481.ムシャマッシュ修行
何で帰っちゃうのかな~。
自分の中ではかなり盛り上がってきてたよ。ここからダガーで高速戦闘の予定だったのに。
ふと、脚をつついてくるアルキノコに気がつくと、
アルキノコがくるっと向きを変え、歩いて行ってしまう。
付いて来いってことかな?と、そのまま後ろをつけていく。
するとアタマガイイダケの元に辿り着き、話掛けられた。
「珍しい事だがムシャマッシュに気に入られたようだな、いつでも訪ねてくるがよい。この辺りではかなりの手練だ、いい修練になるだろう」
「それは、どうもありがとうございます。手紙配達の仕事が終わったら、また来ます」
どうやらムシャマッシュと【訓練】出来るってことらしい。
ギリギリ対応出来そうな一枚上手と【訓練】出来るって、それは楽しそうだな。オラわくわくすっぞ!
まだ、陰気で隠れてからの攻撃も試してないし、ダガー戦闘も試したい。
何なら<組討>の使い方を徹底的に鍛えるのも悪くない。
なんか、修行プランを考えてたらうきうきして、あっという間にエルフの街に着いてしまった。
手紙の報告をして、当分ムシャマッシュと修行する旨を伝えた。
すると、
「じゃあ!ご飯どうするの!」
「いや、普通に食べればいいじゃん」
「いやいやいや、酒場でご飯食べるの楽しみにしてる奴達がいるから!」
「まあ、いくつかのレシピは店主さんも作れる筈だし、頑張ってよ。食料はいくらか置いてくるから」
「そんな・・・プリンは?」
「まぁ、当分我慢かね」
「ひぃぃぃぃ」
「じゃ!そう言う事で!」
脱走しようとすると、あっという間にエルフ達に囲まれ、
散々色んな料理を作らされた。
雑多に色々作るのは手間がかかるからしんどいのだが、仕方無しだ。
包丁と鍋を振るいまくる!
食わせまくる事でエルフ達を黙らせ、再び茸の生息地へ!
当然、行き来で数日かかっているが、今更自分にとってそう長く感じる距離でも無い。
年がら年中移動してるのだから、そりゃそうか。
そして、再びのムシャマッシュ。
例のリングで対峙し、今回はダガーを逆手で抜くと、
「チガウ ソウジャナイ」
何が違うのかな?と思ったが、こっちに手のひらを見せて振るムシャマッシュ。
ダガーを仕舞い代わりに剣を抜くと、やっと構えるムシャマッシュ。
「自分は色んな戦闘手段があるのも強みなんですが」
「ヒトツ ヒトツ コワクナイト イミナイ」
中途半端な戦闘手段をいくつも持ってても仕方ないから、軸になる物をもっと鍛えろって事か?
まぁ、いいや。ショートソードで納得するなら徹底的に鍛えようじゃないの。
ムシャマッシュの踏み込みに対して思い切り振れば、あっという間にバックステップで間合いを取ったムシャマッシュに、
「チガウ モット ハヤイハズ!」
ええ?結構思いっきり振ったんだが、何が悪かったんだ?
もっとコンパクトにって事か?
教官にはもっと雑に振れって言われるし、ムシャマッシュにはもっと早い筈って言われるし、どういう事よ?
まあ、いいや。初心に返って振ってみますかね。
構えー!振れー!の時代を思い出して、軽く剣を振る。
あの頃、たまたま自分の目に映ったのは妙に肩を動かして振ってるNPC。
一緒に【訓練】を受けているNPCの癖は色々。振り下ろす瞬間に膝を落としたり、逆に背筋をピンと張り体のどこの力で振ってるのか分からないNPCもいた。
そんな中、真似しやすそうなNPCが一人いたので、ずっと真似をしていた。
はじめは肩を動かしていたが、だんだん背中の肩甲骨が回るのに気が付き、
後はそのまま流れで、自分の振り方の癖になっていた。
何か素振りしている内に何となく意識と感覚がしっくり重なってきた。
「ああ、こうだこうだ・・・」
思い切り振りぬく事に意識がいって、何となく自分の振り方とズレてたみたいだ。
いや、寧ろ同じ振り方でも大きく振れる事を理解できたって感じかね。
力いらないわ。
振りながら剣を回し、時折逆手にしたり順手にしたり、右手持ち左手持ち。
「アシモ チガウ」
足?自分は元々転がって避けるタイプなのに、足とかなんかあったっけ?
足に意識しながら剣を振っていると、
ああ、脚ね・・・股関節の使い方だわ多分。
切り返しの時に確かに股関節使ってたかもな。
走れば簡単に間合いが詰められるし、ブロックも出来るし、避けるのもそんな難しい事ない。
でも、上手のムシャマッシュに結構いいように殴られてたのは無駄な力が入ってたからか。
ああ、本格的に動きが軽くなってきたぞこりゃ。
軽く柔らかく、とにかく力まない。そんな姿勢を保てるようになってきたところで、ムシャマッシュが詰め寄ってきた。
デバフは撒いてこないので、敢えての近接戦闘技巧戦かなと、剣で迎撃する。
相手が両手なのに対し、自分は剣一本なのだから、
一手で相手の手段を封じることを考えていかないとな。
最も簡単で有効なのはブロック。
ムシャマッシュレベルになるとフェイントすら殺気を感じるが、動きを良く見れば流れをコントロールできる。
相打ちじゃなく、焦る事もなく徹底的な迎撃、僅かな隙を突く攻撃。
これが、手数が少ない側の戦い方かと、深く納得していく。