457.外に出る方法?
結局小麦は育ててみたいけど、元になる種籾が無い。
芋なら埋めれば育つかとも思うが、そもそも畑を造らない蜘蛛達にはどうしようもなく。
自分も農業なんてスキルは持ってない。
そもそもそんなスキルがあるのか分からないけども、もしかしたら生産系にはあるのかもしれない。
向こうだってあっちもこっちも食料が足りないんだから、肉だったら【馬国】にあるけど。
運ぶだけじゃなくて、生産できる方法があってもいい筈だ。
もしかしたら、あの寒い拡張地帯で、土壌改善から始めたり出来るのかな?もしくは【王国】の平原の場所を借りれるとか?
何しろ大半は魔物の住む地だし、危険な場所をプレイヤーが開拓して、農業やっても面白い気がする。
「まあ、いずれ外と交流できるようになれば、食料問題も何とかなるんじゃない?」
「どうやって、外と交流するのよ。あんたみたいに自分からこっち来る場合もあるだろうけど、私も余所者見たのあんたが初めてだからね」
「自分が来れたって事はいずれ誰か来ると思うんだけどな~でも大霊峰登る人って少ないよなきっと、知り合いの中にはいないし」
「何よ大霊峰って」
「ああ、西の壁の上だね。自分は向こうじゃ一番高い山に登って、そこから落っこちてこっちに来たから」
「じゃあ、どうやって戻るのよ?」
「分かんない」
「分かんないって!外に帰りたくなったらどうするのよ」
「当分戻りたくないんだよね。戻る方法はあるらしいんだけど、今のところ分からないしな~」
「何があったのよ。元々いた場所に帰りたくないなんて」
「いや邪神の化身を倒した時に、偶々自分が中心になっちゃって、色々どうだこうだとうるさくされちゃって、面倒になっちゃったんだよね」
「ふ~ん、山みたいな敵倒したんなら仕方ないと思うけどね」
「まあね、でも倒したいなら本人達が頑張って倒せばいいじゃん。自分だって手探りで出来ること頑張っただけだし」
「そういう感じなのね。それじゃここで静かにしたらいいよ。何にも起きない場所だけどさ。いずれは外に出る気でいるし、その時までゆっくり休んでいいよ」
「外に出る気なの?」
「そうだよ!同族をいっぱい増やして大族長になるの!」
「へ~、なんかあてはあるの?」
「まあ、考えてはいるんだけどね~。中々当たらなくてさ~。南は赤い川の間を抜けると、どこに辿り着くのかな~とか、他は壁に囲まれてるじゃん。どう思う?」
「どうだろう。南で魔物を倒したけど、あまり深くまでは行かなかったもんな」
「そっか!もし興味があって、奥まで行けたら教えてよ!別に無理しなくてもいいけどさ」
「分かった。魔物狩って肉も手に入れたいし、今度ちょっと行ける所まで行ってみるかな」
「本当に?ところで、魔物の肉ってどんなの?」
「この前の鶏肉みたいな感じだね。この前狩ったやつがまだあるから、食べる?」
「いいの?食べる!」
じゃあ、大根を渡してあるし、そのまま齧るんじゃ、すぐ飽きちゃうだろうから、鶏大根にするか。
いや、待て、醤油と出汁が無いか。自分は持ってるけどここじゃ作れない?
「ねぇ、豆って生えてない?」
「豆?」
「食べれる植物なんだけど」
「食べれる植物か~、ほとんど水源近くに生えてるだけだからな~」
だよな~大豆は保水力が高い土で育つ筈だし、水無きゃ無理だよな。
いいか、塩味にしよう!
肉は一口サイズに切って~、塩こしょうを揉み込む。
大根は皮をむいて太めの千切り、切り、切り刻む!
鍋に油を敷いて熱して~、鶏(赤鳥蜥蜴)肉の表面をサッと焼く!
水、酒、青い瓶のスープの元に塩をちょろっとでスープを作って~
大根を加えて煮る!
大根が柔らかくなったら、火を止めて、かんせ~い!胡椒振っても美味しいけどね~
「いい感じに出来たよ!スープの元は何か考えなきゃいけないけどね」
「うま~い!やっぱり外はいいな~おいしい物いっぱい食べて、食べさせる。そんな族長に私はなりたい」
「うんうん、頑張れ!でも外は悪い人もいるだろうから本当にそれだけは気をつけてな」
「悪いヒト?ああ~物が少ないと手に入れる為に無理するヒトもいるんだ?それは怖いな~」
「まあ、この前の大会見る限り結構強いみたいだし、いきなり大変な目には合わないだろうけど、注意深さも大事って事、騙されるかもしれないし」
「へ~、でも食べ物と何かを交換するのは大丈夫だよね?」
「まあ、大丈夫だと思うけど、もし西側に出る事になったら、信用できるヒト紹介するよ」
「そのヒトは強いの?」
「そりゃ、強いよ。ムシャマッシュより強いかもね」
「うわ~外ってやっぱり凄いんだな~」
「強いよりもずるい人の方が怖いと思うけどな。自分は」
「そうなんだ?気をつけるよ。でもおいしい物は食べたいもんな~。勇気出していかなきゃ!」