576.帰還からのまずは飯を食う
刺青のお姉さんが動けるようになるのを待って、世界樹の元に帰還という事で、
待ってる間は砂浜でのんびりおしゃべりタイム。
「ところで、毒から回復したのは水精の力なの?」
「そんなところですね。先祖が水棲霊獣と縁があったらしくて、呪印を賜ったのです」
「へ~回復能力と水を操る大技か~いいな~」
自分の黒い蛇は筋力系だし、便利は便利なんだろうけど、大技って感じじゃないもんな。
逆に白い蛇は耐性と防御力だったか、コレも便利なんだろうけど大技?イメージつかない。
まあ、追々考えますかね!
他にも皆の大技について聞いたりとか、大技の話ばっかりだけども、自分に一番足りないものだもんな~。
昔何のアニメで見たっけか?主人公より高い能力を持っている筈なのに敵キャラから「あなたには怖さが無い!」とか言われちゃうキャラクター。
まるで自分じゃん?地味だし、コレといった必殺技も無い。邪神の化身の力は置いておくとしてね。
色々考え事をしたり世間話をして、刺青のお姉さんが動けるようになった所で、のんびり移動。
仮にまだ敵を倒し終わってなかったとしても、自分達は役割を果たしているし、ちょっとゆっくりしてもいいだろう。
しかし、世界樹の元に戻る前には結果は分かっていた。なにしろ胃で戦っていた筈のメンバー引き上げに鉢合ってしまったから。
今やコントロールを失った取り憑かれたヒト達は、ただ呆然と立ち尽くすのみらしい。
攻め時といえばそうなのだろうが、あまりの異常事態に一旦引き上げて指示を仰ぎに行こうと思ったんだってさ!
そして世界樹の元に辿り着けば、次から次へとボンヤリとした表情で起きる東のヒト達。
刺青のお姉さんは何処かに行ってしまったが、皆起き始めてるってことはコレでクリアって事でいいのだろう。
別に正気を失っているようには見えないし、起き抜けでボーっとしてる感じはあるが、それでも現状を把握しようとしてる理性を感じる。
とはいえ今暴走されたら人数的に完全にこっち不利なので警戒は怠らない。
エルフ達が事情を説明して回っていて自分は手持ち無沙汰だが、飯でも作るかね。皆お腹すいてるだろうし、大人数分一気に作れるものって何かな~。
現実だったら何日も食べてなかったら重湯からはじめるんだろうが、ゲームなんでね。普通に食べると思うんだよね。
取り敢えず潮汁は決定かな。要は魚介類の塩スープだし天上じゃ定番。
後は面倒だし揚げ物にするかね~。
ダンジョンで乱獲しまくった切り身があるし、適当に熱した油にぶっこんで素揚げ!
味付け?塩で食え!衣?小麦無いじゃん!
ふむ、穀類と肉類持込の必要があるな~天上。じゃないと自分の自由なお料理活動に支障が出るわ。
現状説明を受けていた東のヒト達が自分の作っているご飯の匂いに気もそぞろになり始めている。
お腹が鳴るヒトや涎をたらすヒトも……、もし暴れるようなら剣で殴るよ?
気づいたらいくつかの屋台ですでに料理の料理を始めているエルフがちらほら、なんならフードコートの支配人も珍しく厨房に立っている。
フライパンを武器にするだけあって、結構な御手前だ。武器にしているのとは違う深底の中華鍋を振っているが、特注なのか巨大すぎて一気に何十人前作ってるんだ?って感じ。
大方の屋台で準備が整ったなと思った所で、エルフ達の許可が出て一気に屋台に駆け込む東のヒト達。
邪神の尖兵に取り憑かれてた割りに元気だな~。
ちなみに子供達用は誰かが作って持って行ってくれているらしい。
腹が満ちたそばから鍋ごとケーちゃんの中に持っていく東のヒト達。まあそりゃ中のヒトにも食わせないわけにも行かないもんね。
なんなら箱ごと果物や果菜類を持って行ってるから中でも炊き出しがされるんだろう。
そんなこんな今日は料理で終わりかな~と思っていたら、急に水柱が立ち暴れだすケーちゃん。
何事かと思い、すぐに火を消して現場に向かえば、ケーちゃんが水に潜ってしまった。
自分のみならずエルフ達も緊張して海辺で待機。いつでも<融力術>を発動できるように準備。
待つこと数分、
レギオン級と見えるサイズの魚を加えて水面に顔を出したケーちゃん。
ポイッと陸に捨てて、また水に浮きながら寝始めちゃう。
「何が起きたのさ?」
「多分、あの魚がケーちゃんの気に触る事をしたんじゃないでしょうか?」
いつの間にか近くで待機してた刺青のお姉さんが答えてくれた。
気に触ったからってレギオン級を倒しちゃうとか、強すぎって言うかどんな生物よケーちゃん……。
皆で<解体>を始めているが、そっちは自分専門外なのでお任せ。
持ち場に戻り油を温めなおして、魚の素揚屋さん再開。
ひっきりなしにヒトが入れ替わり立ち代り、大盛況。ちなみにお金は貰ってないよ。向こうもそれどころじゃないじゃん?
なんかボスを倒したって言う実感も今一のままヌルッと時間が過ぎちゃったが、まあいいか。
いつもの自分て感じがするしさ。
適当に残り物をお酒で流し込んで、今日は寝ちゃおう。