447.闘技大会予定地で
メンテナンスを終えた装備品を受け取って、水源に向かう。
しかし水源周りって、精々ちょろっと木が生えてたりするくらいで、何にも無いけどな。どこで闘技大会やるんだか?
取り合えず、水源に近づけば、確かに結構人が集まってた。娯楽が少ないのかね~。
皆それぞれ適当に過ごしてる。
屋根も壁も無い場所で普通に生活して大丈夫なんだろうか?
よく考えたら、この辺り来てから、一度も雨とか降った事無いや。そりゃ天井塞がれてりゃな~。
自分も集団の片隅にセーフゾーンを見つけてテントを張ると、テントが珍しいのか、初めて見る模様のイタチが近づいてきた。
「お前が最近噂の丸耳の余所者だな?石と交換で、ご飯食べさせてくれるって聞いたぞ」
「まあ、いいけど。もしくは自分の知らない事を教えてもらっても、情報と交換って感じかな」
「へ~何か知りたいことあるのか?」
「いや、皆何もないところに適当に座り込んだりしてるから、どうやって過ごしてるのかな?って雨とかは降らないんだろうけどさ」
「俺達は毛皮があるからな、正直どこでも寝れるんだが、一応穴掘ってはいるなそれ位だ。蜘蛛やエルフは糸とか毛皮とかで、寝るときだけ屋根作ってるぞ」
「へ~じゃあ、テントが珍しかった訳じゃないのか」
「いや、こんな小さくて、色んな匂いのする不思議な家は初めて見た」
ああ、香辛料とかかな。種類はあるけど量が無いやつはテントに突っ込んであるからな。
「そっか、じゃあ、何か作るけどリクエストは?」
「何か肉じゃない、肉みたいなやつがうまいって聞いた」
「はいはい、魚ね~、何か適当に焼くかな。骨はあっても大丈夫?」
「別にいいぞ」
じゃあ、干物でも焼きますか~。何かの開きがあったな。魚の種類は詳しくないけどさ。
適当にほっけのような肉厚な魚の干物を取り出し、コンロで焼く。その内、七輪も欲しいな。
程よい所で、皿に上げると、食べられた。
「うまい!おかわり!」
「魚だけでいいの?米とか味噌汁とか」
「これだけでいいや。芋も持って来たし」
そう言って、サツマイモを取り出して、そのまま齧り出す。
「なんならそれも焼こうか?」
すると、サツマイモを差し出してきたので、一緒に焼く。アルミホイルでもあればいいんだがな~。
「そういや、雨は降るぞ?ちょっと前に一度降ったな、その前はもういつ降ったか分からない」
「え?雨降るんだ?じゃあ、皆ってあの上どうなってるか知ってるの?」
「上?分からないけど、なんか世界樹が蓋をしてるんじゃないのか?外の世界は危険だから、平和になるまでは塞いでくれてるんだろ?本当は外も気になるけどな~」
ああ、やっぱり皆そういう感覚なんだな。
「その雨ってのはどれくらいの量が降ってくるものなの?」
「いや凄いぞ。ザー!!って色々押し流される事もあるし、でも草がいっぱい生えるから羊も増えるし、世代交代の時期になりやすいんだよな。たぶんあんたが来るよりもう少し前の事だと思うけどな」
「へ~、それで、白蜘蛛も増やしたのか」
「そう言う事だな。後雨が降る時は、なんか声が聞こえるって言う奴がいるんだよな。不思議な事に」
お代わりの干物と、焼き芋を差し出す。
「そりゃ不思議だね?雨の精かな?」
「どんな精だか分からんけど、今回は『ビックリしたー』って声が聞こえたらしいぞ」
「え?どこから?」
「分からん、頭に直接聞こえてくるんだと」
頭に直接聞こえてくる声って、世界樹かな?まさかな?何かに驚いて、上の水ちょろっと撒いちゃったんかな?
勿論住んでるヒトからしたら、ちょろっとじゃ済まないんだろうけど。
「さて、ご馳走さん。これ石一個置いていくな。何の石かはお楽しみだ」
そう言って、石ころ一個置いていく。
因みにこの前のジェットはまだ磨きにも何も出してない。
柔らかい物なので、普通に身に着けるのがちょっと気が引ける。日常生活ならいいんだろうが、戦闘職の自分にはちょっとな~。
さてこの石は、何かな~。
ガーデンクォーツだ。
こりゃあ、いい物だ!磨いてみないと分からないけど、内包されてる苔のような緑、クローライトの内包量もかなり有りそうだし、何だこの品質は!
あわわわ、すげーいい物貰っちゃったんだけど、どうしよう。
これは水晶だし、硬度も高いはずだから、身につけ無い訳が無い。
どんなアクセにしよかな、今着けられるのは首飾りくらいか。ストールの下にちらみせにしちゃおうかな~。
その後も、目ざといヒト達が、飯食いにやってくる。
ところでさ、闘技大会ってどこでやるのよ?うちは屋台じゃないぞ?
あと、取り敢えずで石置いてくの、ありがたいけどやめておけって。