462.聞き込み調査
さて、派閥分けはちょっと良く分からなかったが、過激な事をするとしたら、だ・れ・か?
自分が知る限り明らかに外に出たいエルフ。
陰精の【巫士】さんにまずは事情を聞いちゃおうかな。
陰精の祭殿に向かい、扉を開ければ静かに佇む陰精の【巫士】さん。なんとなく物思わしい雰囲気だが、ご飯の事でも考えているのだろうか?
「ようこそ、本日はどんな要件ですか?」
「ちょっと話を聞きたくて来たんですけど、大丈夫ですか?」
「そうですか・・・」
「あっ何か食べる物出しますか?」
「そう言う事ではないのですが、何かあるならお願いします。それとは別に以前話していた西に出た者の話です」
「ああ、取り合えず、おにぎり出しますね。それで?見当ついたんですか?」
「ええ、弱い陰としか契約できず、ある日姿を消した者の記録が残っていました」
「まあ、それだと事故とかって事もありえますもんね」
「そうですね。なので確実とは言えませんが、ある日唐突に姿を消すと言うのは、例が少ないので気になりましたね」
「なるほど。弱い陰か~、自分の陰も弱いらしいけど、助かるしな。移動に便利で掴まえたりとか出来るし、自分向きなんだよね」
「・・・(もぐもぐ)」
「うん、ゆっくり食べてもらっていいですよ。ところでこの話って誰かと共有してたりするんですかね?」
「いえ、言ってもしょうがない事ですから、あなただけですよ。外に出れた者がいるという話も、よりにもよって、弱い陰としか契約できなかったという事も」
ふむ、本当の事言ってるかどうかは分からないけど、真実味はあるよね。ここのヒトって、とかく弱い陰との契約を嫌がってる風はあるし、外に出れたかどうかなんて分かんないもんな~。
「じゃあ、他に誰か外に出たがってる人とか知りませんかね?」
「どうでしょうか?以前もお話した通り皆が外に興味が無い訳ではありませんので、出方が分かれば、出たがる者も増えるでしょうね」
嘘を言ってるのか本当の事を言ってるのか判然としないが、取り合えず信じるのなら仲間がいない訳だから派閥とは関係ない。
外への出方は気になるところだが、今はやらかしそうな派閥探しだ。
物足りなさそうな【巫士】さんだが、夜にまた酒場でご飯を作ると言ったら、納得したので一旦お別れ。
祭殿から出て、次はどうするか。
「弱い陰と契約して外出たヒトって知ってる?」
『知ってるよ。僕の仲間と契約してあの壁を登ったヒトが前にいたよ』
「それで、一応外に出る方法は知ってるって訳だ。すぐに出るのは駄目ってのは、契約が出来て無いって事かね」
『そんなところ、どうしてもすぐ出たいなら、契約出来そうな仲間の所に連れて行ってもいいけど、どうする?』
「いや、自分だけ出てもしょうがないしな。寧ろ自分は西には行きたくないし。他のヒトに教えられないのは、相性が合いそうなヒトがいないからか」
『そうだね。弱い陰とは契約したくないって思ってるから、最初から相性なんて合うわけ無いんだけど、もし出られるんなら契約してもいいと思った所で、本当に出られるか分からないうちから、相性が合うと思う?』
「まあ、そう言うもんじゃ仕方ないか」
『何より、僕達と相性が合うには登ったりする力が相当高くないと無理だよ。好き好んで、そこらじゅう登ったりするヒトいると思う?』
「ここらは、平地でろくすっぽ登れる場所なんて無いもんな」
『そうだね。だから今いるヒト達じゃ無理だね。君が実践して見せて、信じたヒトがちゃんと相当努力して、やっとって話』
「そっか、そりゃ最終手段だわな。でも昔のそのヒトは相当努力したんだね」
『まあね、外には明るくて温かい物があるって言って、絶対登れない壁に向かって毎日挑戦して、何とか登れる根っこをちょっとづつ登って練習し続けて、ある日仲間と契約したんだ』
「そこまでか、弱い陰としか契約できなかったって言うのは、本当にその事しか考えて無かったのかもな」
『僕も相性の合うヒトって滅多にいないから、嬉しかったな~。仲間達も嬉しかったと思う』
「その割りに、弱いとかくっつくしか能力が無いとか知られてるのは、何でだろう?」
『僕達は戦わないから、すぐ逃げるし、別に怖くないと思われてるのが一つ。後仲間の中には僕と同じように誰かと契約したくて、偶にいる陰と話せるヒトに話掛けに行く個もいるから』
「ああ、全部とは言わないけど、自分も結構陰と話せるからな~」
『そうだね。君は変わってる方だよ。陰が向こうから話しかけてくるのも、やっぱり話してみたいんじゃないかな』
「へ~、ところで何であんな所にいたの?他の個みたいに話せるヒトに交渉した方が効率いいじゃん?それとも話しつくして、偶々あそこにいたとか」
『昔あそこで仲間が壁を登って行くのを見守った後、ずっと見たかったんだよね。明るくて温かいもの。だからいつか向こうから来るヒトいないかな?ってずっと待ってたの』
「そっか・・・」