473.やらかしそうな空気
「よう!進捗状況はどうだ?」
「悪いが、俺の方はまだだな。走りこんではいるが、中々ナメクジの陰というのには会えてない」
「まあ、そう簡単にはいかないよ!丸耳は手紙運んでる時凄い早かったじゃん」
「そうだな。でもあんたの足は計画の肝だから頑張ってくれよ」
「ああ、勿論だ。目的がなくとも足は早くなりたい。それで服のほうは出来たのか?」
「服は出来たよ!はい!三人分!」
「え?俺の分もか?毛皮あるぞ?」
「いや、それでも絶望の壁まで行くと寒いだろう?出来るだけ完璧なコンディションで行くためにも着た方がいい」
「そうだよ!毛皮の上からでも着れるか試してよ!」
そして、黒蜘蛛、白蜘蛛、イタチが、雷精羊の毛で出来たモコモコの服を着る。
「うん、暖かいな。これは具合が良さそうだ」
「何でこの服は耳がついてるんだ?イタチは耳も隠すためだと分かるが、俺のも耳が付いてるんだが?」
「え?可愛いじゃん!駄目?」
「耳が付いてて何が悪いんだ?」
「いや別にいいんだが、それで他の準備はどうなんだ?」
「そうだね!なんか私の<操糸術>が必要なんでしょ?一本でよければ結構な距離でも操れるよ。試してみた!」
「そっか、それは朗報だな。俺も使った事ない物なんだが、何しろ一個しかないから実験できなくてな~。ちょっと危険な物だって聞いたし、離れられるなら離れられるほどいいんだ」
「危険な事は出来るだけしたくなかったがな。それはそんなに危険なものなのか?」
「ええ、怪我はしたくないよ~」
「何でも、家の一軒や二軒は吹き飛ぶらしい。でも巨大な魔物じゃ、それ位の威力が必要だろ?」
「そりゃそうだろうがな。今も例の魔物が絶望の壁の所で凍りついたままで居る事は丸耳が確認してきてくれたんだ。後はそいつを動かすだけだ」
「そうだよね!元々、赤い川に住んでて絶望の壁すら融かせるんじゃ無いかと思って連れてきたくらいなんだから、寒くない所に連れて行けば、本領発揮するよね!」
「そういや、丸耳は最近何やってるんだ?」
「なんか、長耳達を大人数集めてるのは見かけたが?」
「何やってるんだろう?最近ご飯作りに来てくれないから、大根と辛いやつ混ぜて煮て食べてるんだけど」
「多分あいつも何か考えてくれてるんじゃねーか?出たくないとは言ってたけど、色々見てきては教えてくれるじゃないか」
「確かにな、なんか頼まれては断らない奴だし、長耳の困り事でも聞いてやってるのかもな」
「え~私はおいしい物食べたいけどな~。なんか新しい料理とか無いかな~」
「まあ、そりゃ俺も色々食いたいけどよ。何にしてもあいつばかり頼りにしても悪いし、何とか俺達でやってみようぜ」
「それはそうだな。目標は次の祈りの日。闘技会後、移動中に抜けて作戦実行って感じだな」
「そうだね。どうせ勝つのはムシャマッシュだし、さくっと終わらせて、ここから出ちゃおう」
「俺はどうせ代表じゃ無いし、こっそり仕込みしてくるか。何にしても祈りの日なら皆長耳の街の奥の丘の上だ。安全だしもし一緒に外に行きたい奴がいれば、すぐに付いてこれるもんな」
「まあ、そう、うまく行くかは分からんがな。木が燃えたら火が消えるまで待たなきゃならんだろう?石だって一度燃えたらずっと燃えるんだ」
「そうだね・・・まあ、何とかなるんじゃない?ちょっとだけ世界樹と壁に隙間が出来てくれればいいんだし」
「何代も世話になってる世界樹の根が燃えちまうのは申し訳ないが、詰まってる所だけ何とかなってくれればいいんだしな」
「しかし、木が燃えるってのはどれ位燃えるんだろうな?試そうにもあまり派手な事やったら、誰かに嗅ぎつけられそうだしな」
「それは分かんないけど、壁に詰まってる根が何とかなってくれればいいんだし、それ以外の根もいっぱいそこらじゅう上から伸びてるんだし大丈夫じゃない?」
「そうだ、そうだ。壁に詰まってる一本だけなら大丈夫だって」
「ふむ、そう言えば俺が足の速い陰と契約出来た場合南から出られるかもしれないって話はどうする?」
「それって、私と丸耳だけでしょ?あんたは赤い川の主を連れて行かなきゃなんないし、イタチは毛皮で南を抜けられない」
「でも、一人出られれば、その後の可能性も広がるだろ?」
「だが、かも知れないだけの話なんだよな。もしくは北で凍ってる奴をどかして、その裏にあるかもしれない北に抜ける抜け道を探すか?」
「それだって、かも知れないに変わらないじゃん。それなら兎に角、北の赤い川の主を寒くない場所まで連れて来た方が確実だよ。うまく行けば皆で出られるし」
「確かに自分で思い付いておいて、ちょっとひよってる所があったかもな。やっぱり世界樹を燃やすってのはな」
「そりゃ誰でも同じだ。でも今のところそれしか方法は無い。俺は全力を尽くして足の速い陰と契約しよう」
「そうだね~さてご飯にするか~最近辛いの食べてたから、甘いの食べたいかな~」
「そう言えば、石を引き取りに来た長耳が、プリンがどうとか言ってたな。甘いらしいぞ?」
「ほ~聞いたこと無いな。つまりあいつがまた作ったのか」
「ぐぬぬぬ!長耳ズルイ!プリンってなんかおいしそうじゃん!プリンプリンプリンプリン!」