529.お祭りの準備
ログインすると、何か皆慌しい。
「ねぇ、何か事件でもあった?」
通りがかりのスナイパーエルフに訊ねると、
「いや、例年だと東の者が世界樹様の元にやってくる頃だから祭りの準備だ」
「え?戦うかもしれないのに祭りの準備なの?」
「そうだ!皆祭りが大好きだからな!ちょっとくらい様子が変でも祭りを見ればみんな陽気になるだろう!」
「何を言ってるんですの?東の者が邪神の尖兵に操られているかどうかはまだ未確定情報だから、何食わぬ顔をして準備だけはしておいて、いつでも戦える様に警戒するって言う話だったでしょう?」
「分かってる!でも祭りの方が皆楽しいだろうが!」
甲板から海の方を見やると小船が世界樹の方へ行ったり来たり、荷物を届けているようだ。
「祭りって何やるの?手伝うよ」
「色々食料や何か交換したり、踊ったり、戦ったり、お酒飲んだりだな」
「ああ、じゃあ、お酒だけなら山程持ってるから出そうか?食料は結構な量地下に置いてきちゃったけど、酒だけはある。そりゃもう酔い潰すほどある」
「じゃあ、世界樹様の根元の辺りで準備してるからそこに出してくれ」
って事なので、適当な小船に同乗して世界樹の根元へ。
結構な人数で、屋台のような小屋をいくつも建てている。風が吹くともそんな強風じゃない、いつもそよ風が程よく涼しく、程よく温暖そんな天上の地。雲の上なので雨も降らない。
そこらじゅうの掘っ立て小屋に食料や貝から取れる資源なんかを並べてる。
しかしお酒の小屋が分からないので、世界樹の根元に適当にお酒を樽で積んでいく。
何かお供え物の様になってしまった。
『何なら一樽倒してもらってもいいよ?』
「世界樹様の分なら、沢山は無いけど八塩折之酒なんてどうです?」
『なにそれー?珍しいお酒?』
「【森国】の大蛇を酔わせるお酒ですね」
『へ~じゃあ、それで~』
って事なので、虎の子だが世界を管理する一柱にお供えするには悪くないと思われる希少なお酒を根っこに垂らす。
「お納めくださ~い」
『これはすご~い!じゃあ、お礼にこれ上げるね~』
すると落っこちてくる枝!巨大な枝!
世界樹様からすると先っぽのほっそい爪先程度の物だろうが、自分にしてみると死の危険を感じるサイズの枝が落ちてきた。
このサイズの枝と言うか最早巨木としか言い様のない物どうせいと・・・
「な、なんじゃこりゃー!」
武器屋のおっさんがなんか驚いてるけど、ここはおっさんに押し付けるか?
「お酒お供えしたら、お礼にってくれたんだけど、使い道が無くて」
「いやいやいやいや、世界樹様の枝だぞ?で、で、伝説の素材だぞ?あれか?もう全身世界樹様装備にするか?」
「いや、自分は<皮殻甲>と<服>じゃん世界樹様の枝じゃまかなえないじゃん?」
「そ、そうか・・・じゃあ、俺が何か考えてやる。そうしよう・・・うんそうしよう」
何か武器屋のおっさんの様子が変だが、まあ仕方なしか。よっぽど凄い素材なんだろう。
その後も荷物運んだりとか手伝っていると、一箇所明らかな闘技フィールドが作られている。
地下のように金網では無い。ただのフィールドだが、その緊張感で何となく分かる戦闘の臭い。
高まるね~。東の者の戦い方が分からないけど、だからこそ楽しみだわ~。
お祭りっていいよな~テンション上がるもん。
でもさ、もしさ、邪神の尖兵が邪魔したとしたらさ・・・。流石に怒っちゃうかもね。
まあ、元々邪神の尖兵相手に手を抜くなんて事は無いんだけど、容赦する必要が全く無い相手と状況って事だよね~。
なんなら邪神の尖兵って倒すと身体能力とかスキル熟練度溜まりやすくなるっぽいし、ここで一気に今持ってるスキルの熟練度溜められたりしないかな?
エルフ達はまだ半信半疑だけど、自分的には完全にそういうストーリーだと思ってるんだけど、どうだろう?
天上の国から東へ渡る前哨戦的なストーリーじゃないかなー、自分が西の大陸を一周した時みたいな。
まぁ、自分一人で東へ行けって事は無いだろうし、あくまで前振り的なストーリーの一つだとは思うんだよね。
そもそも大霊峰の頂上の先にある海を渡るとか言う難所中の難所なんだから、いくつもストーリーを越えた先にある話でしょ?
一人で行って一人で解決して来いなんて、そんなクエストいくらなんでも・・・ねぇ・・・。
まずはこの地までの交通の便と言うか、ルートを作る所からやる事がいろいろある筈!
つまり、自分は目の前の事である、東の者達の異常を解決して親交を深めようってそう言うことじゃん!
うん、余計な先の事考えて、頭が痛くなるのは置こう。