591.振り返り防衛戦と装備の事など
「仮面が欲しいな」
「何だよ藪から棒によ!戦後処理で大変な時に変な事言ってんじゃねぇよ」
「でもクラーヴンは暇でしょ?」
「実は暇なんだよ。なんかやる事はないのか?」
「まあ酒でも飲みながら話そうよ。自分もそれなりに頑張ったから処理は任せてもいいって言われてるしさ。何しろ将だけは一杯いて、今回はこちらの被害はほぼ0」
「完勝だな。一方的な虐殺おめでとう」
卓に天上で仕入れてきた林檎酒を出して、つまみに天上魚のカルパッチョを当てにする。
寒い【帝国】には全く似つかわしくないが、まあ食糧難だし軍は自分の鞄の中身で食いつないでるので仕方ない。
「それでさ、この制服に丁度いい仮面が欲しくてさ。天上では仮面を作る文化が無くて結局手に入らなかったんだよね」
「制服にって……それ戦闘装備だったんだな。なんか宝石が付いてる豪華な制服着やがって偉くなったな~って思ったわ」
「いや、この宝石を付けるってのが味噌でさ。エルフの技術だと宝石から力を引き出して色んな効果を装備に載せられるのさ。もし時間が有ったらその内根の国とか天上の国とか行ってみたらいいじゃん」
「へ~それは興味あるな。でも布素材の様だが防御力あるのか?それ」
「基本は耐性装備だね。自分の場合氷精だから耐性ガン積みって感じ。後は術士装備って感じかな?とにかく精神力食われるんだよね」
「は~なるほどな~。NINJA装備もかなり使い込んでくれたみたいだし、色々考えてみるか」
「ああ、頼むよ。この制服は精神力を流さないと防御力無きに等しいから、防御力維持できないんだよね。探索とか奇襲をかけられる事を考えると、防御力を常時担保してくれる装備は助かる」
「それで、その右腕の刺青は何だ?」
「これは<晶印術>で刻まれた刺青、エルフは基本宝石から精霊の力を引き出すのが得意だから、これも水晶から引き出された力で描かれてて、防御とか耐性とか氷精の効果が上がるみたいよ」
「ほ~でもそっちの黒い蛇の方はなんか広がってたよな。なんか白い蛇と黒い蛇で意味ありげだよな」
「なんか、いつの間にかこうなっちゃった。左の黒い蛇は<呪印術>で力とか握力とか士気とか高まるみたい」
「そうなるとよ。右手と左手に白蛇黒蛇<晶印術><呪印術>だろ?いっそ<粧印術>と<象印術>もとってみたらどうだ?」
「え?……ああ<呪印術>で筋力、<晶印術>で防御力が上がるから、更に二つも取得して、ステータス補正って事?ありっちゃあり?いや<象印術>は生産系じゃん今更<鍛冶>取るのもな~」
「刻むのは俺がやってやるからよ。やってみたらいいじゃないか。確かステータスが上がりきってほぼ打ち止め状態なんだろ?」
「まあ、確かにありっちゃありか!でも呪印て左腕から左頬まで伸びるし、下手したら晶印も伸びるかもしれないからな~。どこに刻むか<粧印術>」
「額とかどうだ?そうすりゃ顔剥き出しでも悪か無いだろ?」
「ふむ、かなり前向きに検討だな~!」
「んじゃ、そのつもりで仮面考えておくわ」
そんなこんな酒を飲みながらの次の装備話をしつつ、いい感じに酔いが回ってくると防衛戦の話に……。
「ところで、何であんな雪崩ギミックなんて気がついたんだ?」
「アレは【座学】ちゃんとやってれば分かるよ。だからソタローが参加してたらばれたかもしれないし」
「そうなのか?」
「そう【古都】は雪崩が起き易いのよ。後ろが丘と山だから、そして【古都】を守るために北側には崖があるの」
「ほう、そう言う事だったのかあの橋は……それなら崖をもっと横に長く掘れば大河沿いの街道も無事なんじゃないか?」
「逆にさ。小国家郡だった頃に雪崩を防衛に使ってたんだよ」
「つまり、大昔の戦術をそのまま流用したんだろ?それなら他の将兵だって気づいたんじゃないか?」
「ところがどっこいNPCは対人戦争を想定してないの。何しろ邪神勢力って言う敵がいるし、ヒト同士が戦ってられない訳よ。精々【森国】の小競り合いとか【海国】の海賊行為とか【砂国】の族長同士の争いとか?」
「それだけあるなら【帝国】だってありそうなものだがな?」
「【帝国】はそれで昔貧しすぎたんだよ。だから白竜による統一が必要になった訳。内乱は飢える行為だから、想定外なの。だから簡単に皇帝もここまで追い詰められたし」
「じゃあ、何で今回は起きたんだ?」
「国務尚書の暴走か英断でしょ?想定外の事やるから上手く行くわけだし、でもだんだん飢えていくよ。買い込んだ食糧は自分が民に放出したし、何なら今回負けてちょっとほっとしてるかもね~」
「仲間がやられてほっとしてるなんて外道もいいところだな」
「まあ、軍を率いるにはヒトを数で見なきゃいけないところもあるからね。でもこれで相手もなりふり構ってられないよね。だからと言って再編も時間かかるし、慌ててる顔が目に浮かぶね」
「一番の外道はここにいたか。まあこの内乱の落とし所をどうする気なのかは知らんが、ここからはソタローも参戦するだろうし、好き放題って訳にもいかんだろう?」
「まあね。ここからは地道にやり返すよ」