572.再ケーちゃん脳解放
オーブを差し込む事で邪神の尖兵が出てくる小部屋には、司祭を元にした邪神の尖兵が前よりも大きな姿で出てきたが、
何てこと無かった。結局のところちょっとやそっと大きいくらいじゃエリーゼ様の火力で足止めされてしまう。
オールラウンダーの姫毛カールが全体のバランスをとりつつエリーゼ様を守り。
銀髪エルフが中距離で走り回りながら乱射とリボルバーを使用した銃術でダメージをガンガン重ねてく。
そして最前が刺青のお姉さん。
刺青のお姉さん強すぎじゃん?何で逃げた?
仲間を攻撃するのが怖かったから?ありそう。
強いが故に数の暴力と言う物を理解してた?それもあるよね。まさに自分が数の暴力使うタイプだし。
お姉さんが使うのは木製で木精の櫂、要は小船のオールなんだけどさ。
形状は鍔の無い柄長の剣。洋風長巻とでも言うのかね?
柄を広いスタンスで使う事で重量のあるものをバランスよく軽々と使ってるし、敵に当てられる線が長いので、命中率も高い。
基本は打撃武器なのだろうが、かなり鋭利に研がれていて邪神の尖兵の一部をガンガン斬り飛ばす。
何より見ててやばいのが軌道。真っ直ぐ振っているようで、その実グネグネ軌道が曲がりまくって、相対したら手ごわい事この上ないだろう。
殺気のラインが見えたところで、こんなグネグネラインをブロックできる気がしない。
元がオールなので、船を進ませる為には平面で水を捉えないと進まないし、逆に引くには抵抗をなくす為に線で水を切る必要がある。
それを空気の中で、空気抵抗を利用するように自在に振ってくるんだから、そういう感覚を相当磨いてるんだろうとしか言いようが無い。
更に手ごわいのは、その櫂を媒介に<木精術>を使用している事。間合いが変わるし相手を拘束するし!
柄が伸びてグレイブみたいにして振り回してたときの勇壮な事!
エリーゼ様が撃ちっぱなしで精神力がきつくなってきたらば、後衛に入り櫂の柄尻で地面を突く様に櫂を固定して術を使用すれば、パーティ精神力の自然回復力が増強されるし。
接近戦が強い上に補助も可能ってさ!しかもまだあの刺青、呪印の力は残したままだし!
自分やる事ないんだよね~。ちょっとした隙を埋める程度で十分!
まあコレまで頑張ったし、少しサボろうか!今更自分の事を弱いとか思わないけど、多分単独の生存能力が高いんだよな自分てさ。
だから尖った火力とか味方をサポートする能力が弱い。
大人数の集団戦と個人戦向きで、間がすっぽり抜け落ちてるって言うね。まあ探索係としてその分は頑張ればいいか!
さて、問題の真っ白部屋。イメージってのはどうすりゃいいんだかね~……。
入ってみるなり目の前には海岸が広がってるのは何でだ?
「う~む、我々の生活圏的に海のイメージがされてしまったようだな」
「でもこの浜、砂ですよね?こんな海岸見た事ありますか?」
「じゃあ、そこだけ自分なのかな?海辺ってこういうイメージだわ」
「ほう!地上の海とはこういう感じなのか!興味深いな!この件が解決したら見に行ってみたいものだな」
「問題はどうやって行くかですよね。自分は大霊峰を行き来出来るし、世界樹様の所から壁を伝って降りれば、地下の国にも行けますけど」
「海を突き抜けるほどに息が保つのかと問われれば、無理だろうな。壁を降りるのも多分無理だろう」
「ええ、自分も根住の力で壁にくっつけるから何も無い壁を上り下りできるわけですから」
「ふむ、何とかならぬ物か……」
「まずは、大霊峰までの道のりの確保ですかね。かつて大霊峰から移動して来た事で、過去の遺跡や生活圏の跡地があると聞いてますよ」
「しかし、そこから山を下山する方法も問題だろう?」
「まあ<登攀>系スキルは必須になりますよね。あとはポータルかな~」
「ポータル?」
「ああ、地下では陰精の【巫士】様のお告げで、いずれ世界が平和になったら外に出られるというお告げがありまして、平和を祈る祭壇として、大昔に作られたらしいんですよ。それが西側では移動手段に使われるポータルでして」
「なるほどな、作り方の分かるものであれば、我らでも建造できるかもしれないな」
「まあ、設置する場所とかにも条件があるかもしれないし、勝手に外側だけ真似ても意味無いんでしょうが」
「この地の未来に光が見えるなら、それでいいさ。さてその光を翳らす邪神の尖兵狩りと行こうか」
「そうは言いますけど、どこに邪神の尖兵がいるのか……」
「我々のイメージ出来る敵だぞ、どう考えても水中だろうな」
「銃器使いの揃ったこのパーティでどうやって狩りますか?」
皆で顔を見合わせ、また出直しかと溜息をついたところで、水が盛り上がる。
盛大に水をこぼし、砂浜まで流れ込む水は、真水。
天上の海に慣れたヒトが4/5なんだから塩水になるわけが無いか。
そして姿を現すのは到底邪神の尖兵とは思えない純白の……