞窟の奥へお進みください』


 なんか綺麗な女性の声だ。ちょっと感情の乗ってないクールな雰囲気を感じさせるが、嫌いじゃない。


 だが、ヒュージスライムがいた場所が行き止まりのようなんだが・・・・


 壁をペタペタ触っていると、頭上から冷気が漂ってくる。

 よく見ると自分の身長より少し高い場所に横穴が続いているようだ。

 ヘリに手をかけて登り横穴を進んでいくと光が見えた。


 そのまま光に向かって進むと外につながっているようなので、踏み出すと足場が無い。


 「罠か!美人局か!!」


 下を見ると断崖絶壁

 危うく飛び降りしちゃうところだった。

 偶々壁に手を当ててそろそろと進んでいたから一歩目で落ちずに済んだだけだ。


 『そのまま壁際を伝って上まで登ってきてください』


 確かに、壁にぴったり体をくっつけてカニ歩きすれば通れるようにはなってるが大丈夫か?

 まあ、ヒュージスライムは倒したんだし、最悪死に戻りしても大丈夫か。

 毒を喰らわば皿まで、そろそろとおっかなびっくり壁伝いに崖を上っていく。


 頂上まで上ると一本の氷で出来た樹があった。


 『よくここまで来ました【ニューター】よ。私は世界の管理を任された一柱【氷宝樹】と呼ばれています』


 「よくここまで来たっていうか、来るように言ったじゃない?美人の声だなと思ったら、樹だったんだ?」


 『ええ、かつてこの大地を管理していた『世界樹』の子の一つです。此度の件はお礼を言います。ありがとう』


 「いや、自分たちにとっても不利益なことだったから、構わないですよ。報酬は軍から出るわけだし」


 『人も神に生み出されたものであれば邪神に対抗するのも当然かとは思いますが、それでもそれは人の理。我らは世界の管理を任されたものとしての理の中にいます』


 「我らって言うのは、世界の管理を任されてる精霊とかの事?」


 『ええ、精霊も含みますが、兄弟となる樹がおります。その者たちとは、かつて我が親の根が張っていた大地の地下が空洞となってつながっていたのですが、最近それが寸断され兄弟たちの消息が分かりません』


 「ああ、この話の流れだと、その兄弟達の状態を知りたいと?」


 『ええ、この場より動けぬ身ゆえどうか状況を確認していただきたく思います。この場と同じように邪神の手先が入り込んでないとも言えませぬゆえ』


 「うーん、自分は軍属だから上からの指示が無いとなんともね、ただこのまま報告は上げるよ?対邪神ってのはどの国も手を取り合わなければならない案件みたいだし、自分が直接見なくてもいいんでしょ?」


 『ええ、構いません。よろしくお願いします。そしてもう一件お願いがございます』


 「何でしょう?」


 『死と再生の蛇(メテンプスーコース)と呼ばれる魔物を倒していただきたいのです。何度と無く倒されては復活する魔物ですが、今回の一件で復活してしまいました。

 麓の川を水の湧き出す地まで上っていくと、かつて人の掘った空洞と池があります。

そこにその魔物は住んでおります。

 病毒を発生させる魔物ですので、野放しにすれば川沿いが生き物の住めぬ地になることは間違いないでしょう。病毒をある程度中和する力を持つ我が身でも、今回根を荒らされたことで力を減じています。そう長くはもたせることが出来ないでしょう』


 やっぱり洞窟内で露出してた水晶みたいなのはこの樹の根だったのか。


 「ヒュージスライムより強いんですかね?」


 『ええ、人の身では一人で倒すのは不可能でしょう。100人ほど集めることをお奨めします』


 「おススメしますって、まあ、結局のところ自分ひとりの判断でどうにかなることではないので、上の者に相談してみます」


 『分かりました。最後に帰り際、剣を根に当ててみてください。少しだけ我が力を貸しましょう』


 「じゃあ、頼まれた二点は帰り次第上に報告します。それでは」


 そう言って来た時と同じようにそろそろと下っていく。


 洞窟に入ったら、根に宝剣を当ててみると、水晶のように透き通ってた宝剣に六角の雪の結晶のような模様が入った。

 これが何を意味しているのかは分からないが、とりあえず帰ることにする。


 兵長には無事にヒュージスライムの討伐を完遂したことと氷宝樹からの依頼を報告としてあげておく。


 兵長が唸ったなと思ったが、結局


 「まあ、今日のところは疲れただろ?飯食って寝ろ。一応宝剣はもうちょっと持っておけ、俺も一存でどうこうできる話じゃなさそうだ」


 「了解、本当に疲れたんでもう寝ます」


 しかし、氷宝樹からの依頼、自分が一回でヒュージスライムを倒せなかったばかりに時間で状況が悪化してたのだとしたらまずいよな。

 自分なりに出来ることはしないといけないよな。

 そう思いながらログアウトする。

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