586.戦争準備したくてもトラブルだらけ
一先ず状況確認と準備のために幕僚総監と別室に移動。
戦争やる上で、絶対必要なものと言えば?と考え抜いた結果一番最初にやるべき事は……。
声の大きいヒト!自分の正義を明瞭に伝える為には声の大きさが大事だ!
別に自分が正義の味方だとは思っていないが、結局戦争ってのはクソ正義のぶつかり合い。
「まずは、根の国にメッセンジャーを送り込みたい」
「ほう、それで誰に何を伝えるんだい?」
「エルフの街の装飾店にいる女の子に頼みたい事がある。現地民があまり協力的じゃなくて、手に負えないようなら『マンゴープリン』と叫んでくれ。それで全て伝わる」
「……え?」
「自分はそれで伝わるだけの信用を根の国で築いてきたから!多分」
「多分か……。分かった誰か向かわせよう」
次はなんと言っても情報!情報操作を含む。こちらの考えを浸透させ、敵に不利な情報を流す。その為に必要なことは!
「頭領!三羽烏貸して!!!」
「ょぃぞ」
うん、自分と幕僚総監しかいなかった筈の部屋なのに、ずっとそこにいたかのような佇まいで、部屋の真ん中に立ってる。頭領。
このヒトが本気で暗殺したら防げる気がしないんだけど、国務尚書ぶっ殺して来てもらってもいいかな?
まあね、そういう事するヒトじゃないのは分かった上での冗談。そう!冗談だよ。
「いつも助かるよ。今はこっちが不利だけど、多分次の一戦で潮目が変わるから、そしたら大忙しになると思うんだよね」
「ぅむ、しかし儂からも頼みがぁる」
「え?そりゃこっちから頼み事するんだし、別にかまわないけど。今こんな状況だからちょっと忙しいかも」
「分かってぉる。お主の持ち込んだ糸についての事じゃ。我が国の物産を潰さないょぅにと心遣ぃは将軍も受け取ってぉるし、それだけで三羽烏を貸すには十分じゃが……」
「ああ、そういえば白蜘蛛族長元気?もしかしてやらかした?」
「ぃや、なにぶん天真爛漫な性質ゅぇすぐに打ち解けて、預けてぉる領主の姫君にも気に入られてぉるわ」
「じゃあ、良かったけど」
「ただ、ぁの糸の主要販売先は【海国】と【砂国】なのじゃが【輸送】ルートの所為で揉めてぉっての」
「まあ、耐暑効果が高いのは間違いないから、その二国で売れるのは分かるけど、海路でも陸路でも好きに売ればいいじゃない」
「海路はまだ良ぃのだ。我が国と直通だからの。問題は【砂国】に向かぅ分じゃぁ。まだ生産量が少なく希少価値が高すぎるゅぇそこまで問題も顕在化してぃなぃが、海路を通せば【海国】が我が物とする」
「じゃあ、陸路を使えばいいじゃない」
「希少価値が高ぃからの少しでも利益を抜こぅとする者が多くぉる。天使大路につぃてはお主も権益者じゃったろぅ、一つ口を利ぃてもらぇぬかの?」
「天使大路?」
「アレですよ。邪神の化身を追い込むために【王国】の魔物を一掃した時に出来た道」
「ああ!アレか!でも自分何の利益も得てないんだけど?確か恵まれないヒトの為に使ってって話だった筈?」
「そうですね。上がった利益は弱者救済に利用されています。あの件は私が隊長から委任されていましたね。話自体は私がしてきましょう」
「そう?じゃあ幕僚総監も忙しいと思うけど、頼みます。一応自分の手持分の糸と今後考えてる事業展開を教えるからうまく交渉して……、あっ一応その天使大路の利権者のリストとかある?」
「ええ、出資者名簿はありますよ。元々発起人は隊長なのですから閲覧する権利もありますね」
そういって、すぐに出てくる出資者名簿。やっぱり仕事出来るなこのヒト。さすが皇帝の側近。
ざっと目を通すと各国の著名人の名前が並ぶ。
「これなら、口出ししなくても各国人皆利権あるじゃん」
「出資額に差がありますからね。隊長は発起人なので別格ですが、特に【王国】のレディなどは隊長のファンと言うのもあってかなりの額になってますね」
「レディ?」
「隊長のつながりで言うと【闘技場】のガイヤ殿のスポンサーですよ。裏では【王国】造船及び海運の怪物と言われる人物です」
「ああ~確かに以前凄い世話になったな~船貰ったりとか。でもファンとか言うなら、頼みも聞いてもらえるかな?利用するようで申し訳ないけど」
「伝えるだけは伝えましょう」
「よし!じゃあそっちは幕僚総監と頭領にお任せします」
「ぅむ、助かるのぉ。将軍には伝ぇ置くからのぉ、もし困ったら何時でも訪ねてくるがよぃぞ」
これで、三羽烏も渡りが付いた。あとは生産職だな!戦力で上回られてる相手を倒すには仕掛けが必要だもんな~。
と言うわけで、そのまま【古都】の街に出てクラーヴンに会いに行くと、
いつものゴドレンの店の裏に見慣れないでっかいドリルがあるので、ついフラフラと引き寄せられてしまう。
見れば見るほど立派なドリルだ。思わず感心して、
「コレはいいドリルだ……」
自分の声に反応するようにドリルが喜んだ。何がどうなった訳でもないが、自分には分かる。
「なんだ?隊長、店のほうに入らずに」
「いや、いいドリルだったから思わずさ」
「ああ、それはカーチのドリルだぞ」
「商人の?何でまた?地底に商売にでも行くのかな?」
「いや人形使いになったんだカーチはよ。子供だからどうしても大人同然に戦えなくて、戦闘は諦めてたらしいんだが、コレでなら戦えるからよ」
「へ~まさかゲームなのに大人と子供に差が出るとは」
「まあ、その辺融通利かない所もあるよな。色々実験や調整を繰り返してるゲームだし、そのうちどうにかなるんじゃないか?」
「まあ、いいか。ところでクラーヴンはどっちかの陣営についたの?」
「一人の生産職として傍観する気だったんだがな。なんだ?力が必要か?」
「ああ、頼みたい事が色々ある。何なら次の一戦までは死ぬほど忙しいかもよ」
「そうか?俺もそれなりに物作り慣れたし、お前さんが思うより早く作業が済んじまうかも知れないぜ?」
「そう?じゃあ、頼むよ。お金は無いけどお土産はあるから」
「そりゃ楽しみだな!」