605.完全に嵌められてた
「何にも無い?!そんなわけ無いじゃん!」
「いや、どれだけ念入りに調べても何も無いから、周辺まで調べたけど何にも無かったぞ」
「まじか~、つまり敢えて何も仕掛け無い事が、疑心暗鬼の自分に対する罠だった訳か!やりおる!でも時間が経つほど、国務尚書側が食料難で不利になる筈なのに、何で時間稼ぎなんか……」
困惑する隊長とルースィが会話してる所へ、あからさまな【隠密】が訪ねてくる。
「そうでもないみたいだぞ!」
「あれ?佐助?帰ってきてたの?」
「ああ、一応報告と思ってな。どうやら宰相派は大量に傭兵を雇っているらしい」
「まあ、西側商人が支持母体だし、お金だけはあるだろうからね。でも食わせる物ないじゃん」
「それが食料持込で雇ってるらしい。かなりの破格でな」
「ああ……そういうことか」
「やっぱり分かるか?」
「うん、圧力かけて西側で食料取引をしづらくしてるけど、傭兵って言うワンクッションを置く事で、食糧難を回避してるわけか。でも長くは続かないんじゃない?」
「そうだな。でも今だけを見れば、かなり勢いがあるし、なんならこっちの陣営はどうなんだ?」
「……難民支援もやってるし、結構かつかつだよね。ぎりぎりでやってるよ」
「占拠地域では盛り返してるが、一発でひっくり返されるな」
「うん、決戦を誘われてるのか。長期戦に持ち込むにはこっちは財政が……」
「向こうは食糧が足りない」
「分かった【旧都】占拠進めつつ、決戦準備するわ」
【帝都】決戦の為に兵を【旧都】に移す。【古都】が奇襲に耐えられるように最低限の防備は残しつつ……。
クラーヴンが設置しまくった重機関銃のおかげで、結構余裕があるので問題は無さそうだ。
避難民達の帰還も進めたいが、まだ国務尚書が再び【旧都】を取り返しにくる可能性も0じゃない。
再び戦地になる事を覚悟の上で戻ってくるのかどうか、その辺りの意思確認は必要。
守ってくれるのじゃないか?と言う質問には、内乱だからとしか答えられないね。
クラーヴンに頼めば、自分が持ってきた分だけ重機関銃を設置してくれるだろうが【古都】と【旧都】両方を防衛できるだけの人員や物資があるかと問われれば、まず足りない。
重機関銃を設置した挙句、横から奪われたら取り返しが付かない事は想像に難くないので、あくまで決戦前の物資及び兵員集積所として使わせてもらう。
【輸送】任務をやってた時に訪れる事はあったが、ちゃんと街中を探索した訳でもなく、あまり詳しくは無い。
地の利の無い場所で防衛しても笊になるのがオチだし、いつでも逃げ出せるように物資の集積の仕方は工夫しどころだな。
さて決戦計画だが、多分ソタローの事だ野外決戦だろう。【帝都】住民に迷惑をかけるのは嫌がる筈だ。
【帝都】近くの何にも無い大雪原でやりあうとなると……!?地雷か!今の内から【偵察兵】派遣して調査してもらわねば!
ここの所酷使してしまって申し訳ないけど、上手くシフト組んで上手く休み休み働いてくれ。当然報酬は弾むよ。
問題は戦い方か。どうしても雪の中じゃ素早く動いてってのは難しい。
ぶつかり合って、力と力の押し合いって事になる。
特に自分は<戦陣術>を丸ごと無くしちゃってるので、それは各中隊長に任せるしかない。
そうなると中隊ごとの連結を自分がフォローできないって言う。圧倒的弱点。
指揮系スキルで新たに取れる物探すべきだったかな~。隊列系は最早あまり自分にとっては意味が無いから、全隊バフ系か士気上昇系か、
まあ今更か、諦めよう。
強いて言うなら、銃撃戦の経験がある事かな。今までみたいに【弓兵】を固めずに、
散開させつつ将や長を狩って戦力を削っていくのも悪くないか。
……いつの時代だったか、あったよな。歩兵の間に弓が得意な兵を混ぜて、弓兵を守りながら進んで頭になる相手から狩ってく戦術。
頭を潰されれば指示が曖昧になって戦力が落ちるのは間違いない。
準備が出来るまで、ちょっと【訓練】してみるか。
兵種混在型の指揮を果たして部隊長や中隊長ができるかが鍵になる。
でもあれか【重装兵】の頭を潰そうとすれば時間がかかるし、混成隊も使いどころを考える必要があるな。
ソタローがスタンダードで来るなら、矢の雨が降ってくるわけだ。
逆に自分は混成隊にした場合、矢によるプレッシャーは与えられない……。
ちょっと布陣の仕方考えようかな。後は潜行して移動する方法も考えなくちゃ。
【偵察兵】と【弓兵】の混成隊によるスナイプ。
【歩兵】と【弓兵】の混成隊による敵主力潰し。
正面は【重装兵】で徹底的に守る……。
術士の処理どうすっか……、それこそスナイプの最初の目標を術士にするか?だとすると射程長めの【弓兵】をスナイプ暗殺要員にしないとな。
後はカヴァリーの【騎兵】隊をどこで使うか、敵も遊軍として【騎兵】は使ってくるんだろうし、ぶつけ合うしかないか。
最後は自分のポジション。
陣形を使えない自分としては、初めての大規模集団戦自分自身も戦力として働かねば、ならないだろう。
ん~、悩みどころだ。