474.闘技大会
じりじりとユニオン級の陰と契約を進めている。
大抵は戦うか、相性のいいエルフが居れば契約できる流れだが、全てとは行かない。その場合何が条件なのかは謎だ。
この調子で、戦力が揃っていけば、レギオン級を倒せる時がくるのもそう遠くないだろう。
「ところで、お前は今度の闘技大会出ないのか?」
「この前闘技大会したばかりだと思うけど?」
「闘技大会は年二回だ。もうすぐ開催されるがどうするんだ?」
「いや、自分はどの種族に属さないし、出てもいいものなのかね?」
「そりゃ、これだけ長く居るんだし、いいんじゃないか?なんか望みとかないのか?」
「自分は無いかな~。まあ、何だかんだ外に出る方法は探そうと思ってるけど、一個づつやっていくしかないしな~」
「そうか。実際この街じゃ指折りの実力者なんだし、ムシャマッシュともやり合えそうなのにもったいないな」
「逆に、何望めばいいのさ?西から逃げてきて、何となく静かにのんびり暮らせてて、思いの外いい物も手に入ったし」
「ここだけの話、あくまで俺個人の考えだが、他種族が祈りの祭壇の根っこだけ何とか除去したいって言うだろ?あれは聞いてやってもいいと思うんだ」
「まあ、でもエルフは事情が事情だけに自分達から、いいよ!とは言えないか。側根だし、一本くらいなら大丈夫な気がするのは、確かだね」
「そうなんだよな。だから、もしお前にその気があるなら出てみてもいいんじゃ無いか?」
「でも、自分はどの種族でも無いから、予選も無しで出ちゃうの申し訳ないな」
「まあ、そこは各種族の代表と話すなり戦うなりしないとな」
「あ~どうするかな~。黒蜘蛛は前に【訓練】した手応えから、いけると思うけどな」
「それならムシャマッシュ以外は実力横並びだし、時間のあるときにまずエルフ代表から話をつけてみたらどうだ?」
「ん~・・・結局ムシャマッシュのあの胞子で相手に茸くっ付けて精神力削る技を破る方法が無いからな」
「あ~あれか~。同じように空中に撒くような術があれば、中和できるかもしれないがな」
空中に撒く術? 纏霧 とかでいいのかな?あれは霧で視界をつぶすだけだけど<青蓮地獄>と併用すれば、かなり冷たくなって耐寒でも無いとかなりしんどい筈だけど。
地面系の術を 霜界 で中和できるような物なのかな?
だとしたら、戦えない事もないのか、どうするか・・・他の種族の悲願を勝手に叶えちゃうのもなんかでしゃばってるみたいだし、ちょっと気後れするんだよね。
でも折角だしちょっと考えてみるか。
「ところで、闘技大会ってやる事は毎回同じなの?」
「いや、年の終わりにやる方は、闘技大会後全員で移動して、丘に登って祈りの祭壇に祈りを捧げるぞ」
へ~年末行事みたいな感じなのかね。
でもそれだけ大事な祭壇だったら、確かに根っこ除去したいよな。
「話は聞いたよ!」
いつもは結束派と距離を取ってる治安維持のお姉さんがいつの間にかすぐ傍に立ってた。
「あっやべ!」
さっきまで話してた結束派の一人はそそくさと何処かに行く。
「ふん、別に逃げなくても他の種族の気持ちはアタシだって分かるってのに」
「そうなの?もうエルフ的には根っこ除去絶対駄目なのかと思ってたよ」
「そりゃね、簡単にいいよとは言えないさ。だからあんたが闘技大会に出たいって言うなら、勝負してやらないことも無いよ」
「条件は?」
「なんかプリンに変わる甘いお菓子」
「あ~なんだろう・・・簡単スイートポテトとか?」
「スイーーート!甘そうじゃないか!どんなお菓子だい?」
「いやこの辺りにある芋って火を通すと甘いじゃん。あれを磨り潰して砂糖と牛乳加えて滑らかにして、もう一回成型するの」
「へ~甘い芋に砂糖を加えるって、それはおいしそうだね~。じゃあアタシが勝ったらそれで」
「んじゃ、いっちょ闘技と行きますか」
二人連れ立って金網のリングに向かい、
そして、対峙する。
相手が虫足の陰を纏う間に自分は、
気脈術 冷気
耐性を上げて待ち構える。
背両手にナイフを構えたお姉さんが間合いを詰めてきたところで、自分は大振りの薙ぎ払い。
珍しく自分の方が武器重量が重い戦闘。ちょっと乱暴に振り払い相手の体勢を崩す。
打ち合うのを嫌い、一歩下がったお姉さんは薙ぎ払いで剣が流れた所を狙って、背中から伸びた陰の六足を使い強引に突っ込んできた。
陰足が有ると、こういう普通じゃ無理な動きがあるからな~・・・。
左半身になりながらお姉さんの左手を狙い、自分の左腕を引っ掛けて行く、
そのまま巻き取り腕が極まった所を右手のナイフで突いてきたので、
わざと膝を抜き、姿勢を崩して更にお姉さんの左手に負荷をかける。
そこで、左手からナイフが抜けたので、肘で絡め捕ったそれを放り捨て、剣をしまう。
右手で逆手にダガーを抜き構える。
順手に持ち替えながら、真っ直ぐ突く。
ナイフを持った右手の肘で、自分の前腕を打ち落としてきたが、織込済みの動き。
その勢いを利用して軌道変更、下から首を突き上げれば、仰け反ってかわすお姉さん。
そのまま、自分のダガーを持った腕に乗せたままの腕を絡めとり、更に左手も使って捻り上げる。
完全に関節が極まった所でナイフを奪い取り、それも遠くに放り投げた。
「は~流石だね~ナイフもそんなに使えるのかい。いいよアタシはあんたが闘技会に出るの認めるよ」