547.肝臓
リフレッシュして再び血管に移動。
地道な迷路攻略だが、なんとなく血流の雰囲気が変わってきた気がする。
前より血液がドロついているというかなんというか、体の中がどうなってるのかなんて自分は良く分からないが、まるで油ものばっかり食べたかのような血液。
水道管でも台所裏が油で固まって溢れたりする事があるだろう。知らない人は動画でも何でも見れる世の中だ。
中々見て気持ちのいいものではないが、なんか妙にどろどろして時々スライムが浮いて流されているのが見て取れる。
小さいスライムってのはフルフル震えるばかりで、何もしてこない物が多いが、流されてるのもそんなやつらだ。
仮に瘴気を毒とするなら解毒器官である肝臓は大変な事になってそうだな。
まあ水に浮いているスライムまで根こそぎ潰して回るなんていうのは非効率なので、ケーちゃんの器官を解放してケーちゃんの自浄作用に期待するほうがいいだろう。
なんとなく血が集まって思える方向に向かい歩を進める。時折出てくる敵は倒し方が分かっているので、瞬殺。
そして、辿り着くホール。
中央の血溜りから溢れに溢れるスライムが、徐々に纏まって一塊の何かに変わっていく。
ん~ちょっとでかいかな~。でもここまでエルフ達を応援で連れてくるってのは中々しんどいものがあるし、やるしかないかね~。
ちっと地味になるが、こつこつ削り倒しますか。多分この感じは大技一発でひっくり返すような相手じゃない。
ぶよぶよの塊から触手が生えるも中央の血溜りに嵌ってまったく動けなさそう。
なんだろう脂肪肝って事かね?自分もお酒飲むから十分注意しないとな~。海草や野菜を十分に摂取して、お酒を控えてよく運動するって言うね。
運動はあまりダイエットに効果が無いとか屁理屈言う人いるけど、脂肪肝には適度な毎日の運動が効くらしいよ。体が第一だし、がんばろう。
と言うわけで、ゲーム内といえ運動運動!
伸びてくる触手をがんがん切り落とす。これまでの経験上自分はこの手の多方面攻撃を斬り落とすのはかなり得意。
世界樹の剣で斬れば、次から次へとただの瘴気へと変わって、部屋中に瘴気の硫黄のような臭いが充満していく。
やっぱりエルフ達を連れてこなくて正解だろう。こんな臭いの中耐えられるわけ無いもん。
しかし、ちょっと単調になってきて飽きてきたし<青蓮地獄>を発動。
ちょっと目先を変えて、大ダメージを狙ってみよう。
まずは左肩から氷盾を発動。これだけで周囲の気温がぐっと下がっていき、案の定邪神の尖兵の動きも鈍り始める。
氷精の冷気にどの程度の耐性があるか知らんけど、水に浸かっている以上その水が凍り始めれば動きも鈍くなるよね~。
……よく考えたら水が凍るほどの低温になってるのか自分の周り……そりゃ武器屋のおっさんも寒いって言うか。
といってもまだ血液の表面が微妙にシャリシャリする程度、相手の攻撃の隙を見つけ剣先を血液に漬ける。
凍剣術 獄結海
完全に血液を凍らせ邪神の尖兵の動きを封じる。
触手の動きも完全に鈍るどころかノロノロとうろうろするばかり、
試しに散弾銃をぶっ放せば、スライムの粘液感を失いシャーベットが爆ぜて煌いてばら撒かれ、地面に落ちるたびにただの瘴気へと変わっていく。
ただでさえ巨体の相手、まだどんな奥の手を残しているかも分からない。ならばこの半固体状態で、ぼこぼこにするのがいいのではなかろうか?
その後は動きの遅い触手を全部剣で切り落とし、生え変わるまでの時間に銃をぶっ放して表面を削り取っていく。
再生するたびにサイズが縮む邪神の尖兵を徹底的に凍らせ、動けなくする事を優先して一方的に削り取り、
やっと核が見えてきたと、ただただ長い作業に終わりが見えてきた時に様子が変わる。
凍りながらも丸まり始めた邪神の尖兵、ダメージを貰いながらも徐々にただの球体になり、
爆発!
ホール中にスライムを撒き散らして、消えてしまった。
自分は氷盾を前面に出し左半身で受けたが、スライムの破片がかかった場所が焼け付くように痛い!
足や腕にちょっと飛沫がかかっただけだが、強酸による痛みと防具類の耐久値の低下が酷い。
いきなり壊れるタイプの攻撃じゃなくて良かったが、こりゃここの司祭を倒したら一回戻らなきゃ駄目だな。
主要器官には司祭がいるって言うし、ここにもいるんだろう。
あれだけのスライムが溜まっていたのだ。あまりの瘴気に肝臓機能がいっぱいいっぱいだった可能性も無くもないが、
自分の予想は違う。だって心臓とかはそこまで酷くなかったじゃん?
つまり、司祭がケーちゃんを邪神の尖兵漬けにするために敢えて肝臓機能を低下させてたんじゃないかって言う予想。どうよ?
そもそも肝臓ってのはある程度余裕を持った器官なのよ。だからちょっとやそっとのことじゃ音を上げない沈黙の器官なの。
そりゃだからこそ大事にせにゃならんけど、この惨状は意図的なものだと思うな~自分は!
という事で、司祭のいる部屋に続く道を探す。
邪神の尖兵のいなくなった血溜りはいくつかの層に分かれていて、流れ込んだ血が滞留する場所、
いくつものフィルターを通し、異物を取り出すのであろう場所、
血だまりに何かが流れ込むように太い管が繋がっている場所、
しかしそのどれもが仕切りも何も無く流れてきた血が素通り、完全に機能していない。