60.【古都】への避難と新たな任務
■ 瘴気 ■
邪神がこの世界に現れると共に発生したといわれる。
その成分を魔素と呼ぶ。
霊子によって構成された世界のあらゆる物質を変質させる性質があるといわれている。
物質の構成要素でありながら同時にエネルギーである筈の霊子そのものを物質化させた賢者の石も魔素を利用している。
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ボエニーの手も借りて、借り受ける物資の【管理】を終えて班編成を行っていく
一斉に大行列なぞつくろうものなら、途中襲ってくる魔物にも対応できない。
準備の終わった住人と部隊をくっつけて班編成し、送り出していく。
瘴気が濃くていつ魔物が現れるか分からないこの場には、自分が残る。
何より【ヒュム】にはかなり忌避感のある匂いのようだ。体調が悪くなる人まで出ている。
本当に温泉の匂いじゃなかったようだ。
しかし、送り出していく身としては、不安が募るものだ、無事【古都】までたどり着けるだろうか?
普通に出てくる魔物なら部隊であたれば危なげなく倒せるだろうが。
何とか、慌て者【士官】と応援が合流してくれるといいんだが、
街中を【巡回】しつつ残っている住人はいないか、異変は無いか確認しながらすごす。
田舎街とは言え、それなりの人口もいるし、その辺の【管理】は役場の人がやってくれるだろうが、万が一の危険があってもまずいだろう。
慎重に街を巡る。
街の外の農業地区の方は早い段階で【兵士】達が回って避難勧告を出したそうなので、お任せした。
ふと人影が見えたので声をかけてみる。
「ちょっとそこの人!皆避難中だよ!危ないから早く【古都】に避難しないと!」
その人物が振り返るとフード付きのローブにガスマスク?
そこまで認識した瞬間、一目散に逃げる相手、
すぐさま追いかけるが、本当にあっという間に姿を見失った。
火事場泥棒か何かだろうか?ガスマスクみたいなの用意してたけど、この異変と何か関係あるのかな?
色々と考えてしまう。考えながら街を丹念に巡る。
「隊長!避難は大体完了しましたよ。さっき伝令が来て【古都】の応援と先に出た人たちは合流できたって、自分たちも早いとこ【古都】に引き上げましょう」
ルークと共に最後に残った役場の人たちと一緒に【古都】に引き上げる。
途中中継地点に【古都】の応援がいたので、自分たちが最後の旨を伝え順次引き上げていく。
-【古都】 【兵舎】-
「よう、お疲れさんだな。【輸送】任務で出かけたら避難を手伝うことになるとは、な」
「まあ、しょうがないですよ。それより何があったって言うんですかね?機密事項だって言うならあえて聞かないですけど」
「いや、むしろお前に指名で任務だ。あの街の北側は絶壁の山になっているがな。川沿いに上っていくと一部切れていて上れる場所がある。そこを上りきると洞窟があるんで、そこを見てきてもらいたい」
「見てくるのはいいですけど、何があるんですか?」
「知ってる奴は知っているが、とりあえず見てきてそのままを報告してくれ、くれぐれも無理をするな」
「別にお安い御用ですがね、何でまた自分に?その知ってる人ってのに頼めば厄介ごともないだろうに」
「悪いな、今回匂いが出るほどの濃い瘴気が出るとなると【ヒュム】じゃ進めない可能性がある。だが、聞いたところによるとお前は影響がないんだろ?」
「そうですね。温泉の匂いかと思いましたよ」
「なんで、温泉なんだよ。まあ、いい。渓谷北部洞窟【偵察】任務だ。頼むぞ」
「偵察兵じゃないんですけどねぇ。了解」
今回は、瘴気が出ている為、単独行だ。最近はすっかり仲間と一緒のことが多かったからちょっと寂しくもあるがしょうがあるまい。
とりあえず、一晩休んで明日にでも出かけてみますか。
「あっ隊長!今日はもう寝るんですか?」
「よう、ルーク。そのつもりだけど何か有った?」
「いえ、避難も滞りなく済んだし、物資の【管理】も無事完了ですよ」
「そうか、そりゃあ良かった」
「近い内にまた渓谷に行くんですよね?」
「ああ、行くよ。様子見て来いってさ」
「こんな風に瘴気が出るなんて何か不穏ですよね?」
「そうなんだ?初めてだからなぁ瘴気とか」
「そうでしたか、瘴気が出る時は邪神の動きが活発な時ですから、本当に気をつけないと。でも、隊長は瘴気の影響を受けないんですよね?何とかならないですかね?」
「何とかって言われても、何が起きてるか分からないからな」
「そうですよね、でも渓谷の人たちも、もうすっかり顔見知りだし、帰る場所が無くなったら可哀想ですよ」
「え?自分全然顔見知りじゃないんだけど」
「向こうはちゃんと覚えてますよ。全く!とにかく出来るだけお願いしますよ!」
「分かった、出来る範囲でがんばるよ。んじゃ、飯食って寝るわ」
「はい、おやすみなさい」