592.次の目標と作戦
【古都】防衛戦で宰相派の連中は、かなり手痛い負けを被って当分は動けないだろうと言う判断の元。
次の作戦に移行する。同時に近隣の町村については【士官】達に任せてどんどん占拠し返し、こちらの勢力となっている。
そもそも食糧難で宰相派に付くしかなかったヒト達に食料を無償で与えた時点で自分の支持率は爆上がり!
この内乱は国務尚書の野望から起きた物だと言う事、白竜を国務尚書が利用しているんではないか?白竜復活の報がそもそも怪しい事、国務尚書の言う軍縮に寄る経済活動の活発化よりも、自分の根の国天上の国との貿易の方がよっぽど利になりそうな事……。
とにかく向こうを落としてこちらを上げる噂を流しまくり、ろくな戦闘もせずにこちら陣営になっているのだから助かる。
それもこれもこの前の一戦に勝てたから何とかなったような物だ。しかしここからはソタローが敵となる事を踏まえて相応の苦戦を覚悟せねばな。
そして、激戦区になりそうな場所が三つ。
その三つを占拠した方が【帝国】の半分を手中に収める重要な【帝国】の背骨。
【旧都】、カトラビ街、黒の防壁の三箇所のどこかを通り抜けねば、自分達は西に行けないし、相手は東にこれない。
カトラビ街は【帝国】北側チーリイ川沿いにある盆地で囲まれた街。攻めるに難く、守るに易い地。
盆地の周囲は雪の積もる崖で登る事自体困難。川が貫通している為船で通り抜けるか、川沿いを歩くしかないが、逆にそこさえ塞げば簡単に守れる。
な・の・で、自分が周りの崖から潜入して、占拠しちゃおうかなと。
普通のヒトじゃ登れないかもしれないけど、大霊峰を登った自分には、特に問題ない範疇。
大軍を駐留させるには向かない地だし、少ない駐留部隊を蹴散らして、交渉。
食う物だけはたくさんあるし、それで何とか靡いてくれるといいんだけどね~。
次は黒の防壁、ここはかつて群狼を倒した黒い森からの魔物に対応する要塞。完全な軍事拠点って訳。
ここは正面から行くしかないかな……、と思ってたらチータデリーニがいるんだってさ。
元々魔物に対応する兵達の詰め所だ。内乱なんていう無駄な事で兵力を減らす訳には行かないから、さっさと降伏したらしい。
つまり、別にどちら陣営でもいいから民の為に働かせてくれ勢。ある意味潔いし、使命に忠実で好感しかない。
なので、周りを落としてから交渉と行こうと思う。
問題は【旧都】なんだよな~。
一応【帝国】発祥の地とはされてるんだけどさ。最終的により豊かな西側の【帝都】が首都になっちゃったんだよね。
とは言え【旧都】を舐めちゃいかん。【帝国】の中心に位置する物資の集まる地であり、軍事拠点にもなっている。
ここを取れるだけで、物資も兵力もかなり楽になるまさに重要拠点。
しかし 敵も流石にここは死に物狂いで守るだろうしな~。逆にここは放って置いてもいいかな。
ヒトが多いんだから、逆に周りを奪って物資の出入りを邪魔しよう。そうすれば困って降伏するしかあるまい。
篭城は味方の助けを期待できるからやる意味があるわけだが、そもそもこちらは攻撃をしないから被害は無い。
しかし、物資の流通を止められれば飢えて死ぬのを待つばかり、降伏するしかあるまい。
仮に、こちらの包囲網を突破して物資を手に入れるために西側に向かうとしよう。
実はすでに西側も物資が困窮し始めている。
そもそも内乱なんてしてられる程食べられる物に余裕の無い国で、輸入がほとんどストップしているのだからさもありなん。
内乱を起こした国務尚書が悪い。
それでも、いくらかは入っていた物資が丸ごと止まったのは幕僚総監が他国にプレッシャーをかけたかららしい。
それが出来るなら最初からやればいいのにとは思ったけどね!
それじゃ国務尚書とやってる事と同じじゃんって話だが、ニュアンスが違う。
何しろヒトを難民化させたりしない。そもそも内乱でどっちに付くかってだけの話【旧都】は別に宰相派じゃなきゃいけない理由は無い。
単純に当時現皇帝派がやられにやられて【古都】まで逃げちゃったから、宰相派に付くしかなかっただけ。
つまり【旧都】民からしたら宰相派を売ってもいいし、追ってもいいし、それだけで食えるのだ。
まあ、あっちに付いたりこっちに付いたりで、色々と大変だろうが、そこは柔軟に対応してもらおう。
何しろ自分は裏切り者だ何だと言わないし、皇帝も宰相派に回ったヒト達を責めるようなことは一切言っていない。
そりゃ少しでも勢力を吸収したいんだから当たり前だけどさ。
なんなら【旧都】から脱出してくるヒトの支援をしちゃおう!
実は鹵獲した【帝国】の河上戦艦を河族に上げちゃったので、大河を使った貿易が捗る事この上ない。
そう、東部は海に繋がっていないので、大河が鍵だ。なので協力してもらう見返りとして先に艦と船を引き渡した。
そもそも河族は色々と事情があって流れ着いたあぶれ者の集まり、かつて自分が指名手配になっていた時の様に、国務尚書に追い出された皇帝に対する同情がある。
交渉できる相手、仲間になってくれる相手、ここからはヒトの事をよく見て対応を間違えないように気をつけないとな。