595.カヴァリーとビエーラ夫妻
「しかし、カヴァリーとビエーラがソタローに付かなかったのは意外だね」
「そうかい?そりゃソタロー君の事は応援してるけど、今回の件はちょっと思うところあったね」
「そうなの、他所の国所属のプレイヤーが勝ち馬に乗りたいのは分かるけど、私達は普段お世話になってるNPCの事考えないといけないの」
「ふーん、まあ自分は助かるけどね。それで他所の国って言うと何処がソタローについてるの?」
「結構内乱が進んじゃって離脱したプレイヤーも多いけど、嵐の岬と騎士団は隊長も気になるんじゃないかな?」
「まさか、あの二箇所か~、しんどいな~」
「その割に余裕そうなの」
「まあ、情報を聞く限りその二つはあくまでクランでの集団戦に特化してるから、自分やソタローみたいに1000人とか無制限とかって訳じゃないからね、やり様はあるかな。それこそ二人とも100人率いれるでしょ?すでに」
「まあ、率いることは出来るね。なんなら直属の【騎兵】隊を使うつもりだけど」
「いいんじゃない?内乱だし、どっちに付くかって話だからね」
「私は六華を率いるの、すでにメンバーの了承は取ってるの」
「それなら二人には、それこそ嵐の岬と騎士団を相手にしてもらおうかな」
「かまわないけど、作戦は?」
「確かにそうなの、相手は一応トップクランなの」
「大丈夫、普通にやれば勝てるからさ、なんなら【帝国】での戦い方を教えてあげたらいいよ」
その二つのクランが出るなら、まず間違いなくルートは大河沿い。
理由は簡単!
1.船が通せる
2.馬が歩ける
でもその条件ならカヴァリー、ビエーラ夫妻のほうが強い。そしてプレイヤーに白竜を預けるようなことはしないだろうから、大河沿いルートは大丈夫。
【旧都】を空けてソタロー辺りと混成部隊になったら怖いが、険しい雪道でそこまで道の広くない【帝国】でそんな事をするか?と問われれば、確率はかなり低いと考える。
「あっそうだ!カヴァリーにお土産があるんだったわ!」
天上の国で貰ってきた古風で木製のグリップや銃床が美しいカービン銃を手渡すと、
「なにやら【古都】で重機関銃を使ったとか聞いてましたけど、何でこんな物が……」
「天上の国では普通に使ってたよ。あくまで術範疇の武器だけど、予め装填しておけばいざって言うとき連発で使える遠距離武器とか助かるでしょ?」
「それはまあ、助かりますけど。遠距離だったら妻の方が……」
「それはそうなの!」
「ビエーラはこだわりが強そうだし、物理遠距離って感じだから、よく話を聞いてからの方が良いかと思ったけど?」
「流石隊長なの!よく分かってるの!それで、旦那様の銃はどんな性能なの?」
「一応自分と同じ氷弾にしてある。馬上でも使えるようにカービン銃を選んだけど、見た目は小型ライフルって感じでしょ?なんならクラーヴンに頼んで銃剣を着けて貰えば、手槍代わりにも使えるかもしれない」
「なるほど、確かに取り回しはしやすそうですけど、スキルとかは必要ないんですか?」
「ちゃんと当てるなら必要になるね。自分は銃持った状態で兵長のところで確認したら、スキル出てたよ。カービン銃で牽制しながら近づいて、銃剣で刺突とかかっこいいけどな~」
「ある種のロマンは感じますね。どうしても妻の移動補助ばかりでしたから、自分の攻撃性能が高まるのはちょっとワクワクしますよ」
「そんな事言って、この前もサーベル持って魔物の群れに突撃してたの」
「なんでまたそんな無茶を……」
「いや、まだどちらに付くかも決めていなかったので、妻と狩りをしようとした時に出てた任務が、黒の森の魔物殲滅でして、ちょっと気合が入りました」
「まぁ、カヴァリーも自分と同じスタートプレイヤーだし、ちょっとやそっとの魔物じゃ相手にならんものね」
「隊長ほど人間離れしたつもりは無いんですけどね。しかし、今思うとこのタイミングで黒の森の魔物殲滅ってのは……」
「多分向こうの勢力が黒の防壁を攻める時の為の露払いってことだろうね」
「むぅ、まんまと利用されたの」
「いや、逆に言えばそのルートで誰か攻めてくるってことでしょ?」
あの辺りはそれなりの大兵力が展開できるから【将官】が出てきてもおかしくないか。だとすると、ヒトの手で勝負をつけて白竜は出さない気がするな。
それこそ黒の防壁自体を白竜が消し飛ばしてしまえば話は早いが、果たしてそんなことするかな~?
多分相手は【古都】を北側から攻めたいはずなんだよな~。何しろ南側から来て一掃したわけだしさ。
大河を使った大兵力展開で失敗している以上、相手の本命は黒の防壁である可能性は無くは無い。
しかし、黒の防壁を越えた後の丘や渓谷をどう抜けるのか、大兵力展開は無理。
黒の防壁を拠点として、兵力を小出しにするなら、黒の防壁自体吹き飛ばす事が損になるな。
うん、そうなると、白竜が出そうな場所は一つしかないし、ちょっと準備してくるか!
「隊長!何か思いついたの?」
「まあ、多分だけど、ほぼ自分の予想通りになるから、二人には戦い方を教えておくよ。他国のプレイヤーを【帝国】で好き勝手のさばらせるのは、ここまでにしよう」