500.嵐の岬と現状
「やっとの思いで開通させたと思ったんだがな」
「そうっすねボス・・・新フィールドが他にもあるなんて思ってなかったわ~」
「道理であの隊長が反応しない訳だぜ」
「まあ、深海に新フィールドがあるって説は間違ってなかったからな。別に何の損もしちゃいない。それどころかあの地で一歩リードしてるわけだし悪い状態では無いだろう」
「そうっすね。あの地もまだまだ色々ありそうだし、これからの探索で一歩リードしてるってのはでかいんじゃないすか?」
「まあでも、この先は隊長が着てた環境対応服みたいなやつが本格的に必要になるだろう?その辺を解決してからになるし、焦ってもしょうがない」
「そうだな、まあ、一旦は情報収集って事になるか」
「それで?その隊長本人の情報はあったんすか?もし行き場が無いようだったら深海連れて行ってやろうって話だったじゃないっすか」
「ああ、でも追いかけられてたのは大型アップデート前だし、今頃どこかでのんびりやってるんだろうと思ったんだけどな」
「今回は全く足取りが掴めないな。大霊峰に消えたとか不穏すぎるだろ」
「じゃあ、隊長の事は置いておいて・・・根の国?の件はどうします?割と皆足止めくらってるみたいだし、やるなら今じゃないっすか?」
「それはそうなんだが、誰があのフィールド開通させたのか情報が全く無いのが、運営の罠じゃないかって言う噂があるからな~」
「それだな。プレイヤーが開通させたなら、どこからか噂があってもいい筈だが、NPCからも情報が得られないってのは、なんかな。それこそ隊長位NPCに信用されやすい奴なら話も聞けるのかもしれないんだろうが」
「え~・・・じゃあ、地下ダンジョンっすか?」
「あれだろ?騎士の連中が攻略を進めてる無限ダンジョン。この大陸の地下中に張り巡らされて、どこがゴールかも分からないって言うアレ」
「ダンジョン内で何日も生活を続けるような精神力と生活力。しかもパーティ規模でしか潜れない以上各々が幅広く何でも出来るスキル構成。それこそ隊長みたいな汎用で異常に強い奴でもいないときついだろ」
「いずれにしても隊長が鍵じゃないっすか。でもその隊長は大霊峰に消えたって話なんだから、皆で大霊峰に登ります?」
「俺達は海の者だぜ?山登りが得意な奴はいねぇ」
「全くだ。だが、ガイヤも山に消えたって噂があったな・・・かなり大霊峰が気になる所ではあるが現状八方塞がりだな」
「ええ・・・八方塞がりって・・・じゃあ海底戻って探索続けるっすか?」
「正直いくらゲームの中とは言えずっと暗い中で過ごすのは精神衛生上ちょっと良くなかったからな」
「ああ、そう言えばアンデルセン。クラーヴンの方はどうなってるんだ?」
「何かアレっすよね。ロボット?を直して大昔の任務の記録を探してるとか言う」
「ああ、一応クラーヴンに聞いてみたけど、ロボが困ってたからとか何とか」
「本当に何なんだろうな。お人好しと言うかなんと言うか・・・」
「っていうか、ロボなんて作れたんすね。そんなの全然どこからも話すら聞いたこと無かったすよ」
「何て言うかクラーヴンだからな・・・完全に隊長側だからなあいつは」
「隊長側・・・か・・・なんかおかしい奴をそれで一括りにするのもあれだが、言い得て妙だな」
「ロボとか興味あるっすけどね。でもなんか元商人の女の子が相棒だとか」
「そうなんだよな。一方的に押しかける訳にもいかないしタイミング待ちだな」
「あと、大きい動きって言うとソタローか?」
「ああ~【帝国】の指揮がめっちゃうまいって言う!でもなんか隊長と被ってるっすよね」
「まあ元はと言えば隊長に興味があってこのゲーム始めたらしいからな。でもだいぶ違うぞ?」
「そうなのか?隊長の後釜だと思ってたが」
「俺もっす。邪神の化身相手でも1000人率いて一戦目頑張ってたし」
「ソタローは最初は隊長目指してたんだが、隊長よりよっぽど出来る男だからな。どちらかと言うと【帝国】宰相に気に入られて国内のクエストを受けることが多いんだ」
「どういう事だ?」
「隊長はあっちフラフラ、こっちフラフラで、居場所の定まらない放浪者みたいな所あるし、ソタローはちゃんと真面目に【帝国】を拠点として成り上がったみたいな事っすかね」
「まあ、大方そんな感じだな。隊長は本人にその気は無くとも皇帝派だと思われてる。実際本人同士も面識あるしな。対してソタローは宰相派と言われてる。似てるけどかなりプレイスタイルが異なってるんだ」
「ほーそりゃ興味あるな。それでなんかソタローが【帝国】を割ろうとしてるって言う噂は皇帝と宰相の対立ってことか?」
「まじっすか!そんな政治争いみたいな事このゲームであるんすか?」
「いやー俺も【帝国】で頑張ってきたがそこまで偉くなくてな・・・。ただ初代皇帝の伝承が関係あるらしいんだけどな」
「まあ、アンデルセンはうちとも兼ね合いでやってるんだから仕方ないぜ。っていうかそもそも国の中枢まで駆け上がるプレイヤーって何なんだよって話だろ・・・やっぱり【帝国】はおかしな奴しかいないぜ」