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46.放棄する騎士

気がついたら、たくさんの方から感想をいただけました。

自分に足りないところを教えていただきさらにそこまで読み込んでいただけることに恐縮します。

本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

 「お目当ての『兵士』には会うことができましたけど、やはり次のイベントがPVPとお考えの上であのプレイヤーに注目されたのでしたら、何処でその存在を知ったのですか?お知り合いと言うわけでは無さそうでしたし」


 「うむ、まあその辺りは現実と関わりのある部分だしのハッキリとは言えぬのじゃ。すまんの」


 「いえ、そういうことでしたら深く追求するのは、マナー違反ですものお気になさらないで下さい。ただ、実力の方はいかがでしたか?正直なところ近接戦闘職ではない私には判りかねますわ」


 「言うことは無いの、間違いなく強者じゃわい、そうそう相手になるものはおらんの」

 

 ワシの孫だしの思っていたのとは違う方向に進んでいるようじゃが、元気そうじゃし、何より物凄く強くなっていると言うことは、それだけこのゲームを気に入ってくれたのじゃろう。勧めたかいがあったというものじゃ。

 

 孫とすれ違ったきり帰路についたわけじゃが、何事も目的を果たした後、すっかり油断している時が一番危ない。行きはよいよい、帰りは怖いってやつじゃな。


 普通なら街道沿いは安全で、出てきても比較的弱い普通の獣か初心者でも狩れる様な魔物くらいじゃが、明らかにまずい雰囲気の熊じゃ。


 通常だと弱い魔物は回りに溶け込むような色になるものじゃが、こいつは青黒い。つまり保護色になる必要が無いくらい強いってことじゃ。


 いつもの装備なら何とでもなろうが、雪国用にありあわせの温かいだけの格好をしとる今のタイミングは相当に悪い状況じゃ。さて・・・・どうするかの?


 一瞬の逡巡の隙に熊が近寄ってきたと思ったら、瞬間 頭に強い打撃を受けたかのように体を揺らし、倒れこみそうになりながらもギリギリ四足で持ちこたえ、明後日の方をにらみつける熊。


 体勢を立て直しながら振り向いた方向に駆け出しそうになった所を出足を挫くかのように眉間に一発、急所判定があったのか倒れて動けなくなる熊。


 やっと軌道が読めたところで、その方向を振り向いてみても何処にも人影が無い。と言うよりは見えない程遠くから狙撃しているのじゃろう。そんな事が出来るプレイヤーはゲーム中探しても一人しかおるまい。

 

 その後も立ち上がって駆け出そうとしては、きっちり眉間を打ち抜かれる熊。ただの繰り返しの状況が続いた後、動かなくなる。不憫じゃ、何もさせてもらえないとはこのことじゃろう。


 そのまま様子を見ていると、全身白い可愛らしい服のお嬢さんが近寄ってくる。


 「あら?おじいちゃま、だったの?邪魔しちゃったかしら?」


 「いや、慣れぬ雪国に来たものでの。いつもとは違う装備だったのじゃ助かったわい」


 「そう、それならいいの」


 そう言いながら、熊の解体を始めるビエーラの嬢ちゃん。所属国こそ違うもののβからの知り合いでなんだかんだ顔見知りじゃ。ゲームをはじめて独自の感性が目覚めたタイプじゃろう。話を聞くところ乗馬が趣味のお嬢様のようじゃからの。それが流石に現実で狙撃手なんてことはなかろうの?


 「ところで、わざわざこんな過疎地に来るなんてやっぱり次回イベントの視察なの?」


 「視察などと言っても、まだイベントの内容は発表されてない筈ですよ?『白い黒神』」


 「だからこその視察だと思うの、次回イベントの場所は前回優勝者のいるこの【帝国】の人や物の流れを見れば自然と予想が着くものなの」


 「人や物の流れなど、どうやってわかると言うのですか?そもそも、それでは発表前から事前に準備できてしまうのではありませんこと?そうなればイベントの公平性が失われてしまうことになるでしょう?」


