478.郵便屋さん再開
結束派とあちこちうろついたら、お手紙が溜まってしまった。
取り合えず、白蜘蛛黒蜘蛛を同時に手紙お届けしますか。
ちなみに氷削り器は依頼済み、現在鋭意製作中だと思われる。武器屋のおじさんも大概おいしいもの好きだからね。
一人で何にも無い暗い平原を走り抜け、途中いろんな陰に絡まれつつも、別に戦闘になるわけでもない。
なんか、すっかり慣れた日常。
現実で何ヶ月経ったか忘れたが、ログインする度に暗い環境なのに心は爽やかすっきり爽快。
あっという間に黒蜘蛛達が羊を育ててるエリアに辿り着く。
しかし、黒蜘蛛族長が見当たらない。
「すみません、族長は?」
「走りに行ってる」
「ああ、手紙とか預けてもいいですか?」
黒蜘蛛がコクリとうなずくので、手紙を渡す。
本当は闘技大会出場の件も交渉したかったが仕方ない。無理するものでもないしな。
何かじっと見てくるので、ご飯かな~と思い適当に野菜を置いていけば、無口な黒蜘蛛達が集まってきて、氷室に持って行く。
うん、次は白蜘蛛のところ行くか。
ちょろちょろっと走って行くと白蜘蛛族長は居た。
「久しぶり!お手紙だよ」
「あ~そろそろだもんね~。最近はエルフをいっぱい引き連れてるって聞いたよ」
「まあね~。それで頼みがあるんだけど、エルフに糸で服を作って欲しいんだよね」
「え~何人くらい?」
「100人位かな。大変だと思うし、大急ぎでとは言わないけどね」
「ああ、そりゃ大仕事だ~。まあ時間あるときにぼちぼちやるよ」
「やっぱり族長だし、忙しいよね~そりゃ」
「って言うよりさ~・・・」
「あ~ご飯だ~」
「ご飯来たー!!!」
「最近エルフばっかりおいしい物食べてずるいなって思ってた」
「やったー!皆に言ってくるー!」
「いやいや、ご飯て」
「こらー!あんた達失礼だろ!おいしいご飯作ってくれるのに!」
「きゃー!おいしいご飯来たー」
「皆!おいしいご飯だよー」
うん、もう自分はおいしいご飯扱いなんだな。まあいいんだけども。
「すっかり慕われちゃったね~」
「あれは、慕われた範疇でいいのかな?まあ何か作るけども、何がいいのかね~」
「何でもいいと思うよ。皆楽しみにしてるし」
そう言われちゃうと気合入れて作らねばな。
まあ、でも一番手に入れやすいのは赤鳥蜥蜴の肉なので、鳥料理風にしますかね。
鍋とかいいよな~。
水菜を山ほど切って~、スープの元入れて~、ぶつ切りの肉と一緒に煮るだけ~。
鳥と水菜鍋~。
あ、と、は~・・・鶏肉に蜂蜜絡めて~、適当に香辛料まぶして焼くだけ~。
鶏肉の何か焼いたやつ風。
適当すぎるな~・・・皆がっついてるし別にいいか。
暇だし、串焼きにでもするかね。
傍らにお酒置いて、串焼きを焼いてると、白蜘蛛達に完全に狙われてるので、適当に配っていく。
配りつつも自分はお酒で串焼きを頬張る。
なんかもう、最高。
だらだらお酒呑みながら串焼き食べれて、自分が焼いた串焼き食べる白蜘蛛達が楽しんでる。
この状況が最高じゃなくて、何が楽しんだろうか?
そんな風に思う自分は何故居酒屋で働いてないのだろうか?
やっぱ肉と酒だな~!健康的だ!
いっぱい食べていっぱい飲んでいっぱい休む!何て人間的な生活だろう。
そんな生活をしつつ自分の身だけ心配してればそれでいい、そんな人生を送りたかったのにな。
なんで、社長や同僚の事に心砕いて生活してるんだろう。
普通でいいのに、普通でいいのに。
自分はそんなに多くを望んでるであろうか?
ささやかで静かな生活を望んでる筈なのにな。
白蜘蛛たちとのんびりした宴を開催。
いつの間にやら、黒蜘蛛たちも参加して大宴会。
まあ、いいやお酒だして、肉焼くだけの簡単宴会をのんびり楽しむ。
こんな日常に文句があろう物か?いや無い!
折角だし、野菜も焼いていくかね~鉄板出して、玉ねぎ、人参、ピーマン、とうもろこし!
完全にBBQになってしまったし、〆は焼きそばと行きたいところだが、焼きそば用の麺が無い。
まあ、いいや焼きうどんでもクレームは付かないだろう。
肉と野菜のエキスをいっぱい吸わせて、ソースが無いから醤油味。
皆十分にお腹に溜まったのか、まったりとした空気が流れる。
後片付けをしながら白蜘蛛族長に一個許可を貰う。
「今度の闘技大会自分も出てみようと思うんだけど、許可って貰える?」
「え?いいよ!出たらいいじゃん」
「じゃあ、どうする?どこで戦う?」
「え?何で戦うの?」
「自分は同種族とかいないから、予選が無いんで許可貰いついでに戦ってるんだけど」
「ああ~別にいいよそんなの。それよりも何望むの?」
「自分も祈りの祭壇の根っこを除去する事を望もうかと思って」
「へ~、なんでまた?」
「エルフは立場上、世界樹の根を除去するなんて言えないけど、本当は祈りの祭壇位ならいいんじゃないかって思ってるヒトが多いみたいだからさ。まあ、皆が嫌がる事じゃなければ、手伝ってもいいかなと」
「そっか~、あれだね~。何が欲しいとか、そういうの無いの?」
「え?あるよ。石は好きだし、酒も好きだし、平穏無事に生活したいし。なんならその場の感情に身を任せすぎて、今の自分があるようなものだし」
「ふ~ん」