528.呪印
いや~楽しかったわ~。
【訓練】と言えば、やばい師匠達にボコボコにされるのが基本だった【帝国】と違って、好きなだけ戦っていいよってのが、なんともテンション上がっちゃう。
まぁ、課題としてはもう少し左肩の氷の盾を上手く使いこなしたいな~。展開のタイミング次第でそれなりの範囲ガードできるもんな。
ブロックとして使えないのが辛い所だけど、受けざるをえない攻撃のダメージを減らせるだけで助かる事この上ないもんな。
「あの、すみません・・・」
あとは 陰気 でターゲット外して隠れてからの奇襲だよな~。やっぱりファンタジー忍者装備なんだし、消えてからの奇襲とか熱いよな。三羽烏達と相談したいところだ。
「あの~!」
「うおっ!びっくりした。どうしたの?」
何か急に刺青のお姉さんが話しかけてきた。世界樹様の所で倒れていた時以来絡んでなかったからな。
まあ、この前皆で話は聞いたけど、普段住んでる場所から出ざるを得ない状況に同情はするよね。自分も指名手配されたりと中々しんどい時期もあった訳だしさ。
「先日は林檎ありがとうございました」
「いや、ここいらじゃ世界樹様のおかげでいくらでも手に入る物だし、別に気にしなくていいよ」
「それに、今回同胞がおかしくなってしまった件でも、協力してくださるようで・・・」
「そりゃね、ここのヒト達には世話になってるし、できる範囲で手伝うつもりだけど?」
「そうですか、あの時出来れば厄介事に関わらないようにしているように見えたので、いいのかな?と」
「まぁ、自分は見ての通り余所者なのに勝手放題厄介事引き込んだらまずいでしょ?」
「そう言う事でしたか。ところで先日からその腕の 呪印 が気になっていたのですけど」
「これ?黒い方が<粧印術>で、白い方が<晶印術>だね!」
「・・・?白い方はこの地に住む方達の術だと言うのは分かりますけど、黒い方は 呪印 では無いのですか?」
「そう言えば<粧印術>の使い手に入れてもらった物では無いから、分かんないかも?縁あって黒い蛇が腕にくっついてた時があったんだけど、お別れのときにいつの間にか描かれてたんだよね」
「それがその<粧印術>?だと言うのはどなたかに確認されたのですか?」
「多分その筋の達人と思えるヒトに見てもらったけど、珍しい物で膂力と握力が上がるって言われた気がする」
「そうですか、我々の 呪印 に非常に似ているように見えたので、何か関わりのある方なのかと思っていたので」
「その 呪印 ってのはどういうものなの?何か物騒な単語に聞こえるんだけど」
「呪とは力に名や形を与え具体化するって事なので、別に物騒でもなんでも無いですよ。ちなみにその印の名前はあるんですか?」
「いや、無いけど?」
「そこが具体化されるだけで、効力が倍増というか・・・本来の力を発揮できますけど?あとは我々の<呪印術>を身につければ更にその文様を媒介とした術も使用可能ですが?」
え?この印て本来の力を発揮してない状態だったんだ?何だかんだ筋力が上がってるって言う自覚はあったんだけどな?
身体能力がほとんど上がらなくなった状態で、こういう補正は助かるな~って言う・・・。
「多分だけど、黒蛇は漆黒将軍に関わりがあるとは思ってるんだけど名前は分かんないな~」
「その漆黒将軍って言うのは?」
「昔邪神の化身討伐で命を落としたって言う番外英雄かな。生き残ってれば英雄に数えられたんだろうけどね」
「その方の残した念だとすれば、何か心残りを解消されたとか?」
「ああ、復活した邪神の化身を倒したよ?」
「え?・・・英雄じゃないですか!じゃ、邪神の化身なんて神話や伝説に残ってる強大な邪神の使いの筈!なんか・・・なんかすみません」
「いや、別に気にしなくていいけど、成り行きで戦っただけだし、そんな大層な事じゃないよ」
「え~・・・、しかしそれだけの大きな力を持つ方の念だとすれば、やはりちゃんと開放された方が良いかと」
「そう言えば、その顔の 呪印 も何かそういう誰かの念とかなの?」
「そうですね。私は祖霊の力を具現化してます。こちらの方達は宝石を媒介に精霊の力を印に変えていますが、我らは先祖の力を宿していますので、代々力が高まって行くのです。私の寿命が尽きれば次の者の力として更に力強くなっていくでしょう」
「ああ、じゃあ、一族系の力であって余所者に使える者じゃないっぽいね」
「そんな事はありません。勿論私の力は私の先祖が残してくれた物ですが、あなたの印の様に強い未練を残した者やヒトならざる大きな力を持つ者から力を譲り受ける事もありますし・・・ちょっといいですか?」
と言うなり自分の腕の黒い蛇に触れるお姉さん。
「それで分かるんですか?」
「ええ・・・死と再生の蛇?それにヒトを束ねる力?・・・どうやら好きに名前を付けていいみたいですよ」
「そんな、好きに付けていいって」
「すでに未練は解消されているようなので、あなたに力を貸して下さるそうです」
「じゃあ、右は白だから、左は黒蛇の印とか・・・」
ぱっと見は変わらない、
変わらないけど何かしっくり馴染んだ感触に、なんか力が引き出された状態ってやつを納得できた。
ぐーーーーー!
緊張感を完全に欠いた腹の音に、
「何かすみません」
「何か食べようか、自分も今日は飯食って寝るし」