602.三羽烏と情報確認
「玄蕃!分かったぞ【旧都】だ。白竜を抑えるならそっちで間違いない」
「そっか!ありがとう佐助!コレで決められればいいな~」
「何を弱気な事言ってんだ!自国の内乱を終わらせようってんだろ?一刻も早く決めるべきだろ!」
「まあね~。いやしかし、三人にはいつも助けられてるよ。結局情報が無きゃ作戦も立てられないもんな。どうやってるの?」
「まあ、やり方は色々だが秘密だな。頭領に怒られたくないし……。それで?今回はどんな仕掛けだ?隕石でも降らせるか?」
「そんな事出来るならやるけどさ。流石に決戦は正面からやろうかなと思ってるんだよね~。多少準備に時間はかかっちゃうけど」
「へ~珍しいな。外堀埋めてじわじわやるのか、じゃなきゃ落とし穴掘って沈めるのかと思ってたんだが」
そんな時また一人【隠密】が増えて、
「玄蕃!【旧都】の方はそろそろ限界だぞ」
「そりゃ朗報だね。半蔵もお疲れ様!とりあえずゆっくりして行ってよ。何か食べる?」
「いや【帝国】は食料難だろ?手持ちの煎餅とお茶があるからいいよ」
「お茶か~焼酎はまだ手に入れてないんだよな~」
「別に緑茶ハイ飲もうとは思ってねぇよ!まあ【旧都】は酷いもんだぜ。一般市民はどこか他の街に退避。腹を減らしてギラギラした目の【兵士】だけがうろついてる」
「もう少し飢えさせた方が安全に戦えるかな?」
「外道かよ!先に向こうが仕掛けてきたってのは分かるが、本当の限界だぞ?見てられないぜ」
「ふむ……食料で釣るか。元々は農民で食い詰めて宰相側に走った【兵士】はこっちで面倒見よう。今更裏切れないってヒトは、農民に戻ってもいい。いずれも食糧支援はしてるからね」
「逆に今度は聖人かよ!内乱のけつを拭くのが玄蕃じゃ無くたっていいだろうに」
「まあ、出来るからやってるだけだし。宰相には力があって逃げる奴は嫌いだって言われるし」
「敵の言う事を真に受けなくてもいいと思うがな。それで戦わずに敵戦力を少しでも削れれば、悪い話じゃないのか」
お茶が入り、三人で煎餅を摘みながら世間話に移ろうという時に更に【隠密】が戻ってきた。
「宰相の動向が怪しいんで一応報告に戻ったぜ」
「お帰り小太郎。それでどう怪しい?」
隊長の手元にあったお茶をひったくって一気に飲み干し、話し始める小太郎。
「それがな。宰相は白竜が乗ってると見られる馬車?そり車?分からんが【帝国】の輸送に使うそりのアレを【旧都】まで送り届けて、そのまま【帝都】に向かっちまったんだ」
「ふむ、相手が【旧都】で決戦するつもりならおかしな事だな」
「でもソタローは【旧都】に残ってた筈だ」
「ああ!間違いないぜ!じゃ無きゃあの限界の【旧都】を抑えられねぇって」
「なるほどね。それで他に宰相の様子で変わった所はある?」
「変わった所か……。なんか慌しくしていた事と、西側商人を集めて何やら相談していたくらいだな。流石に内容はわからん。向こうも警戒してたからな」
「ふ~ん、つまり屋根裏に隠れて聞き耳立ててるとかじゃないのね」
「そういう事もやるぞ。でも宰相って言ったら要人だからな。絶対に話を外に漏らさない造りの建物もいくつか保有してるんだよ」
「ふむ、でもまあ商人って言ったらお金の事だよな。もしくは何かを買い込もうって腹かな?分かんないな」
「飢えてるんだから、食料を購入しようってんじゃないか?」
「多分それは前からやろうとしてる筈。今のタイミングでこそこそやる事でもないと思う。いずれにしても【旧都】を落としちゃうか。ここは決戦じゃなく、潜入工作からの暗殺ってのも悪くない」
「なっ!潜入工作だと!そんな面白そうな事!その話詳しく」
「いや、まあ例えばの話だから、ソタローがいる以上警戒してるのは間違いないから、でも相手がまともに戦える状態じゃないって事は一考の余地もあるかなと」
「窮鼠猫を噛むの例もあるし、まともにやれば死に物狂いの相手とやる事になるかもしれないか」
「そういう事!こっそり潜入して白竜をこちらにつけられたら完全に風が吹くよね」
「……隊長……白竜ぶん殴ってるじゃないか。なんなら噂になってるぞ?神をも恐れぬ異形の指揮官」
「どこからともなく現れ、目を潰すほどの光を放つ」
「邪神の化身だけでは飽き足らず、神の代行者まで手にかける狂気の化け物」
「なにそれ?自分は最初から白竜ぶん殴るって言ったのに」
「だから~!殴った挙句自分の陣営につけられると思ってるのが、意味分からないって言ってるの」
「いや!超越的な存在って、どんな条件で力貸してくれるか分からないから!なんか白竜って戦う存在なんでしょ?だったら立ち向かう自分に力を貸してくれる可能性も!」
「「「ないない!」」」
「なんでよ?あるかもじゃん」
「殴られて味方してくれる奴なんていないって!だから他の方法で【旧都】を落とす事を考えろよ」
「え~まあ……【旧都】でしょ。潰せない事もないか……」