545.血管迷路で大いに迷子
山程の食料を持たされ装備もメンテナンスに出し、いざケーちゃんの血管へ!
生物の内部の筈なのに、人工感のあるダンジョンって言う色々盛りすぎな世界観なわけだが、まあ嫌いじゃない。
邪神の尖兵に取り憑かれた血管内生物に喧嘩売られるが、ヒトをやるよりはよっぽど気が楽なので、それもいい。
気ままな一人旅と一人戦闘。出来るだけ早めに攻略すべきなのは分るが、そこは自分の責任じゃないでしょ?
だって完全に迷宮だもん、血液の流れを見ればどっちに流れてるのかだけは分るけどさ、割と見たような風景がずっと続く訳で、何がなんだかあっという間に分からなくなってしまった。
最悪一生ここから出られないのかって言う、不安もある。
まあ最悪自分は死に戻り出来るわけだが、死ぬって事は一生が終わるってことで、ある意味一生ここから出れない・・・?
まぁ、敵の種類は大体決まっているので、倒し方のセオリーも決まっている。つまり自分の歩みをとめるものは無い。
そして、ガンガン迷っていく。ここどこ?
何とかして現在地を知りたいのだが、そういうときに限って敵が次から次へと出てくる。
まずはいつものデカイ口だけの敵!口だけって言っても文句言ったり悪口言うわけじゃないけど、ギザギザの歯で噛み付いてくるから、速攻邪神の尖兵の核を潰す。
次に出てくるのは毒撃ち込んでくるタイプ!も別にさくっと倒す。トゲトゲの見た目だけ攻撃なタイプも最早敵じゃない。
なんかさ!もう!せめて敵になる奴出て来い!ひたすら頭が痛くなる迷路にただの雑魚ばっか!こんなんじゃ自分ときめかないよ!
まぁね今まで散々地道に移動ばっかりしてた自分が連戦に連戦を重ねてるわけだし、今が成長の為の重要な時間なのかもしれないけどさ。
う~んにしてもな~、今完全に孤独なわけじゃん。どうすっか~。
「根住~」
『何~?』
「敵も弱いし、いつまで歩いても代わり映えしない場所だし、何かもう・・・」
『そうなの?でも地下の時もそうだったじゃない?どこまで行ってもただ暗いだけだし』
「そう言われればそうだけどさ~。にしても何か事件無いかなってさ」
『そうだね~でもさっきから梯子登らないのはなんで?少し休めば気持ちも切り替わるんじゃない?』
「え?梯子なんてあった?」
そう言って、周囲を見回すと壁に目立たない梯子が架かってるじゃん!
ちょっと壁が凹んでいて、コの字の壁に棒が渡されている。なんか無造作に横に棒が入ってるだけなので完全に見落としていた。
凹んだ壁から上を覗けば、上も暗い?
部屋があるのか上の階層があるのか……あれ?よく考えたら、下に向かう梯子もあるんじゃない?
壁をよく見ながら道を適当に進めば、下に向かう梯子も見つけた。ずーーーっと見落としてたわーーー!
でもよく考えないとな。梯子を使って上や下にも行けるとなると探索しなくちゃいけない範囲がぐっと広がっちゃう。
既に迷子なのに、やばくね?
まあ、いいか!今更焦っても仕方ないし、地図も目印も無い場所通って肝臓とか腎臓に行けとか元々無茶なんだし、しょうがない。
上~か下~かどっちにしよう~!
ファンタジー生物だし分んないけど、普通の動物なら背中寄りに腎臓があった気がするんだよね。
肝臓は横隔膜の裏辺りだから、上とか下とか分からないけどさ~。
ん?顔が犬なだけだけど、心臓近くに肝臓って無かったっけ?あれ~でも動物の内臓とか詳しくないからな~。
下行こうかな。腎臓の方が遠そうな気がするもんな。心臓からまだそこまで遠く離れてない所で、探索して肝臓探そう。
と言う事で、適当な梯子を下へ。相変わらず暗い水路にしか見えない血管。
しかし、この階からは水の中から出てる敵が増えた。水から飛び出して道沿いをうろうろと歩き回って、また水に戻るを繰り返す謎の敵。
何もの?ちなみに何で敵かって分るかと言うと、完全に邪神の尖兵の核をくっ付けてるから。
しかし、邪神の尖兵に取り付かれてるヒトでも生き物でも傾向を見ていると、水を媒介にしてるのかな?
木は水吸うし、ヒトもケーちゃん体内の水を飲んだとか?
ケーちゃん体内の水ってのも何か微妙な感じだが多くのヒトが住んでる訳で、全員が毎回外に出て水飲んでるかって考えると不自然。
外から飲用水を運び込んで保管してる可能性もあるけどさ。なにせ海は海でも天上の海!
天上の海は世界樹が集めたでっかい雲が海になってるだけなので、淡水なんですよ。海の生き物住んでるけどね!
もう生態系がめっちゃくちゃなんですよ!でもまあ気にしても仕方ない。ケーちゃんを何とかしてやらねばな。
さてどんな機能なのか分からない相手を倒しちゃいますかね。
うねうねと動くスポンジ芋虫みたいな見た目の相手。これと言った攻撃的な特徴が無い辺り、免疫じゃ無さそう。
こちらに気がつくと、うねうね全力で体が伸び縮みしながら向かってきて、足にぶつかってくるが、痛くも痒くも無い。どうしよう!
本当にそれしか出来ない様だ。可哀想だが邪神の尖兵の核だけ潰させてもらうね。
さくっと剣を刺せば、血流の中に戻っていった。