585.半分脅して食料買い付け
今や飛ぶ鳥を落とす勢いのソタローの声掛けで、あっという間に宰相派の食品を扱う西側商人達が集まってくれた。
「さて、宰相殿から許可は得てる!食料を買い付けたい。購入時の倍でどうだろう?」
「ふふ、何を甘い事を誰だって飢えには勝てない。まだまだ幾らでも釣りあがるというのに……」
「いいぞ!売るわ!いや~宰相に唆されて買い付けたはいいものの、良心が咎めてたんだわ」
「そうね!散々付き合いのある農家のヒト達が飢えて炊き出しに並んでるのを見てるのはちょっとねぇ」
「兵糧にされるのは困るな。一応宰相の言う富国は俺たちに都合のいい話だし」
ふむふむ、まあ予想の範疇かな。
「自分が買い付けた食料はラズノースに渡して欲しい。信用できる商人を通せば、こっそり兵糧にまわされる心配も無いでしょ?」
ふむ、一気に売ってくれる人増えたな。
お金のある限り、どんどん食料を買い付けていく。NPC商人を通す分には詐欺とかされないし、信用してどんどん支払う。
「ふむ、じゃあこっから交渉と行きますか」
「ふん!いいから高値をつけて財を吐き出せ!しこたま稼いでるんだろ?」
「いやいや、何言ってるの?早く自分の言に乗ってくれたヒト程得するに決まってるじゃん?次は1.5倍だよ」
「ははははは!隊長殿は交渉というものを知らないらしい。ソタロー将軍も言ってやるといい」
「隊長……交渉するなら必要な物資の量と出せる金額のバランスを考えて……」
「ん~まずさ、東に追われた皇帝に超高額で食糧供給してるヒトに言うけど、自分が東に行ったら速攻値下がりするよ。自分の鞄にどれだけの食料が入ってると思う?そうじゃなきゃ民にだけ供給するとか言うと思う?」
「ぐぅ……」
「宰相殿の陣営に食料を供出してるヒトは宰相派として忠誠を見せてるんだろうし、何も言わないよ。勝てば利権でも手に入るんだろうね。勝てばね」
「ふん!」
なんか顔に脂汗を浮かべたヒトが食料を売ってくれた。
「なんだかんだ日に日に宰相派も必要な糧食が増えてる筈だよね。それを賄えるのは輸入をしてるから、西と言えば海路での輸入かな?自国民を裏切った商人は今後何で食っていくのか知らないけど、輸入業者のヒトさ。……この続きを聞いたら1.2倍ね」
なんか皆暗い顔をして黙りこくっている。
「うん、ポータルが開かれた地下の国は知ってる?」
「根の国だろ?話には聞いてるぞ。だが警戒心が強くて中々交渉が進まないとか」
「うん、そこって何で暗いか知ってる?上にはさ海があって船を浮かべて住んでるヒトがいるんだけど」
「???何を夢の様な事を言ってるんだ?」
「夢の話のようで、本当の事なんだよ。そして天上の国は山ほどの食料品があるんだよね。自分はそこと行き来出来る様にしたいんだよね~」
「どういうことだ!」
「自重を捨ててもいいかなって」
「脅しか!」
「脅しだよ?でもね少しでも安く大量に必要な物品を流通させるのって悪い事なの?国を富ませたいんだよね?内乱には遅れちゃったけどさ。こう見えて地下の国と天上の国にわたりつけてきたんだよコレでも」
「一枚かませてもらうわけには……」
「今のままで出来ると思う?確実に干すよ」
「ぐぅ……」
大量の食料の買い付けに成功し、お金がほとんど無くなっちゃった!まぁ、仕方なしか。
未だ売らないヒトは宰相派とずぶずぶ何だろうし、押しても無理でしょ。
取りあえず、民が食えればそれでいい。
「ソタロー助かったよ」
「いや、自分には出来ないことだったので……飢えたヒトを助けてくれてありがとうございます」
「別にお礼を言われるような事じゃないよ。じゃあ自分は皇帝のところ行くから」
「隊長はもっとこの国が豊かになったらいいと思いませんか?」
「思うよ。そしてその方法を自分は持ってる。だから内乱を終わらせて、一旦この国を元通りにしたい」
「そうですか、それじゃ。自分は自分の方法でやってみます」
「うん、それじゃあね」
ソタローと別れ、再び【古都】へ。
なんかラズノースはやたら忙しそうなので、一旦置いておいて【兵舎】に向かう。
「隊長、うまい事食料を流通させたんだな」
「まあね、でも内乱が続いたらすぐに枯渇するよ。さっさと終わらせないと」
「ふむ、じゃあ俺の建前なしの気持ちを伝えよう」
「うん」
「国務尚書の奴をぶん殴りたい。意見は合わなくとも一緒に国を保ち続けたのにいきなり裏切りやがって!」
「分かった。じゃあ自分は皇帝を国務尚書の所に送り届ける。そして皇帝の名前を使って内乱を治めて出てきた白竜を殴る」
「え?」
「なんにせよトップに立つ奴がどうしたいかはっきりしないからこうなるんだよ。やる気も無いのに上に立つなら、殴ったろうって事」
「いや、何言ってるんだ?」
「もし失敗したらさ。地下の国?皆は根の国って言ってるのか、そこへ行こう。食料が乏しくて土地はあれどもヒトは増えない状況なんだ」
「そうなのか?【帝国】じゃ力になれないんじゃ?」
「だから、失敗したときは開墾手伝ってよ。皇帝は開拓民の村長になってもらって、自分は根の国周辺の【輸送】やって、【帝国】が羨むほどに発展させてやろう」
「はは!皇帝の座を追われたら開拓民の村長か!それは面白いな!いいだろう。全部隊長に任せよう。この身もこの名もな」