518.休みかと思ったら
さて、今日こそ世界樹の根を齧ってる奴を倒しに行くぞと勢い込んでログインしたものの、
幹部勢が酷い筋肉痛や腰痛で動けず、若手だけで水上要塞を運営するのにてんやわんや。
何だかんだベテラン勢がちゃんと見守って適宜フォローするのって大事なんだね。
装備屋のおっさんは若い頃から技術職だったらしく【訓練】には参加してなかったのだが、若手のフォローで忙しそうだ。
邪魔にならないように甲板の隅に自分の場所を確保して今日は何をやろうか考える。
しかし、筋肉痛や腰痛なんて状態異常はなかろうにな~。NPCを無理させた時に出る特殊状態とかなのかな?
プレイヤーが一方的に酷使しないようにとかさ。
一応自分も身分のある身だし、西の地なら多少無理な事でも言える立場なんだろうし。
どういう理由の物かは定かじゃないけど、ゲームバランスを保つ為なんだろう。
雲より上にあるこの地はいつも晴れ、何にもない青空を眺めつつ、何にもしない時間を過ごす。
多分この天上で自分が解決すべき問題は、例の逃げてきた子の事なんだろうが、
天上のヒトって他に何が望みなんだろう?
地下なら外に出たいとか、ご飯食べたいとかあったけど、天上のエルフは何か満たされてるみたいだしな。
まあ、宝石とかあれば助かるんだろうけど、あと木材があれば拠点を増やす事も出来るのか?確か。
西は大霊峰を降りられないって話だけど、雷精羊の毛でも使って服作ればすぐ出られそうだしな・・・。
無理か崖を降りられるほど<登攀>育てる場所ないや。
そうすると、この地のエルフも外に出られないのか!不満が溜まる前になんとか考えなきゃ・・・また誰か暴走する前にさ。
ただただ柔らかな風に撫でられてると眠くなってきた。
ちと海に潜るか!付近の海なら大した魔物もいないし、水に浸かって気持ちを緩めよう。
そして甲板から飛び降りてそのまま海に潜り、空を見上げながら深く沈んでいくだけ、途中偶々伸びていた世界樹の根に引っかかったので、そのままそこでボーっとする。
流石にもうそろそろ【帝国】に戻っても追いかけられる事も無いかなとは思ってる。
そりゃ何人かは興味本位に色々聞いてくるかもしれないが、集団に取り囲まれるような事は無いだろう。
皆それぞれにゲームを楽しんでるんだし、大型アップデート後の新要素って意味では自分はきっと遅れを取ってるだろう。ずっと引き篭もってるだけだしさ。
【帝国】が恋しいかと言われると、まあ所属地域だしな位の感想しか出てこないけど、
【帝国】を出る時に自分なりにやってみたいって思って、今はちょっとだけやりたい事がある。
今までは頼まれてやっただけだったし、言われてやっただけだった。後は思いつきの寄り道ばっかり。
まあ、それはそれで楽しかったんだけどさ。
でも、目標という程のものでも無いが、出来るかどうかやってみたい事が漠然とでもあるってのは中々張り合いがある。
その為には目の前の事を一個一個クリアしていかなきゃしょうがない。
・・・そう言えば、地下のあの三人はどうなったかな?
何となく上手くいってる気はするんだけどね。それぞれに合う場所を紹介したつもりだし、何だかんだ適応力のありそうな三人だし。
とは言え、紹介したのは自分なんだから【帝国】に戻る前に様子だけでも見に行かなきゃな。
息が続かなくなってきたので、一回浮く。
海面に顔を出した所で、デカイ食事処の支配人が、
「あいててて、アンタは元気なようだね。ちょっと食事の方が人手不足なんだ。上がってきて手伝ってもらえるかい?」
そう言うが早いか綱を降ろしてきたので、それを登り甲板に出てフードコートに向かう。
フードコートは飯を食いたいヒトはいれども、開いてる店が少ない。
ふむ、これはちょっと大量に作らなきゃなるまい。
そうなると魚を捌いてる暇は無いな・・・でも自分には大量の切り身がある!
そう!カワハギの切り身!こいつを大放出しようじゃないか!
ガンガン酒蒸しにした後煮て味付けをしていく。先に一気に酒蒸しにする事で時短出来る漢飯。
後は天上で取れる野菜類を片っ端から炒めまくる。
何炒めかなんか分からないほど、市場にある野菜を片っ端から切って炒めりゃ食える!
後大量料理と言えばスープだろう。
なにかの貝類と野菜を鬼のように鍋にいれ、水を入れ、青い瓶のスープの元を入れれば、食えない事は無いだろうスープの出来上がり!
味見してみると素材がいい所為か、それとも<簡易調理>のスキル熟練度のおかげか、どれもまあまあの出来栄えだった。
皆疲れて体が言う事聞かないみたいだし、もう飯食って寝たらいい。