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45.ミランダ様の指示

 ■ 軍狼(マヴロ・リュコス)の牙 ■


 ダガーの一種『プギオ』

 日常生活や野外活動にも使いやすい大型のナイフ もちろん戦闘用の武器としても運用可能

 装飾を施し階級を誇示するもよし 不慮の攻撃に備えて隠し持つもよし

 現実(リアル)では、古代ローマ時代暗殺用として度々使用されていたこともある物と同型


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 あの狼の襲撃以来、砦も落ち着いてせいぜい猿か犬がぼちぼちと現れる程度だ。書類作業やら管理作業も慣れたものだ。ぼちぼちとすごしていると代わりの【士官】がやってきたので、自分の部隊を率いて【古都】に帰還することにする。


 【兵舎】に報告に戻ればすでに連絡は入っていたようだし、戦利品の清算や分配もあっさりとしたもんだ。大型のボスということでいつもより特別に報酬額が多かったようだが、いつも通り貯金するだけだ。いつもの日常に戻ると、早々に兵長に呼び出される。嫌な予感しかない。


 「よう、もう今回の戦利品は確認したか?特殊な報酬があったはずだが?」


 「ええ、よく知ってますね、ルークのやつの告げ口ですか?まあ、狼の革冑とプギオとか言うダガーですよ。どちらも戦闘が始まると同時に一定値まで隊の士気が上がるらしいですね。自分には使いやすい装備ですよ」


 「それだけじゃないだろう?称号も得たはずだ」


 「本当によく知ってますよね。なんか勲章みたいな奴があったから、確認したら『ケントリオの称号』とか言う譲渡不可のアイテムでしたよ。何に使うんですかね?」


 「それは、よ。特殊なジョブに就くのに必要なんだよ。100人隊長に成るためのな。お前【中隊長】になる気はあるか?」


 「妙に含みのある言い方ですね?なんか問題あるんですか?」


 「今までのお前のジョブは指揮系汎用職って感じだが、【中隊長】は指揮系戦闘職だ」


 「何が違うんだか結構あやふやですが、何なら【士官】のままでいいですよ。多分【中隊長】になると今までみたいな管理業務とか無くなるんでしょ?話の流れからすると」


 「お前さんならそういってくれると思ったぜ!管理業務やってくれる奴がいなくてな」


 「じゃあ、最初からそう言えばいいのに」


 「いや、ここで相談なんだがな、確かお前はサブジョブを取ってなかっただろうが?【中隊長】をサブジョブにしないか?」


 「詳しいことは分からないですけど、ジョブってそう簡単に変えられないんじゃないんですか?【兵士】で埋めるとかそれはちょっと躊躇うんですけど」


 「別にやめたり変更したりするのは簡単だぞ。ただそのジョブで得ていた貢献度が0になるだけだ。後ジョブを辞めたらそれまで利用していた拠点が使えなくなるとかそんなもんだ。両方【兵士】系にする分には、仮に他のジョブを取り直すにしても片方のジョブを残しておけば、特に損するようなことは無いぞ」


 「なら、取りますよ。サブジョブで【中隊長】ですね」


 「悪いな、俺は【士官】続けてもらいたいんだが、教官の奴がなどうしてもお前を戦闘職にしたいらしくてな」


 「やっぱり【士官】だけでいいですわ」


 「もう、お前のサブジョブは【中隊長】にしてある。教官もいつになく気合入っているからな。逝ってこい」


 「いや、逝ってこいって言われてもね今日は、新しい装備の更新もあるから無理ですよ。薬も結構使ったし」


 「何も【訓練】して来いとは言ってない、戦闘職になるにあたって必要なスキルでも教わって来いっていう話だ。お前さん今まで汎用スキルと指揮スキルばっかり取ってるんだからな」


 「分かりましたよ」


 そんな会話をしていると扉の方から聞き慣れない足音が聞こえる。チラッと見た限り一人は術士か生産職だろう、歩き方がもたもたとドンくさい。


 もう一人は、かなり出来る。


 護衛か?ヤバイなちょっと背中に冷や汗が流れる。ここは、さらっと立ち去ろう。


 「おっ!しゃべりこんでたら他人ひとの邪魔になってたか、悪かったね。んじゃ、兵長ちょっと逝ってくるわ」


  「いえ、別に今着いたばかりですので邪魔になどなっておりませんわ。こちらこそお話の邪魔して申し訳ないですわ。なんならお待ちしてますけど?」


 「いや、兵長とはいつもしゃべってるし、いつでもしゃべれるからね、用件も済んでるから、もう行くよ」

 

 正直支援職のほうはしゃべるな!この爺さんヤヴァイぞ!自分は早くこの場から離れたいんだ!


