544.腎臓か肝臓か
桃色司祭は世界樹の元に皆と一緒に収容、どこと無くほっとしたような顔で眠りについていた。
しかし未だ誰も目覚めないのはどういうことだろうか?まじで一斉に大暴れとかやめてくれよ。まじで!
そして一番重要な氷結解除、世界樹は何の気なしに続けているようにも見えるけど、いつまでも迷惑かけ続けって訳にもいかないでしょう?
それこそ人として、出来るから任せてもいいんだ~って訳にはね~・・・。勿論苦手な事は得意なヒトに頼んだり任せたりもするけどさ~。
心臓を解放出来たのでケーちゃんが眠りに付いてくれるなら、世界樹にも休んで貰おうかなって言う話。
一応ケーちゃんが暴れ出した時の為に、エルフ達を集められるだけ集めていつでも<融力術>を使用できるように準備だけしておく。
ちょっとばかり緊張、
『え?凍るの解いちゃって大丈夫なの?』
「大丈夫らしいので、お願いします。駄目ならもう一回凍らせるなりするので」
『分った~』
そして、寒さで何となく煙っていた空気が晴れやかに元の天上の気候に戻る。
ケーちゃんの凍った毛が融け始め、柔らかくなって丸まっていく。ポタポタと水を垂らしながら、
『ふわぁぁぁぁぁぁん』
と、大あくびをして寝始めるケーちゃん。
「ん~大丈夫そうっすね!解散!」
うん、超あっさり終わったけどこれでよし!面倒臭いこととか嫌だもの、もう寝ててよケーちゃん。
思い切り伸びをして、あ~あ~腰が痛い!最近腰が痛くて寝不足でな~。
丸まってよく眠れるケーちゃんが羨ましいぜ。
一旦水上要塞に引き上げて、次の目標について話し合う。
「また司祭様を解放してくださってありがとうございます。心臓の司祭様は特に武闘派だと思ったのですが・・・、あっ!勿論普段はお優しく寛大な方ですが!」
「うむ!あの鍛え上げられた筋肉だったら、きっと武闘派だろうな!」
「つまりそれを倒す隊長は更に脳筋って事か!」
「脳筋というより、狂気ですね。どんな相手であれ抗い、従わない気概と言うか寧ろ頭から物を言う者を徹底的に潰すという・・・」
「はい!それまで~問題は次の目標だね~」
パンパンパンと手を叩きながら仕切りなおす。問題は次の司祭と居場所と、そこへ至る道を確保する事でしょ。
「一個不安なのはまた襲い掛かってこないのか?ケーちゃんは」
「心臓を動かす司祭様がいないですからね。当分は寝てると思います」
「へ~でも司祭だって絶対何も無い訳じゃないだろうし、代わりのヒトとか次世代とか育ててないの?」
「・・・いますね・・・どうしましょう・・・」
「分った!心臓は重要拠点として占拠しよう!それならケーちゃんもずっと寝てるわけだもんな!」
「心臓に行くには血管迷路を通らなきゃならないのに、どうやって補給線引くのさ?」
「確かに血管を通れば全身どこにでも行けますけど、内部は私達でも迷う位ですから時間は稼げると思います。その間に重要器官を押さえていけば、ケーちゃんを弱体化できると思うのでいきなり暴走と言う事は無いかと」
なるほどね~脳のコントロールを取り返す時間を稼ぐ為に重要器官をおさえてケーちゃんを弱体化させるという訳か。
桃色司祭の後継者が今どこにいて、どのタイミングで心臓を目指すのかは分らないけど、サクサク内臓占拠を進めねば!
「じゃあ、次はどこ狙う?消化器官を進むなら胃か腸かね?」
「そんな所に行っても居住区に住むヒト達とむやみに戦う事になるばかりですよ」
「え・・・でも普通に進めるのそれ位じゃん。どんどん占拠していかないと・・・」
「あの、ケーちゃんの血液が邪神の尖兵に侵食されてるらしいって話ですよね?」
「わかんないけど、でも攻撃してくる血液中の生き物みたいなのは邪神の尖兵に寄生されてたね」
「じゃあ、肺の時と同じように肝臓と腎臓を解放すれば、血管も安全になるかもしれません」
うん、なるほど内臓を占拠しつつ浄化も進めて邪神の尖兵の勢力を削げと、そして最後には脳のコントロールを取り戻せと、そう言うことか。
誰が血管迷路通って他の内臓に向かうんですか!はい!自分ですよね~。
知ってますよそりゃあ・・・。っていうか消化器官周りにヒト住んでるとかケーちゃん何食べてるのよ?
あれか?住んでるヒトから生命力をちょっとずつ吸い上げるとか・・・ヒトに住まわれる事で生命維持してる生物なのかもしれない。
まあそれはともかく、重要器官には司祭が待ち構えているのだろうから、それらを倒すのが自分の仕事なんだろうな。
しかし、肺以降口から距離が伸びてきたし、そろそろケーちゃん内部でログアウトする事も考えねばならない。血管内に休憩所っぽいのがあったのはそのフリかね?
「仕方なしか、自分が血管迷路突破しよう。ただ当分はケーちゃん内部で生活する事になるんだけど」
「食事と酒は用意できるだけ用意しよう!」
「血管内部なら休める場所がある筈ですので、くれぐれも無理せずに」
「肺までは我々が占拠し、帰還ルートは確保しておく!頼んだぞ!」