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590.虐殺と言われても仕方が無い

 雪崩を上手く利用され兵数を大よそ三分の一まで減らしたが、それでも【古都】を潰すには十分な兵数の差がある。


 補給路については東西の路を塞がれてしまったが、船を利用する算段なのだろう。まだ攻める気を保ち続けている宰相派。


 しかし、いま一つ士気の上がらないまま防御重視の陣形でじりじりと攻めあがる足取りは重い。


 どんな仕掛けがあるか分からない為慎重に攻め上がっていると言えば聞こえはいいが、【古都】防衛戦力は最初から城壁で戦うつもりなので、未だに攻撃しない。


 まあ、もうちょっと時間がかかりそうなので、こっちは始めちゃいますかね。


 大河も【帝国】付近の水は冷たいが、自分の耐性だとまあ許容範囲。


 一際でかいだけの【帝国】河川用戦闘旗艦。一応バリスタが付いてる程度のこけおどし。


 基本大河の艦船は兵の移動用、つまり輸送船だ。


 まずは自分に、


気脈術 陰気

気脈術 冷気


 と気配低下と耐性強化をかけて、艦船に乗り込む。


 一応言い訳程度に甲板で警備をしている兵は完全に油断をして欠伸をしている。


 アホなのかね?


 大河は本来河族の物だ。複数の国の国境を分けているこの大河をどこの国にも属さない河族が間に入る事でバランスが保たれてると言うのに、平気でこんな艦船浮かべて、船がでかいからって強くなった気でもいるんかね?


 まあ河族が抗議に来ないのは、自分との交渉があったからなんだけどさ。


 欠伸をしている兵を背中から急所の一刺しで動きを止め、喋る隙も与えずに滅多刺しにして生命力を削りきり、その場に転がしておく。


 それでNPCはちゃんと重症扱いになり、戦闘が終われば勝手にどこぞの病院に搬送されて当分出てこない。


 帆の上にもヒトが一人、遠く戦場を眺めているようなので、後ろから帆柱を登って、こいつも刺し倒す。


 さて、でかい船だしどこから行くか。


 まずは船倉か?下に荷降ろしをする搬入口を見つけたので下を覗き込むと、荷物の仕分けをしている作業員が見えたので、飛び降りてそのまま襲い掛かる―

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 【古都】の眼前まで大群が迫りそれでも攻撃を仕掛けてこない元皇帝派。


 【弓兵】が城壁に並ぶ様子も無いが、明らかに様子の違う不思議な装置が城壁上にいくつも並び、何となく威圧感を感じる城壁


 不気味な静寂に包まれた【古都】の城壁に手を掛けようとした瞬間、何かが飛来して兵の命を狩る。


 そして、その後は途切れる事ない攻撃が雨のように頭上から降り続け、兵達の命を無常に刈り取り続け、何の対策も打てないまま兵達がひたすら倒れ伏していく。


 それは本当に雨の様で間断無く降り続ける礫が、避ける間もなく体のどこかに一発でも当たればごっそり生命力をもっていき、そのまま部位破壊を引き起こし、生命力を削りきられるまで食らい続けてしまう。


 「退却だ!!!!」


 将の言葉にパニックを起こした兵達は一斉に逃げようとするがなまじ密集した状態で隊列を組んでいる為、お互いがお互いを邪魔してそこらじゅうに転がり、そこを背中から狙い撃たれる。


 運よく逃げた者も逃げた傍から背中を撃たれ、足を貫かれ、転がっていく。


 そして、逃げても逃げても追ってくる礫が隣を走る仲間を薙ぎ払い、もはやどの兵も恐怖で顔が引きつり、叫び声を上げる者、命乞いをしながら逃げる者、阿鼻叫喚とはこの事を言うのだろう。


 それでも大河まで走って逃げれた者は、流石にそこまで礫は届かないと安心したのか、がっくり地に膝を突いて荒くくなった呼吸のままに顔を伏せるのがやっとと言う様子。


 そこに【古都】南側を担当した将も辿りつき、辺りを見回すと完全なる敗北を悟った。


 もはや再度【古都】を攻める兵も無く、引き上げるだけでやっとと言う状態。なんなら船の大半も遺棄していかねばならないだろう。


 それでもただここから少しでも離れたい。死の匂いのする【古都】と言う土地から少しでも遠くに行きたいと言う欲求に突き動かされ、船に向かって声を上げる。


 「おい!引き上げだ!タラップを降ろせ!」


 その声にヌルッと現れる姿は逆光で真っ黒く、どういう状態かよく分からない。


 そのまま眺めていると、何かが降って落ちてきた。


 それが【帝国】河川戦闘艦の艦長だと分かった時、上のヒト影が敵であると認識し、絶望する宰相派の将。


 「ふーん、皆命からがらって感じだけど、動けるヒトは後何人いるのかね」


 「貴様!何者だ!」


 「アンタ達が一番欲しい首の一つじゃない?やる?」


 「くっ……このまま生き恥を晒す位なら、来い!一騎打ちだ!」


 「大義も無く皇帝に叛乱起こした逆賊が偉そう過ぎじゃない?」


 そう言いながらも、高い艦上からひらりと飛び降りる黒い陰は【森国】の【隠密】にも似た黒い装束に鬼の面。


 ゆっくり歩いて宰相派の将に近づく途中、膝を付いていた兵の一人がすっと立ち上がり後ろから襲い掛かる。


 一瞬で左手で黒い何かを引き抜き、ばらばらと射出された礫でその兵は一撃で生命力を削られ吹き飛ばされた。


 「うるさい!白竜様が復活されたと言うのに、いつまでも皇帝を名乗り続けているから、この様な事になったのだ」


 「ハイ!嘘!大義も嘘なら、一騎打ちも嘘、もうお前がこの世で立身する事は無いから生まれ変わってやり直しな。デスマッチだ!」


 宰相派の将は負けてもこの黒装束のニューターの首を取っていけば、まだ自分の首の皮一枚繋がると思ったのだろう。


 そして、その為には周りの兵達と連携して包み込んで倒そうと目配せをしてタイミングを計っていたものの……。


 しかし、その思いは完全に断たれた。相手は現決闘王。強制的に一対一に持ち込む事を神より称号として許された者。


 一瞬にして凶悪な棘の生えた鉄の蔓がフィールドを象り、侵入者を阻み、逃げる事すら許さない環境が作り出された。


 その時点で完全に絶望した将は剣を半分抜いている途中で、首を掴まれ吊るし上げられ、そのまま絶命し体中から力が抜け落ちる。


 敵将を屠った黒い人物は顔を隠し表情も読めないが、左手から顔の半分に至るまで黒い文様が不気味に浮かんでその場に立ち尽くし、


 恐慌に落ちいった兵達は動く事すらままならず、ただただ恐怖に身を任せる事しか出来なくなっていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ありゃ、顔に入れ墨入れちゃった?←そこ?
[一言] 完全に怪異か妖怪かなにかじゃないですかー! 大技なくたって恐怖を振りまくことは可能なんだ……
[一言] おかしいな、主人公が強敵のように見える。
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