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63.渓谷洞窟再び

 ■ ヒュージスライム ■

 通常のスライムは瘴気を発生させるものの倒すことはそれほど困難ではないが、

 瘴気の汚染が進むと同時に発生するヒュージスライムは討伐するのに苦労することになるであろう。

 非常に高い耐性を持ち、装備を劣化させる性質は凶悪そのものである。


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 洞窟再侵入となった。

 ログインして兵長に今回の作戦について聞くと、まずは自分が戦うって事で良いみたいだ。

 【教国】の協力を得なければ【ヒュム】は参戦できないがそれまでの時間稼ぎのためスライムを徹底的に潰して瘴気の汚染を少しでも遅らせるのが自分の今回の仕事だ。


 貸与された宝剣は何気に小剣サイズだった為、いつも支給品のショートソードを入れている背負いの鞘に入れておく。


 腰の剣帯は魔鋼剣がなくなって寂しいが、ポーションポーチも付いているので、剣の変わりにプギオを差してある。


 松明を持つときに邪魔になるので盾は小円盾を支給してもらい腕に固定し、左手を開けて松明を持てるようにしている。

 

 スライムは前回に比べれば少なかったので、サクサク潰して回る。


 問題は、前回魔鋼剣を奪われたでかいスライムだ。

 前よりサイズが大きくなっている気がする。

 ここで倒せれば、【教国】に余計な借りを作らずに済むし、金も素材も浮けばもっと別のことにまわしてもらえるだろう。

 自分が儲けるわけじゃないが変な欲が出てしまったことは否めない。

 でも、大抵そんな変な勇み足から失敗するものだ。


 前回どおりそろそろと近づくと触手を伸ばしてきたので、宝剣で斬ってみると

 あっさり切り落とせた。

 切り落とした部分は音を立てて蒸発し、例の臭い匂いと共に消滅する。

 

 別に無策に斬ったわけじゃない。あらかじめ兵長から宝剣なら瘴気生物を斬ることが出来るといわれていたのだ。

 危ないと思ったら迷わず使えとも。


 相手が触手を伸ばしてくるギリギリの距離で粘り、どんどん切り落としていくと

 徐々にサイズが縮んでいくヒュージスライム


 この調子で縮めていけばいずれ普通のスライムサイズになって潰せばいいんじゃ?

 と考えていた時、急にヒュージスライムが全身で飛び掛ってきた。


 とっさに宝剣で防御するもあっという間に手をつたい、全身を飲み込んでいく。

 遮二無二体を動かし宝剣で何とか核を突けないものかと暴れるが、

 暴れた内に入らない。

 物凄い粘度の高い粘液に浸かった時、人はろくに動けなくなるようだ。


 もがいて、もがいて、もがいている内に、ブラックアウトする。

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 初めての死に戻りだ。


 ただ、暗いだけでカウントだけが見える空間で自問自答する。


 どこで、間違えたのだろうか

 ヒュージスライムを倒しきれると思った時か、

 ヒュージスライムにちょっかいを出した時か、

 スライム討伐の先行部隊を引き受けた時か、

 そもそも宝剣を受け取った時か、


 自分は弱い、分かっていた筈なのに分かっていなかった。

 祭りで優勝した時か、

 祭りに出てくる他のプレイヤーが弱そうと感じた時だろうか、

 軍狼を倒し、中隊長になったときだろうか、


 何故弱いのに強くなろうとしなかったのか?

 教官は【兵士】なら強くなきゃならないと言っていた。

 更なる上のクラスを薦めていた。

 しかし、愛用の長剣が使えなくなるからと断っていた。

 その長剣もあのヒュージスライムに食われてしまったというのに。


 やっぱり、自分では無理なのだから言われたとおりスライムだけ間引いておけばそれで良いのか?


 良いわけが無い。

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 ふと、気が付くといつもの【兵舎】のいつもログイン、ログアウトする部屋にいた。


 そのまま受付に向かうと兵長が一瞬ぎょっとした様子でこちらを見たが、すぐにいつも通りの顔になって話しかけてくる。


 「言わずとも分かってる。今日は飯食って寝ろ」


 いつもの台詞を言われてしまったが、今日は軽口を叩く気にもならない。

 そのまま部屋に戻りログアウトする。

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