588.いよいよ内乱大詰めと言う名の序章
「それで、どうだった?佐助」
「ああ、ソタローは不参加だってさ。何でだろうな?宰相勢力の大将みたいなもんだろ?」
「理由はいくつか考えられるけど、突き詰めれば勝ちすぎたんじゃないかな」
「それなら、尚更任せればいいのに?」
「考え得るのは最後の一戦でどうしても手柄が欲しい奴らに足を引っ張られた。もしくは自分がいる事で消極的な解決手段を取ろうとして干された」
「ソタローが玄蕃を恐れる玉か?遠慮はあっても全力でぶつかってくるんじゃないか?」
「ん~どうだろう?罠にかからないように慎重論唱えることはありうるよ」
「そうか?まあ分かる限りの陣容は置いておくぞ。それじゃ引き続き潜入工作に戻るから、頑張れよ!」
「ああ、二人にも助かってるって伝えておいてくれ!」
いよいよ【古都】制圧戦が始まる。国務尚書側からすれば大詰め、この一戦で終わるのだから手柄を立てたい者は焦ってる事だろう。
何しろ【古都】を落とせばもう軍事拠点になるような場所は無い。仮に攻めにくい渓谷の奥地に逃れたとして、それは死なないだけの事。
敵側の将は主に、勝ち馬に乗ろうと国務尚書に付いた者、家伝の言い伝えで白竜に付く事にした者が大半。
その内この一戦に賭けているのは前者だろう。しかし自分が怖いのは後者。
陣容を確認する限り、兎に角次政権で権力を取りたいだけの俗な連中が中心の様だ。
いや~読み通り!いやはやここまで上手く行くとはね~。笑いが止まらん!
正直な所、うちの皇帝は白竜の元に付くには別に文句無いらしい。
元々文の国務尚書、武の皇帝……先祖だったらしいので、権力を分ければ共存できた。
欲をかいたと言うか、積年の恨み?嫌いな相手の下で働き続けた国務尚書のストレス爆発が原因の内乱。
もっと深い理由があったのかもしれないが、ヒトの本質なんてそんなもんじゃない?
まぁ、いずれにしてもそれで内政のイニシアチブを国務尚書が取れば、ソタロー的にも軍縮からの国民の生活重視政治が出来て、皆幸せだったのにね~。
しかし、敵はここで手柄を立てる事しか眼中に無い連中。
きっとどれだけ優しく警告しても責めてくるんだろうな~。
つ・ま・り~皆殺しにしても向こうの所為って事 (ハート)!有力将と兵数を徹底的にここで削りつくす。
ここで、終わりだと思ってる奴らをぼっこぼこにして再起不能にしたるわ!
寧ろ全部取り返すのが自分の目的。皇帝は白竜と交渉する事を望んでいるように見せかけて……何なら事実だけど。
自分は白竜ぶん殴る。こんなしょうも無い状態を作ったお馬鹿をぶん殴る。
神様になんて言われて作られた存在か知らんけど、どう考えても失策でしょう。
ヒトの社会的営みはヒトに任せればいい。自分達が蟻や蜂の社会に口を出さないように、超越的存在も分からないなら口出すなと、はっきり伝えてやろう。
その為の第一歩。細工は流々!負けたら負けたで皇帝を根の国に連れて行って、根の国と天上の国を中心とした経済圏を作るんだ~!
「ふふふふふふ」
「ねぇ!これ読んだらマンゴープリンって聞いたけど、どんな味?」
「え?甘くてフルーティなプリンだけど?」
「へ~~~!た~の~し~み~!」
「まあ、危なくなったらすぐに逃げてね。大きな声で一方的に伝えてくれればいいから。相手が何を言おうが関係ないし」
「え?他人の話はちゃんと聞いたほうがいいよ?」
「ああ、放っておけばいいよ。どうせ大した事言わないから」
「へ~?そんな事ある?」
「あるある。そこに書いてある事言い終わったらすぐにポータル使って逃げていいから」
「え?プリンは?」
「ポータルの所に預けておくから!100個」
「100個!分かった!私全力でやるよ!」
うっし!根の国の声の大きな子はやる気十分。これで多分勝ったが、後はクラーヴン次第。
「出来たぞ」
「早いな!手抜きした?」
「何言ってんだ。設置するだけの仕事で誰がそんなに時間食うかよ。急ぎはしたがほぼお前さんの計画通りの結果になるだろうよ」
「さすがクラーヴン。これで負けたらもうどうしようもないよ」
「いや、どこでこんな物仕入れてきたか知らないけど、凶悪でしかないだろ。しかも2段構え」
「まあ、運が良かったよね。じゃあ、そろそろ自分出掛けるよ」
「おいおい、大将が出掛けてどうすんだ?」
「いや、うちの勢力は指揮官だけは多いから、どう戦いたいかだけ伝えておけば勝手に戦ってくれるんだよね」
「……お前さん何もしないんじゃ」
「計画立てて、準備したじゃん!そうだ陛下出掛ける前に【古都】防衛戦の報酬は敵から鹵獲した船貰うね。勝手に報酬決めちゃって申し訳ないけど」
「出掛けるついでに言われるのってなんか新鮮だな。やはり格式ばった空間よりこういう、大勢が何かに向かってざわついてる方が俺は好きだ」
自分が兵糧として、軍に提出したポポーの実を食べながら話す皇帝。
「皇帝って言う立場も大変だよね。場合によっては軍務尚書に落ち着くかもしれないけど、それでもいいんだよね?」
「問題ないな。元より本来はそうなる筈だったのだから、後鹵獲した船は好きにしていいぞ。というより鹵獲できると確信している事が不思議だが」
「了解!まあソタローが不在っていう情報がブラフじゃ無い限り勝つよ」