599.ちょっと前の話
「じゃあ、作戦を説明しま~す!」
「おっ!最近随分と悩んでいたようだが、決まったんだな?」
「うん、決めた!ハメ殺しにするわ!」
「だと思ったの。寧ろそれしかないのに何を悩んでたの?」
「いや、ガイヤが正々堂々と戦ってやれっていうから……」
「うん、ソタロー君は隊長を目標にしてたんだし、それは正々堂々と戦ったほうがいいんじゃないかな?」
「まあでも、色々考えた結果!決戦だけでいいかなって」
「まあ、割り切れたのなら、早速作戦とやらを聞こうか」
「うん!まずは大河沿いはプレイヤーの二大クランのお出ましだから、カヴァリーとビエーラに任せるね」
「前にも言ったけど、どうやって倒すの?」
「普通にやれば大丈夫だって!騎士団は下馬して機動力が落ちた所を森に引き込んで各個撃破!コレだけ!森はビエーラが得意だから任せるね」
「じゃあ、嵐の岬はどうしますか?」
「逆に開けた道で、機動力を生かして撹乱して倒しちゃって!船は何とかするから」
「それで、俺達生産職も呼んだのは何でだ?」
「カーチのドリルの力を借りたい!黒の防壁に敵を引き込んで、砦ごと沈める」
「相変わらず、おかしな事言い出すの」
「そう?邪天使の時も砦ごと吹き飛ばしたし、自分の中では定番なんだけど、砦潰し!」
「物騒な定番ですね……。確かにそれは嵌め手かもしれませんが、肝心の敵を引き込む方法は?」
「おいしそうなご飯をいっぱい用意する」
「隊長じゃねぇんだから、それで罠にかかるとは思えねぇが……」
「いや!かかるね!確信してる!敵側は食料が心許ないし、そもそも雪中行軍って言うのは生半可じゃないのよ。屋根壁ない場所で、飯も無く休憩するなんて、到底我慢できないよ」
「そこに、黒の防壁って言う砦においしいご飯もあれば、誘い込まれるって言うの?」
「そういう事!だから自分は日頃からご飯は大切にしてるし、カヴァリーだってそうでしょ?」
「確かに、それはそうですが、流石に行程分の食料くらいは持たせるのでは?」
「まあ、そこはクラーヴンの妨害工作に期待だね!雑でもいいから量をお願い!ねちっこく!」
「その辺は、任せておけよ。設置するだけなら簡単だからな。なんだかんだ邪神の化身の時に付き合わされて以来、ぼちぼちやってるからな」
「よし!これで更に国務尚書の勢力を削れるな~!問題はどこでソタローと決戦するかだな」
「ちょっと待つの、カトラビ街はどうするの?確かあそこも重要な拠点って聞いたの」
「ああ、あそこは自分が行く」
「隊長が兵を率いて篭るなら、あそこは守るに易い土地ですし、いけますか」
「いや、自分単独で行くよ。その方が早いし確実だし、何より自分の目的に合うし」
「単独ってよ……。どうするつもりなんだ?」
「それは後のお楽しみじゃん?上手く行くかも分からないけど、駄目なら駄目で、防衛隊に混ざってがんばるよ」
「そうなの?じゃあ結果を楽しみにしてるの。隊長はどうせ碌な事考えないの」
「まあね~、三羽烏からの情報だと出てくるっぽいんだよね~。へっへっへ~。やっとぶん殴れるわ」
「そういう事ですか……、じゃあ隊長が出るしかないですね。どんな相手かも分かりませんが、思いっきりやってきてください」
「うん、なんならもう一回眠らせるつもりで本気で食らわしてくる」
「物騒だな。まあ最初から言ってたしな。好きにやって来いよ」
「そうだね!ここが正念場だよ。こっちも向こうもさ!地の利は完全にこちらの物、河族を始とした周辺国にはすでに楔を打って、さらには国民感情もこちらに流れつつある今、ヒトの心も掴んだと言えるだろう。後は天の時に合うかどうか」
「つまり、隊長の標的が出てきてくれるかどうかが、肝になるの?」
「そういう事、ここが分水嶺だよ」
ソタロー、アンデルセン不在の【帝国】お茶会は静かに進むも、どこか隠し切れない興奮を抱えたまま御開きに。
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それぞれの任地に赴き、戦場の確認及び妨害工作を開始。
そして結果は隊長の予想通り、一方的な展開で幕引き。
因みにアンデルセンが嵐の岬に参加していたら、多少は結果も変わったかもしれないが【帝国】内乱を利用するのをキライ、海底の攻略を進行中。
間がいいのか悪いのか、それでもアンデルセンを悪く言う者はいない。
良くも悪くもそう言う奴だから、ゲームを楽しむ事を本位として、苦い気持ちになるような事はお断り!
潰し合いにならなくて済んだ事に、ちょっとだけほっとした隊長と【帝国】お茶会。
後は、隊長が白竜をぶん殴るだけ。