471.サイと契約
サイが誰をターゲットするかによって、展開が変わる。
左手で銃の装填をしつつ、相手の動きに警戒心を高めていると、
『何で急に攻撃してきた?』
ん?ああ、陰なんだからしゃべれるよな。
「いや、なんていうかテンション上がって・・・」
『それは酷い話だ』
「ごもっともです。ご迷惑お掛けしてすみません」
『だが、お前達がより強力な陰と契約したいのは知っている。折角我の言葉の分かる者が現れたのだ。我が一撃を止められれば、契約してやろう』
「それは、助かります!はい!皆集合!」
「なんだ?急にしゃべりだして、何があった?」
「いや、この陰の一撃を止められたら、契約してくれるって!」
「おい!ホントかよ!」
「いやいや、まてまて、一人で止められるわけないだろ?」
それもそうだ。先に聞いておかなきゃな。
「あの、全員でかかっていいんですか?」
『そうだな、この場に居る人数なら構わんぞ』
「いいってよ!フォーメーション考えよう!急ぐよ!向こうの気が変わらないうちに!」
『我と契約できるのは雷精を使える者のみだ』
はい!やる気なくなっちゃった。まあ、自分には中途半端に契約してる相棒がいるし別にいいや。みんながんばれ~。
っていうか皆も相棒居るんだから、サイと契約するには今の相方との契約を解除するのか?
「どうしたんだ?急にやる気なくして」
「雷精使いのみだってさ、まあ自分には相棒がいるからいいんだけどさ」
「そうか、俺達は皆雷精使えるな。それに大抵は陰精の契約枠も空いてるだろ」
「契約枠なんてあるの?」
「<陰精術>を使い込んでいくうちに契約枠が増えるんだ。でも契約する度に装備部位が埋まるから、契約数を気軽に増やすわけにもいかん」
んじゃあ、皆にがんばってもらいましょうか。
それぞれに、陰を使役する物、纏って武器を構えるものそれぞれだ。
準備が出来たのを見計らうとサイが一気に加速し、
蜘蛛陰が射出した糸を簡単に引き裂いて、蜘蛛と使役者を踏みにじる。
当然そこでは終わらず、次々と踏み潰し撥ね飛ばす。
両手槌使いが溜めに溜めた一撃すら弾き返し、両手槌使いは飛んでった。
全然勢いが衰えないサイに走って向かって行くのは、アクセ屋の子。
「いや、危ないよ!」
言ったはいいが、間に合わない。
ジャンプしてサイの顔と激突する瞬間。
「私と契約してーーーーーー!!!」
あっ・・・キーンときた。結構離れてるのに耳にキーンときた。
サイの顔に引っかかり、飛んでくアクセ屋の子とその場に横倒しになるサイの陰。
「止まったね~。アクセ屋の子が契約かなこれは」
「私でいいの~?」
『いいだろう。契約しよう』
「やったー!契約っ契約っ!」
どうやら、サイの陰とアクセ屋の子は意思疎通取れるようになった様なので、ちょっとお任せだ。
「皆、アレだよ。陰は意思疎通取れるんだから、いきなり襲い掛かっちゃ駄目ってことだよ」
「だが相性が良くない場合は急に戦闘になる相手だからな、まさかこんなにすんなり契約できるとは思わなかったぞ」
「自分はどんな陰でもとは言えないけど結構話せるから、まず話してみて、それから戦闘はじめようか」
「まあ、それでこのサイズの陰と契約出来るなら、巨大な陰と戦う戦力も増やしやすいし、助かるがな」
そんなこんな話してるうちに、アクセ屋の子がサイの影と契約し終わった。
左手にメガホン、右手から肩まで全部陰が覆ってる。自分の筒籠手の様な形状に納まったようだが、
流石にレギオン級の陰だと装備サイズも大きいのだろうか。
「それで、その陰の性能はどんな感じ?」
「うんとね。このままでも右腕の防御力が上がって。右手で持った武器の先から雷精の術を放射できる様になったよ。さっきの形で出して突進させる事も出来るけど、私の精神力だと一回突進させたら、すぐ戻さないと駄目かも」
あれまぁ、随分と高性能だ事。
装備状態でも防御力あるとかそれはいいな。エルフはどうしても防御力に難有りだし、非常に助かる。
自分もいずれ契約枠が増えたら、陰装備も悪く無いかもしれない。
しかし、陰ってのは妙に高性能だよな~。術だから使役したり、纏ったりするだけでも精神力持って行かれるからかな?
逆に佐助の猿とかはパーティ枠一個使うけど、成長するし精神力も食わないからトントンなのかな?
でも、陰が成長しないとすると、とにかくより強い陰と契約する他無いのか?次々乗り換えるのも、なんか違うよな。
「陰ってさ、成長したりしないの?」
「しないよ?」
「聞いた事無いな」
「陰はある時現れて消えていく物だし、現れてからは何も変わらないぞ?」
そういうものかな?何かタネがあろうもん。装備しなきゃならないとしたら、装備部位を一個食う分のロスがあるわけだし、なんかオプションがある気がする。
今度陰精の【巫士】さんに聞いてみよう。よく考えたら呪だっけ?酒呑童子が言ってた気がするし。
「さて、今日はここまでにしよう。何食べたい?」
「プリン!」
相当気に入ったらしいし、酒場で食事の後のデザートはプリンにしますかね。