511.天上の海の果て
自分はこれまでゲーム中の大半の時間を移動に費やしてきたのだが、
ここ最近は毎日ログインの度に【訓練】してるか魔物と戦ってる。
でも、よく考えたら他のプレイヤーは強くなる為に日々戦いに明け暮れてるんだよな~。
集中して戦ってると、どんどん戦闘感覚が研ぎ澄まされ、あらゆる行動の精度が上がり効率が上がっていく。
そして、それはエルフ達も同様。
日に日に精神に付いた贅肉が落ちるようにギラついてきた。
ちょっと油断すればクリーンヒットをくらう緊張感が気持ちを高揚させ、
エルフ達との戦闘中にあまりに高まってニヤつきが抑えられない時すらある。
銀髪エルフは直線的な乱射を得意としていたが、それでは自分にまともにダメージを与えられないと最近は跳弾まで利用し始め、多角的な攻撃でかなり手強くなってきた。
ギリギリで弾を避け切った瞬間。ふと気が散る。
「そう言えば、天上のエルフってこの水上要塞にしか住んでないの?」
「え?今?!」
飛んできた弾を剣で撥ね退け、話を続ける。
「いや、だって海結構広いじゃん。他にも拠点があってもいいかなって」
最近すっかり気配の消し方がうまくなったスナイパーエルフ。
陰精装備を手に入れたのも大きいが、撃つギリギリまで殺気を発さない。
それでも、当たる気は無いけど。
長距離の弾道を避けたところで、自分の周囲に殺気が広がったのを感知し、
気脈術 冷気
耐性を高めた所で、爆発が起きる。
我が強かった姫毛カールも連携が上手くなった。ヒトの動きを見て指示を出しコントロール出来ていたのだから、ヒトの動きに合わせられるのはいい傾向だ。
「おしゃべりを始めて余裕のつもりですの?」
「いや、自分は集中したり緊張感が高まると他の事考えちゃう癖があるから、それでも戦闘自体はちゃんと見えてるから大丈夫」
姫毛カールの部下がライフルで援護射撃をしてくるが、タイミングがもうちょっとだな。
軽く走って遮蔽物に隠れ射線を切り一息つく。
気脈術 陰気
隠れた状態から更に隠れ、サバゲーフィールドのコンテナの上に登り、頭上から散弾を撒いて銀髪と姫毛を凍らせた。
二人は一旦置いておき、部下の方に向かって走り寄り剣で倒す。
スナイパーエルフを探し、うろうろとするが、最近一発撃っては移動を覚えたスナイパーを倒すのは中々面倒だ。
先に銀髪と姫毛を最大火力で一人づつ飛ばし、姫毛の部下を一人づつ屠っていき、
最後にスナイパーを見つけた。
「くっ!何で勝てないんだ!強くなってる筈なのに!」
「まぁ、その分自分も強くなってるし」
「いや、そんな事は無いはずだ!【巫士】様が言ってたぞ、そこまで強くなってたらこれ以上はほとんど変わらない筈だって!」
「まぁ、身体能力はね。でもスキルはまだまだ上がるし<服>なんて初期スキルだからあっという間に熟練度が溜まりそうだよ」
そう言いながら、スナイパーを倒しきり【訓練】終了。
そして、気になっていた事を教えてもらう事になった。
「ここ以外の拠点だがな。計画はあるんだ!でも資材が無いんだ」
「そうなんだよ。今ある木材じゃこの水上要塞を維持するのでいっぱいいっぱい」
「世界樹様の周りの土地に住むことも検討されたけど、あそこは東部との境目だし緩衝地帯はお互いに一歩譲ると東のヒトとの盟約ですわ」
「東のヒトの事も気になるけど、北とか南はどうなってるの?」
「北は寒いし、南は暑いぞ。それ以外は分かってない。西は遠い昔先祖が住んでいた大霊峰。東は世界樹様までが我らの領域だ」
移動手段が小船じゃ、行ける範囲に制限があるって感じなのかね。途中に拠点になるような場所があれば、もっと伸張出来るだろうに。
結局ここの地下同様理由があって増えられない類の場所なのか。
地下は食料、天上は土地に当たる船か・・・なるほどね~。
「あれ?北と南が遠いのは分かるけど、西はどうやって行くのさ?ここは割りと東の国境近くだよね」
「世界樹様は西から徐々に移動なされたの。つまり昔はもっと西に拠点を構えていた事があって、その頃の遺跡が残っていますの」
そういう事か!じゃあ西から物資を運ぶ場合はその旧拠点を伝ってこっちに物資を運んで来ればいいと、そう言うことだ。
問題はその為の船をどうやって大霊峰頂上まで運ぶか・・・?
運ばなくてもいいのか?船大工を大霊峰頂上まで連れてきて、木材は自分が鞄に入れてくれば・・・。
大霊峰を登れる船大工とは?
アンデルセン!何とかならないものか?これは戻ったら相談案件だな。
途中に小島でもあれば、泳いで北の果てや南の果てまで旅してみたいものだよな。泳ぐのって気持ちいいもの。
母なるしょっぱくない海を気ままに泳いでみたいわ~。
そんな事を考えていたらエリーゼ様の手が空いたというので、天上地獄【訓練】に参加。
と言っても、ひたすら泳いで戦うだけだし、何てこと無いわ~。
やっぱり皆ちょっと弛んでたんだね!