491.一応の身分
「どうだった?素晴らしいだろう!エリーゼ様は」
「なんか凄い縦巻きロールだったね」
「分かるか!お前も分かってきたじゃないか!いいか!エリーゼ様は20人を率いるお方さ!あの若さで何人もいないエルフの才人さ。にも関わらず、若くしてヒトを率いる事を気にかけいつも日の出る前に起きあの縦巻きロールを巻いているんだ!」
「それは、手のかかる事で」
「そうだ!誰もが後5分寝たい朝!誰よりも早く起き皆の士気をあげるため。あの縦巻きロールを巻いているのだ!素晴らしいお方だろう!」
「じゃあ、あんたも早く起きてパーマするなりロール巻くなりすりゃいいじゃん」
「いや、あの・・・日の光を見ないと起きられない体質なので・・・」
「だから、出世しないんじゃん?」
「がーーーん・・・」
スナイパーエルフががっくり肩を落としぶつぶつ言いながら歩くのを後ろからついて行く。
水上要塞という連結された船をいくつか抜けて行くと、
一つの船で船倉に下って行く。
どうやらそこが指令部なのかなと、扉を開けはいれば、見慣れた顔と見慣れない顔。
司会は【巫士】様のなのか、早速話を始めた。
「さて、こちらのお客人の処遇について決めていこうと思います」
「ちょっと待った。まだお客人かどうか決まったわけじゃないのでは?」
初老の男性エルフの掣肘が入る。
「しかし、特に逆らう気もなく、働く気もあるのに追い出すと言うのは残酷では?」
「そうですわね。なんでも【巫士】様の護衛二人とやり合って余裕があったとか。手練を敵に回すのはあまり得策では無いですわね。まあ、私の小隊にかかれば一捻りでしょうけど」
私の小隊ね~自分が率いる1,000人隊だったら、捻るとかそんな事も言ってられないと思うけどな~。
「ふむ、ここに来るまでに聞いた【巫士】様のお話では邪神の化身を倒す為にヒトを率いて戦った勇者だとか」
「ええ、称号を確認したので伝説の邪神の化身を倒した事は事実ですね」
一斉にエルフ達がざわつく、近隣に立っているヒト同士で諸々相談してるっぽい。
「それで?率いれるのは何人位なのかしら?まあ、少ない物資を奪い合うような狭量な者ではたかが知れてると思うけど、まさか5人て事は無いわよね?」
「そりゃ、もっと多いですけど」
がっくりしちゃうスナイパーエルフの同期。
「それは、そうだろう。20人か流石だな。彼の地でもそこまでの者が育っているとはな!」
「いや、もっと多いです」
エリーゼ様が震えて、肩を落としてしまう。
「そ、そうか・・・では100人と言う事か、そりゃ日々争いの絶えない地ならそう言う事も有るのだろう。エルフにも極稀に英雄と呼ばれる者が現れ、危機を救ってきたという伝説があるしな・・・はは・・・」
初老のエルフがそう言ってくるが、
「いやもっと多いんですけど」
めっちゃざわつくエルフ達。
「にわかには信じがたい事ですね。証明する物は有りますか?」
【巫士】様に称号を見せる。
「そ、そうですか・・・どうやら本物のようですね・・・」
「くっ・・・まさかその気になれば1,000人で攻め込めるとそう言うことか」
「1000て・・・1000て・・・」
「まあ、邪神の化身を倒した時は流石に無制限指揮権でしたけど」
「う、うむ、ちょっと聞きたいのだが、その方はその西ではどういった身分か?」
「え?まあ一応【将軍】ですけど」
「その【将軍】とは何かを聞きたいのだが?」
「え~魔物とか対邪神に関しては国関係なく【兵士】を引き出せますね」
「ううむ・・・軍権の最高責任者といったところか。只者ではない」
「それなら力で周りを黙らせれば良かったのでは?」
「ああ、そういうの興味ないし、偉いヒトって苦手なんですよね」
「ふむ、どうしたものか」
「別に下働きとかでいいですよ。のんびり時間潰せればそれでいいので」
「そう言う訳にもいかんだろう。西の者がこうやってこの地に現れたのだ。他の者が現れるのも時間の問題だ」
「そうですね。もし自分達の最高責任者を適当に扱ってたと知られたら、後の事に響きますね」
そんな事は無いでしょ。と思いつつ会議の流れを見ていると。
「私は一つ興味があります」
と急に【巫士】様。
「なんでしょう?」
「1000人率いる事が出来るなら古の【巫士】様の秘術を復活できるのでは?」
「自分が使うのは<戦陣術>って言う陣形を整えながら隊の力を引き出す物なのでどうでしょう?」
「それでは私も1,000人率いる者の実力が気になります」
「いや、率いる事に力を振ってるので実力と言うほどでも・・・」
「やはり、器じゃないでしょうか!1,000人率いる者のヒトを導き未来を見せるような哲学を知りたいですね」
「いや、そんなもの無い。言われるままに頼まれ事してたら率いる事になったから・・・」
うん、大変の事になって来たな~。
「それでは、顧問として話を伺いつつ、我らの未来の為にお力をお貸しいただきましょう」
指令本部の壁の上、髪の毛もっさもさのアフロの女性の肖像画が何故かこっちを見て笑っている気がする。