517.世界樹の根
ログインすると戦闘【訓練】で大半の戦闘員も狩りに出る男達もぐったり寝込んでしまっていた。
皆テンション高かったもんな~無理しすぎだぞ。
とは言え、水上要塞の業務は回さないといけないのだが、一線を引いたヒト達が代理で引き受けてくれてるようなので、
本当にそういう時にベテランって光るよね!
自分は【巫士】様と世界樹の元へ。
まだ採取すると決まったわけでは無いが、一応事前に根の件を相談しに行く。
早速【巫士】様が祈るがどうなんだろう・・・、
「駄目ですね。今日は答えていただけないようです」
「そうですか~。まあ仕方ない事ですよね」
自分も物は試しに<青蓮地獄>を使ってみた。地下にいた時はそれで気づいてもらえたし。
『あれ?うちの子の知り合いだよね?』
普通に答えるじゃん【巫士】様~。
「こんにちは!今日はちょっと相談があって来ました」
『え?何々?なにかあった?』
一瞬驚いていた【巫士】様だが、すぐに気を取り直して話し始める。
「いつもお世話になっております。種族を代表してこうして参ったのには理由がございまして、単刀直入に申しますと邪神の尖兵が発生したかもしれません」
『それは、大変だ!じゃあ武器にする為に根が欲しいんだね?』
「はい、そうなります。かつての様にならぬ為十分に量は絞り、世界樹様の負担は出来るだけ減らしたいとは思っているのですが、いかがでしょう?」
『いいよ!でも直根の近くは困るかな。十分に伸びきった先の根なら別に構わないよ!』
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
『いいよ~!頑張ってね~』
「・・・何であんなあっさり話せるのです?」
「前に宝樹達に世話になってさ。宝樹ってのは世界樹の子供なんだけど、邪神の尖兵に絡まれて困ってたから、ぐるっと西の国々を回って邪神の尖兵退治をしたのさ」
「そうなんですか。それでご縁が有ると!しかし、話は戻りますが伸びきった根と言うのはどの根を指すのでしょう?」
「さあ?地下にも根は伸びてるし、横もどこまで伸びてるのか想像がつかないし」
『あのね~、そしたらね~・・・、君たちの住まいから少し南に行った所で根をカジカジ噛んで来る奴がいるから、そいつを倒してくれたらそこの根っこあげる~』
「すみません、わざわざ!ありがとうございます!」
話は全部聞かれてるので、そそくさと【巫士】様とその場を立ち去る。
すぐに司令部に戻り、状況を説明。
「ふむ、南で世界樹様の根を齧っている魔物か・・・」
「広い場所なのかもしれないな。貝を採るような狭い場所ではそんな光景を見たという話は聞かない。逆に広い場所は危険なので我々は潜らぬからどうなっているか分からぬ」
と、司令部にいつもいる品の良いおじさんエルフ。
ふむ、危険を承知でレギオンとの戦闘か?深い場所でなければいいけど、下手をすると装備を整えるのが大変だぞこりゃ。
早速探索に行きたいところだが、若者達は尽くぶっ倒れてるんだった。
何か、気が急いて来ちゃったな。自分だけでも何か進めておかないと・・・。
「ふむ、若い連中は【訓練】で寝込んでおるし、今日はベテラン勢の【訓練】でもするか?」
「え?水上要塞の機能はどうするんです?」
「浮いてれば何の問題も無い。何よりベテラン勢は若い奴らよりはいくらか危険にも慣れてるし、多少骨があるぞ?」
「じゃあ、本日は大人のメニューと行きますか?」
「悪くは無いな、ふふ」
と、言うわけで本当に最低限機能以外は停止させ、ベテラン勢による【訓練】が始まる。
そこには見慣れたデカイイカツイフードコートの支配人に目に傷を負った市場の代表。
その他様々あちこち水上要塞で、それなりにヒトをまとめる立場にある人達だ。
いいのかな?こんな立場のありそうなヒト達に【訓練】して?
「さて、まずアンタの階級は【将軍】だと聞いてるが、何て呼べばいい?」
「自分は隊長って呼ばれてるけど、国元では称号としてそれを自分の名称としていいって許可も貰ってるね」
「ふん、隊長って言葉は我々にもあるが、ヒトを率いる立場にある陣頭指揮官という意味だ。それを個人の名称として使っていいなどと、よっぽどの戦いを潜り抜けてきた修羅だという事か」
「面白い!久しぶりに骨のある若者だ!やはりヒトというものは命の危機の一つや二つ三つや四つ越えてこそ真価を発揮するものよ」
「確かにな。どんなに見苦しくとも泥臭くとも生き抜いた先にある胆力。それがものをいう事もあるさ」
うん、なんだろうエルフ達も安穏と暮らしてたわけじゃないんだろうな。
そして、始まる地獄。
しかし、どんな地獄でも常に冷静さを失わず、無駄な体力は使わず、それでいて手抜きをせず、ギリギリを知っているが故の運動能力。どんな状況でも発揮される老獪さ!
若い連中みたいな無理な動きは無い。完全に最適化された動きでこちらを翻弄してくる。
デカイ支配人は瞬間的に尋常じゃないパワーを発揮できるが、それを解き放つまではじっくり待ちに徹する慎重さ。
でも武器がフライパンってどうなのよ。フライパンを防御にも鈍器にも使い、空いた手に持ったサブマシンガンで適宜牽制ってさ!
市場のおじさんも非常にポジショニングがいい、目の傷が荒々しく見えたがそんな事は無い、非常に丁寧に周りをフォローしている。
他にも投網使いやら、ここぞと言う時の銛の投擲術で大ダメージを狙ったり。
何でこれで集団戦が出来ないんだ?エルフよ!
いや~これこそ地獄の【訓練】だ。
チームを何度となく組み直し、その度に戦い方を模索しつつ、戦い続けあっという間に時間が過ぎていった。