 「何を焦っているの?情報も力の内、自国で開催になればその分有利。それだけのこと」


 「まさか、前回優勝者に早い段階から支援していたと言う噂は・・・」


 「ん、事実。候補を探してきたのはアンデルセン、特注の調理器具を用意したのはクラーヴン、店を出させて当日出す料理を煮詰める場所を提供したのは私、僻地のレア食材を教えたのは知り合いの『兵士』なの」


 「な、なんですって、イベント発表前から準備するなんてそんな不正が許されると・・・」


 「許されているから、誰もペナルティは受けていないし、今回も普通に内容が予測できるようになっているの、もちろんあなたがフェア精神に則って発表を待つならそれでもいいの。ただ、そうすると何でこんな過疎地にいるか不思議なの」


 「ちょっと人を訪ねてきただけですわ。多分貴女の言う『兵士』をね」


 「じゃあ、尚のこと今回のイベントの視察だと思うの。今回のイベントはあの『兵士』の為の物と言っても過言ではないほどマッチしているの。攻略情報を見る限り多分あの域に達している人はいないの。攻略組だろうと検証組だろうとあなた方のようなレア最強職組だろうと到底及ばないの」


 「それでは、貴女も及ばないのでは?それとも今回もサポートに徹するのかしら?どんな内容か分からないけど【兵士】有利ってことですものね?」


 「挑発して情報を引き出そうとしても無理なの。様子があからさま過ぎるの。それに【兵士】だったら誰でもどの国でもなれるの。なにより私も今回は参加するし、やる以上は負ける気は無いの。ただあの『兵士』が異常なだけ、ハッキリ言って化け物だし、運営もわざとあの化け物が育つのを見極めて、現実で言うところの一周年記念イベントにする気だと思うの」


 「ぐ、別に私はどんな状況でも正々堂々と勝負いたしますわ」


 「それならそれでいいの。おじいちゃまは?」


 「そうじゃの、ワシはイベントには興味無いがの。もし教えてくれるのなら知りたいの」


 「別におじいちゃまは、知らない仲じゃないし構わないの。ただし、出来ればなんで『兵士』の人を訪ねてきたのか教えて欲しいの」


 「うむ、現実に関わることじゃ詳しくは言えぬがの、強くなっているのか、このゲームを楽しんでるのかを見に来ただけじゃよ」


 「あら、現実の知り合いだったの?それじゃあイベントと関係ないの。ちなみに今回のイベントは多分集団戦、旗の取り合いになると思うの」


 「やはり、集団戦ですか!?では、我々の圧倒的有利ではないですか!次点で【海国】の・・・・」


 「事前に知るのは不正じゃなかったの?別に構わないけど【帝都】近くの大きな演習場に向かい合わせで砦があるの。普段はチームに分かれて集団戦の練習をしてる場所を今は閉鎖して色々改築しているみたいなの。旗取りだって分かったのは、一番奥の一番高い場所に旗を挿す場所があったから、旗が倒れないか確認してたし。後、不思議なオブジェを作っていたの。『都』とつく場所には形は違えど似たような物があったはず、多分次回アップデートでポータルみたいなのが解禁されると思うの。その負荷試験に今回のイベントを利用するつもりだと思うの」


 「ふむ、なるほどの集団戦とはの。しかし、その『兵士』が有利だと思うのはなんでかの?大規模のクランなら大抵攻略情報に載っていると思うがの?」


 「その『兵士』はクランには入っていないから、もしクラン戦であれば不戦敗なの。ただ、どこかのクランに入った場合そのクランが優勝するの」


 「集団戦となっては我々の独壇場です!絶対に勝ちに・・・」


 「ほう、それほどかの。では、ワシは今回は不参加とするかの」


 「え?マスターなぜですか?」


 「正直、勝てる気がせんの。何よりイベントには興味ないと言っておろうが、やりたきゃお主達で好きにやるが良い」


 いや、孫の晴れ舞台にしゃしゃり出て面子を潰すなどもってのほかじゃ!いずれ孫とは別の形で一緒に遊ぶとしよう。


 いい土産話も聞けたし、今回のイベントは孫の活躍を見ながら楽しむとしようかの。

 

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― 新着の感想 ―
「我々が最強」に拘るくせに本人は然程の突出した強さは無さそうだし、矛盾した発言するし、何なんだろうこの聖騎士の人?
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