506.お酒飲んで愚痴る
「そりゃあ、面倒な事に巻き込まれたな。ご愁傷様」
「他人事だと思ってさ・・・。全く・・・散々言い争ってたくせに、気がついたら一丸になってこっち責めてくるし、なにがなんだか」
「俺も女子のそういうのは分からん。まあ女子の喧嘩に口出ししちまった事を反省するか、運が悪かったと思うか。いいから飲めよ」
装備屋のおっさんに酒を注いでもらう。
何でか分からないが喧嘩に巻き込まれた挙句、今度は喧嘩してた3人と戦えって言う訳の分からない状況を愚痴ってる最中だ。
因みに酒のつまみはあぶったイカ。
天上のイカはオレンジ色だが、味は中々に濃厚で好みだ。
「ふぅ・・・3:1か、どうやるかな」
「勝つ気なのか?もっと面倒な事になるかもしれないぞ?」
「ふん!ただでさえ意味の分からない絡まれ方してるのに、容赦する訳無いじゃん」
「いい心がけだな。戦い方に関しては専門外だが装備の事なら多少アドバイスも出来るぞ」
「それでも助かるよ。何しろ銃と戦った経験が少ないから」
「そうか、一つはこの前作った肩当が役に立つぞ。銃ってのは精神力を使うだけあって術耐性が高い防具の方が効果が高い」
「それってさ・・・」
「この前の制服か?そりゃ氷精だからな。精神力を通せばかなり耐性が上がる。つまり術耐性も高い。はっきり言って修理してた防具より術耐性ならよっぽど上だろうな」
「その代わり肩当は使えないか」
「そうだな。それで一個思ったんだが・・・」
「え?何々?」
「右腕に籠手じゃなくて、刺青入れたらいいんじゃ無いか?」
「えっと防御は?」
「ん~お前さん次第なんだが、そもそも剣を持った手首に攻撃をくらう事があるのか?」
「・・・全然無い」
「じゃあ、籠手意味無いじゃないか」
確かに筒籠手みたいに肩まであれば、肩で受ける事もあるけど手首打たれるような事ほとんど無いわ。
っていうか狙われた所で自分の方が小回り利くし、ムシャマッシュとかピンク師匠とか教官達じゃない限り、手首を狙われた所で怖くも無いや。
「あっ・・・じゃあ、この水上要塞にも<粧印術>の使い手が居るんですか?」
「それがどんな術か想像もつかないが、逆に俺達の得意なことと言えば?」
「宝石から力を引き出す?」
「そうだ。宝石を媒介に体の一部に文様を書き込み、身体能力の補強や術補正なんかを行う術士が居る。<晶印術>って言うんだがな」
「えっと、もしかして水晶を媒介に腕に文様を描く?」
「正解だ。かなり大きな氷精補正が付くだろう。特にお前さんが持ち込んだ水晶なら効果は抜群だ!」
「もしかして、この前言ってた肩マントも?」
「ああ、一応氷精で作ったぞ。何かもう氷精重ねるだけで、とんでも無い耐性になるだろ?」
そう言って手渡されたマントは色こそ制服に近い暗いグレーのひだの付いた布なのだが、小さくない?
「これってどうやって装備するんです?」
「あ?普通に着ければいいだろ?」
そう言いながら、装備させてくれたが?
「カタマントって片マント!ペリースかい!凄い気取って見える」
「いいじゃないか、そう悪い感じじゃないぞ?」
「そう?じゃあ、次は剣でブロックしただけじゃブロック範囲が狭いから、乱射魔の十字の銃術みたいなのをどうやって防ぐか」
「術耐性は高いって言ってるだろ?くらいながら距離詰めて斬り倒せよ」
「それもそうだね。じゃあ、後なんだろ?姫毛カールの武器情報とか?」
「あいつか、やっぱり同期でも抜きん出てるだけあってちょっと特殊だぞ」
「聞いてよかった。どんな武器使うの?」
「通称コアなんて言うんだがな。陽の力で盾や剣や爆発物や補助具としても使える代物だ」
「どういう代物なんだかいまいち伝わらない」
「要は変幻自在武器だ。ただ銃みたいに乱射出来ないし、単純攻撃力が劣る分汎用性が高いって感じだ」
「自分の氷精耐性が何にでも耐性がある代わりに一つ一つの効力が低いみたいな」
「まあ、そう言うことなんだが、お前さんはその耐性をひたすら重ねまくってるから厄介なんじゃないか?」
うん、何となく勝ち筋が見えてきた。
「じゃあ、後はその晶印術の使い手紹介してもらってもいい?」
「勿論そのつもりだから、ついてきな」
そういって、ほろ酔いのおっさん二人連れ立って水上要塞をのんびり歩く。
揺れてるのは水上要塞の船かそれとも酔っ払いか。
辿り着いたのはなんか雰囲気のある一室。
怪しい占い師にしか見えないおばさんが一人、事情を話したら。
「はっはっは!いいじゃないか!若い連中に一泡吹かせてやんな!そりゃアタシだって若い子達には期待してるよ。でもね好き放題喧嘩していい訳じゃない。締める所は締める!メリハリは大事だよ。巻き込まれたアンタは遠慮する必要ない!ボコボコにしてやんな!大人の狡猾さという物を十分に思い知らせてやりな!それがあの子達にとってかけがえの無い経験と勉強になるってもんだよ」
そう言って快く晶印を右腕に入れてもらう事になった。
「それで、どんな文様になるんですか?」
「う~ん左が蛇だから、右も蛇にするかい?氷精だから白い蛇。アタシ達が蛇を描く場合は忍耐の象徴。つまり防御力と耐性の強化。水晶を使うんだから当然氷精の強化も込みだよ」
そりゃ願ったりです!と右腕に白い蛇を書き込んでもらった。