509.エリーゼ様と【訓練】
「では早速ですが使っていただきましょう。術をセットしてきて下さい」
「はいはい、そうなりますよね」
試運転に協力してくれるというのだから、ありがたく要請を受けますかね。
使える術は三つだけ、
鼓舞・・・士気上昇
凍・・・氷精
闇・・・陰精
と、まあ使える精霊術に順ずる感じ。気脈術みたいに上級の代わりに出来ることが絞られてくると思っておけばいいのかな。
サバゲー風の船に移動し、実験開始。
取り合えず100人を率いて、
融力術 鼓舞
まずは士気上昇からと思ったら、いきなり皆テンションMAX!!
「やったるぜー!!!」
「ひゃひゃひゃひゃ!」
「おらおらおらおらおら!」
的に向かって攻撃するだけ、まだ暴走している内に入らないのだろうが、
折角の的が壊れて一旦実験中止。
「困りましたね、ちょっと効果が高すぎるのかもしれません」
「ですね。こりゃ自分含め皆【訓練】の必要ありかもしれないですね」
【巫士】様を含む幹部陣は取り合えず納得したようで、引き上げていった。
そして、エリーゼ様が残り、
「【訓練】と聞いたが?」
「ええ、折角古の【巫士】様の術を手に入れたのに、どうやら効果が高すぎて対応出来ないみたいなので」
「それは由々しき事だな。私の居る時代、しかもまだ成長出来る時間があるうちに伝説の秘術を見る機会に恵まれたというのに、我らの力の方が足りないとは・・・」
「暴走はしてないから後一息だとは思うんですよね。ほんのちょっとの壁を乗り越え切れてないみたいな」
「ふむ、少し甘くしすぎたのかもな。安穏と暮らしているうちに我らも鈍っていたのだろう。古の時代にはその秘術で太陽を呼び強敵と戦ったというのだから」
「確かに当然ながら【巫士】様だけじゃなく、周りのヒトも相当に鍛えてなければ受け入れる事すら出来ない筈ですよね」
「少し追い込むか」
「ですね。正直な所自分に負けてるうちはまだまだですよ。自分より強いヒトなんてゴロゴロいますもん」
「そうなのか?」
「そりゃ自分は指揮や移動や装備の手入れや食事の用意なんていう生活にも力を振ってるんですよ?戦闘員が自分より弱くちゃ話にならないですよ」
「ふむ、私含め死のぎりぎりまで追い込む必要がありそうだな」
「面倒事は苦手ですけど、やる意味があって皆でやる事なら協力しますよ」
そしてエリーゼ様と自分で楽しい【訓練】を始める。
まずは徹底的な行軍【訓練】から、
船移動が基本になる天上の海上、小船をひたすら漕がせる。
自分は操船技術もスキルも無いので、小船の横を泳ぎまくり手を抜いてる奴らを<威圧>して周る。
たまに魔物に絡まれたら、ガンガン倒して行く。
泳ぎでしかも戦闘してる自分に追いつかれるような弛んだ戦闘員はエリーゼ様の天上地獄コースに送られる。
そして、個人戦闘【訓練】は金の卵世代と戦わせまくり、ちょっとでも芽がありそうなら自分の担当。
エリーゼ様は制圧担当なので、個人戦には実は向いてないっぽい。
自分は休む間もなく戦っているのに、交代で戦ってて音を上げちゃうような弛んだ子はエリーゼ様の天上地獄コース行き。
そして、集団戦【訓練】はサバゲー船全体を使い、4階建ての船内の部屋を拠点として使ったり、迂回したりと三次元室内戦闘。
勝手が分かるまではエリーゼ様チームが強かったが、慣れれば何とか形になってきた。
<分析>のおかげで戦力比や分布が分かるのでうまく使いこなし、
制圧力があり牽制のうまいエリーゼ様と、後方部隊殲滅や撹乱が得意な自分で分かれているのが丁度力のバランスが取れるという共通認識が出来てからはお互いの弱点を突いたり、埋めあったりしつつ、いい勝負になってきた。
何よりエリーゼ様は20人しか率いれないので、大人数でやる時は同格のヒトを連れてきて、指揮が別れるのに対して、自分は一人で指示を出せるのだから意思統一がやりやすい。
制圧と浸透が主な戦い方だが、やはり誰をどの位置に持って行くのか隊列が組めないってのは早く慣れねばならない。
士気は一応自分の称号補正と装備補正でかなり保てるので何とかなりそう、って所か。
元気なのは自分とエリーゼ様だけという状態になった所でお開き。
フードコートでご飯を作る。
地下で貰った食べられる茸と鱈で一品。
まず鱈は簡単に塩焼きにする。焦げ目が付くかどうか位が自分の好みだ。
そして、茸を食べやすいサイズにカット。
そして、水に茸と適当な野菜をつっ込み炊く。本当は人参とか玉葱があればいいんだが、根菜は天上じゃ育たない。残念!
醤油、酒、みりん、生姜で適当に味をまとめて最後に片栗粉でとろみを出す。
さっき焼いた鱈にぶっかければ、鱈の茸あんかけ出来上がり!
やっぱり魚は蛋白質だけじゃなくてアミノ酸も摂取出来るからね。食わず嫌いしちゃ駄目!
よく動いたら栄養価の高い物を沢山摂取して体作らないと!
皆でご飯を食べて、今日は休む。
ちょっと鍛えこんで行くぞっと!