 出入り口のほうへ向かうと、うっかり手練の爺さんと目が合ったのですぐに逸らす。


 ああ、こいつは突っかけてくるな・・・・笑って誤魔化そう。


 長めの長剣で抜き打ち一閃。


 首を狙い済まして一撃、ぴったり殺気の位置に来る正確さ。長剣で受けたんじゃ絶対に間に合わなかった。反射で抜きやすいプギオで受けてよかった。


 「すまんの、つい試したくなってしまっただけじゃわい」


 「まあ、そう来るだろうと思ったし、気にしてないよ」


 「でもの、もう少しで体から首が離れるところじゃった訳だがの」


 「本気でその気なら、あんな早くから殺気向けてないでしょ?扉から入ってきた瞬間から分かったよ。あんた、できるんだろ?」


 「ふむ、簡単に受け止められる程度にはの」


 「まあ、いいさ、用事もあるしもう行くよ」


 「また、会うことになるかの?」


 「敵同士としてじゃないことを祈るよ」


 「ワシもそう祈るとしようかの」


 なんか格好いい風にまとまったけど、後で兵長に絶対怒られるわ、でも突っかけられたんだからしょうがないじゃない。


 訓練場に着くといつに無く、やたらいい笑顔の教官と珍しくミランダ様がいた。


 「兵長からこっちによるようにと言われたんですけど」


 「うむ、無事【中隊長】に成ったらしいな!これからは本格的に俺の全ての技を・・・」


 「あまり先走るでないわ!ちゃんと話しただろうに」


 あっ今日はミランダ様普通にしゃべってるわ。入れ歯忘れなかったんだ。


 「そうでしたな。戦闘職となるからにはまず<戦形>を決めることだな。次回までにちゃんと選んで置けよ。大事なことだからな」


 「それにのお主の戦い方を聞く限り守り主体はいいが、戦い方に幅とゆとりが無いの、そういう意味でも<精霊術>を取るとよいわい。攻撃に守り、支援とバランスよくこなせるからの。この辺りだと氷精様の祭殿が何処にでもあるから、早いうちに一度行って取得してくるがええ」


 「取れといわれて断る気は無いですが、別に自分術士じゃないんですけど?器用貧乏にならないですかね?」


 「汎用職についてきたんじゃ、すでに器用貧乏じゃよ。むしろ手札を増やしておくが良いわい。なに<戦陣術>ですでに術の使い方は慣れとるんじゃ、問題ないわい」


 「近接戦闘職のつもりでスキル鍛えてきたんで術士に必要なスキルとかわからないんですけど」


 「あくまでお主の戦闘手段にちょっと幅を持たせるだけじゃ、切り札にしようって訳じゃないんだからあまりこだわらんでよいわい」


 「そうだ!あくまで俺の<剣術>を習得するのに必要な・・・」


 「先走るなと言っておろうが、いずれにせよある程度まで<氷精術>を使えるようにならないといかんのじゃ」


 「なんか不穏な感じがするんですがね?」


 「とにかく氷精様の祭殿に行くのじゃ、後寄付を求められるだろうが、ちゃんとフンパツせいよ」


 「別に嫌とは言いませんが、理由を聞いてもいいですかね?」


 「ここいらの田舎で農家の子倅が食い詰めることは珍しくないのは知っておるの?そういう連中はどうなると思う?」


 「【兵士】になるんでしょ?どいつもこいつも農家の次男坊か三男坊ですよ。」


 「【兵士】にすらなれない子供はどうなると思うかの?精霊殿や神殿に預けられるんじゃ。そういう意味で寄付は綺麗に使われるからの安心して・・・・そうじゃの金貨50枚くらい寄付してやったらいいわい」


 「いや、それはたかすぎ・・・・」


 「うるさいの、本人の気持ちの問題じゃこういうのは」


 「なるほど、まあ、公共のために使われるんなら別にいくらでも構わないですよ。(ゲームだしな)多分それ位は預けてあったし、今度来るまでに<氷精術>取得してきますよ」

 

 訓練場を立ち去り、ルークのメモを見ながら買い物を済ませる。


 とりあえず今日のところはコレくらいにしよう。またきっと地獄の日々が待っているんだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ルークすっかりおっさんの知識と強化補助ポジになったな、そろそろほかのヒュムに副官様~と呼ばれそう
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