607.決戦【帝都】平野
予想通り、ソタローは【帝都】の外に布陣。
何の仕掛けもないとばかりの【帝国】内でも有数の何にも無い平野部。
雪の深さはまちまちだが【帝国】民であれば十分移動可能な範疇。足場が悪いのはいつもの事。
天気は曇天、薄暗い中に風が足元の雪を巻き上げ、顔に当たる度に肌が切れたのじゃないかと錯覚する。
風が少し強い、ずっと白く雪が煙って、なんとも……都合がいい。
陣形を組んだ戦いでは完全に不利なのは予め分かっていた事、【帝国】では邪道な戦い方をする事になる自分にはこの視界の悪さは神が味方してくれているとしか思えない。
これから神の使わした世界を守る一柱をボコボコにしようってのにね!
うちで隊列を組むのは【重装兵】のみ、100人の【重装兵】を丸ごと任せ、ひたすら防御に徹してもらう。
直接視認出来なくてもソタローなら【分析】とか持ってるだろうし、すぐうちの陣形の薄さには気が付くだろう。
その気が付いたリアクション次第で、色々戦況が動くって予定。
じっと睨みあう事どれ程経ったか、遠く【帝国】の空をよく飛んでる巨大怪鳥が声高く鳴いた瞬間に、
融力術 鼓舞
相手も同時に士気上昇系術を使用したのか両者、士気は十分。
あっという間に敵がぶつかって来る。
凸隊系でぶつかって来る衝撃が、尋常じゃない。やはりソタローの<戦陣術>バフは桁が違う。
もしかしたら、すでに上位術なのかもしれない。陣や隊形の上位術ってヤバイな~。
とりあえず、こっちは【重装兵】がひたすら防御に徹して隊列を保ってるので、その間に狩りを始める。
陣形に拘らず、どんどんパーティの隊伍をぶつかり合いの外側から回りこませ、削らせていく。
凸隊形の弱点はずばり側面及び背後。陣形を気にせずスピード重視のうちの隊伍がどんどん外側に取り付き、そして敵の偉そうな方から狩る戦術を徹底。
まあ、それでも中央にかかる力はソタロー陣営の方が圧倒的、いつ【重装兵】隊が抜かれるかな~と思ったが、ここでソタローは陣形変更。
方陣だな。
突破力は一旦置いて、じっくり攻防高めて攻めてくるって訳か。いやらしいな~。
こっちが周りから取り付いて、じわじわ削ってるから防御力も高めたのか、
もしくは【重装兵】が抜かれるの読み込み済みでこっちが戦術練ってるのがばれたかな~。
まぁ、こちらは包囲するように薄く取り囲んでるから、弓や術で火力を集めて殲滅出来なくて、ソタローの方もやりづらそうだし、イーヴンかな。今の所。
方陣外側の防御重視の敵は【歩兵】でいなしつつ、紛れた【弓兵】で奥の【術兵】や【弓兵】をスナイプ狩り。
陣形を組むとこういうばらばらな攻撃が逆にやりづらくなるんだよね~。一斉に一箇所に火力を集めるのが基本だもんね~。
しかし、粘るな。まるでこっちが乱戦に持ち込みたい事がばればれみたい。
敵は陣形を崩さないから、やっぱり強固だし攻めてるのはこっちなのに被害はこっちの方が大きいっていう、きつい状況になってきたわ。
「うし!カヴァリー頼んだ!状況動かして!」
「分かりました!」
カヴァリーの【騎兵】隊が動くと同時に、敵も温存してた【騎兵隊】を動かし、
お互い敵前線の【重装兵】隊にぶつけ、隊列を崩しにかかる。
まあ、自分は最初から乱戦に持ち込みたかったし~(やせ我慢)。
なによりソタローの方陣を崩せて、内部にこちらの隊伍をゴリゴリ押し込める分だけ、こっち有利だもん!
敵を食い破り、内側内側へとどんどん兵達を送り込むと、再びソタローが隊列変更。二列縦隊陣形……
衡軛陣か?二列の縦隊の隙間に内部に送り込んだ筈のこちらの兵が挟まれ……、
やっベー!!!!挟み撃ちじゃん!
今更逃がせないし、どうすっか。え~マジか……やっぱり陣形強いよ……。
ぐぅ……消耗戦なんだけど、こっちの方が断然不利。
さらにそこから、二列の縦隊が扇状に開く。
鶴翼陣か、完全に殲滅じゃん。自分が大暴れする以外に、この場をひっくり返す方法は……、
融力術 闇
ただでさえ曇天で薄暗く、巻き上がる雪に視界が悪い所に、
闇が落ちてくる。
天空からスゥッとベールがかかる様に光を吸い込み、視界を黒に塗りつぶす。
自分の目には、暗闇と敵と味方だけが見える。
なんなら、視界が寧ろクリアになったようにすら感じるが、
多分相手からすれば、何にも見えない。そして、自分達の気配もうっすらしてる筈。
熟練度の高い探索系スキルでも持っていれば対抗できるだろうが、そう何人も対応できまい。
実際大半は何も出来ず、棒立ちで狩り放題。
いくらか目端の利くものはその場に伏せて、やり過ごそうとしているが、
陰精の能力である吸収でじわじわ生命力と精神力を巻き上げてるので、時間が経つほどこっち有利だぞ!
そんな中でも、一人奮戦する圧倒的戦闘力を持つのはソタローかな。
ソタローだけは自分が直接手を下さないと、駄目か。
剣を引き抜きソタローに近づいていく。装備は制服装備。
さあ、暗闇の決戦。
一騎打ちとしゃれ込みますか。