479.カキ氷
白蜘蛛黒蜘蛛達の住む地域から街に帰れば、既に氷削り器が出来てた。
「暑いところで食べた方がおいしいけどどうする?」
「すぐに食べたい!」
でしょうね~。
いつもの酒場でカキ氷の日を始めますか。氷暖簾が無いのが悔やまれる。
氷削り器は何となく伝えただけなのに何か本格的なやつが出来てて、苦笑いしか浮かばない。
【帝国】から持ち込んだ氷をセットし、ハンドルを回せば、
何か理想的なサラッサラの削れた氷が落ちてきて、備え付けた皿の上に溜まっていく。
さて、練乳もシロップも無いので、工夫しなきゃな~。
まずはきな粉と蜂蜜か。黒蜜もメープルシロップも無いから仕方ない。
取り合えず、アクセ屋の子に出すと、
「ふわ~甘いけどすっきり!甘すっきり!くあーーーー!頭痛い!」
そりゃそんな一気にかっ込めばね~。
二つ目はどうっすっか~・・・氷を削りながら考える。
武器屋のおじさんだし、ちょっと大人味がいいよな。
【王国】のブランデーをかけて、別皿で砂糖を出す。
「味調節しながら食べてみてよ」
「ほう・・・ほうほぅ・・・鼻の奥がおかしい・・・」
だから、かっ込むからだっての。
いつの間にか席についてる治安維持のお姉さん。
多分甘い物いける筈だから・・・ワインに砂糖を混ぜつつ軽く煮詰め、氷にぶっかける。
どんどん溶けて行くので、さっさと差し出すと、
「これはこれは!うま!うま!ぐあ・・・頭が・・・」
「さっきから、皆かっ込むからそうなるんだよ。溶ける前に食べたいのは分かるけど、そりゃそうなるって」
「いや先に言えよ!」
「そうだよ!おいしいけど食べるの迷う所だったじゃん」
治安維持のお姉さんはまだ苦しんでいる。
「まあ、こんな感じで氷を削って、好きに乗せたいもの乗せて食べられる。そんな食べ物だよ」
「じゃあ・・・プリン乗せてもいいの?」
「別にいいんじゃない?冷たいプリン食べたければね。後は紅茶とかもいいのか」
果物があれば、ジャムとかもいいんだけどな。
ワインがあるんだから葡萄はあるのか、ジャム欲しくなってきたな。
「これは甘い物じゃなくてもいいのか?」
「ああ、自分のイメージは甘い物だけど、別にいいんじゃない?氷って味ないし、好きなものかけたら?」
「あんたが、酒を冷やすのに入れてたのは知ってたけど、こんな使い方があるなんてね~」
「地域によっては、売る程どころか持って行って欲しいほどあるものだからね」
「ところで、何でこんな物作ろうと思ったんだい?」
「結束派と陰倒しに行ったら、尽く断られてね。南の赤い川の主を倒しに行こうと思ったら、今度はへばっちゃってさ」
「まあ、南は暑いからな。そりゃ辛いんじゃないか?」
「それで、慰安の為にカキ氷でも作ろうかって話になっただけ」
「じゃあ、あんたはそれ削るだけにして、何乗せるかは本人達に任せたらどうだい?」
「そんな事したら皆カキ氷に羊肉乗せちゃうじゃん。流石にそれはな~・・・」
あっ!ピンと来た。
サツマイモを取り出し、調理しやすいように兎に角小さめに切る。
水、砂糖、小さくしたサツマイモを鍋にかけガンガン水を飛ばして行く。
どろどろになった所で、鍋に牛乳を入れてよく混ぜ、
皿に移して氷の塊の上で冷やす。
十分に冷えた所で、削った氷にかけて提供すれば、大人気。
サツマイモのカキ氷の完成である。
うん、また作るメニュー増やしてしまった面倒臭い。
「それで?その赤い川の主を倒すのは捗りそうなのかい?」
「まあ、白蜘蛛に服を作ってもらうように頼んだからね。うまい事耐熱耐暑がのってくれれば、戦う事は出来ると思うんだけどね」
何とか南を抜けて外に出られれば皆の希望が叶うわけだし、ちょっと頑張らねばな~。
まあ、あんまり期待させて抜けられませんでした!はまずいから、自分の胸の内に秘めて置くけど。
準備整うまでは次の闘技大会か、次はムシャマッシュだよな。
デバフ胞子は 獄纏霧 で相殺できると期待して、あの近距離戦闘能力が問題だ。
動き的にはガイヤに似てるけど、シンプルに強い。
剣一本で対応できる相手じゃ無いし、どうするかな~。
何となく頭の中で戦闘シミュレーションしてたら、お客さんが増えてて、じっと見られてる。
ふむ、サツマイモカキ氷でも量産しますか!
どんどこカキ氷を出しながら、頭の中で何度もムシャマッシュと戦うイメージを繰り返す。
鋭く重い突き、いつの間にか絡まれてる足。
でも、それらを逆手に取れば掴めなくも無い?
いや、ムシャマッシュも掴んでこない保証は無い。
こいつは久々にぞくぞくする戦闘になりそうだ。