444.重要すぎる情報に緊張が走る
「そう言えば一個聞きたい事あったわ」
「なんだなんだ?何でも答えるぞ?」
いつの間にかヒトの出入りが増えた酒場、理由は言わずもがな自分の料理。
気分次第で、適当に作っているだけだが、作った料理が残った日は無い。
おかげ様で、装備もメンテナンスに出せそうだ。
「いや、<精霊術>をどうやって賢者の石無しに使ってるのかな?って」
「賢者の石ってのが何なのか分からんが、普通は何かを媒介に使うんじゃないか?<陰精術>なら陰と契約するとか」
「うん、どんな術でもそうなんだけど、自分の知ってる<精霊術>って賢者の石を媒介に補助とか攻撃とかに使う物が多くてさ」
「へ~、外はそうなんだな?ここは種族によって違うな。イタチなんかは<石精術>を採ってるものが多いな。爪を硬くしたり、戦う時は逆立った毛も硬くしたり」
「だから、どうやって?」
「イタチの連中は何か堆気?ってのを体に流すらしいぞ。よく分からんが、それでちゃんと<石精術>も鍛えられるらしい」
え?<気脈術>ってこと?あれ?じゃあ、もしかしたら自分に<気脈術>を使えば、そういうバフ効果もあるの?
「白蜘蛛は<操糸術>だから<精霊術>関係ないよな?」
「いやそんなこと無いだろう。絡めつけた糸から吸収するのは<陰精術>じゃなかったか?」
「黒蜘蛛の鎌はイタチと同じで石精だったよな。雷精と相性が悪いはずだ」
「それで、エルフはどうなの?体に雷気通してるの?」
「俺達は道具とか武器を媒介に出来るようにしてるけど?」
「いや、それって<氷剣術>とか武器術にしないと使えないじゃん?」
「なんでだ?使えるぞ?」
「一応自分の剣は氷精の力が宿ってる筈なんだけど」
と、剣を渡すと、
「うぐ・・見た目より重いな。まあ、確かにひやっとするし、氷精が宿ってるんだろうが、これじゃ役にたたんだろ?不良品か?」
不良品らしいぞクラーヴン。
「俺に貸してみろ・・・重っ!へぇこりゃ珍しいな。氷精の力が宿る石を砕いて混ぜてるんだろ?俺達の武器は<精霊術>が使えなくても、精神力を流し込むだけで精霊の力を発揮できる。その上で対応する<精霊術>を使えるとさらに強化できるんだ」
「つまり<精霊術>を使えなくても最低限その精霊の力の乗った武器は使えるんだ?」
「その通りだな。威力は出ないが色んな種類の精霊の力を借りる事が出来る」
このゲームにはそぐわない言い方になるけど、所謂属性剣?最初から武器に属性が付与されてるみたいな感じか?魔物によって凍結とかに強いのがいれば、炎熱に強い奴もいるもんな。武器持ち替えによって魔物への対応能力の幅が広がるのか?
それが世界樹の下の世界で開示される古の技術みたいな?
返してもらった剣を鞘に戻し、もう少しその辺りの話を掘り下げたい所だ。
「それで?その武器を作るのに必要な素材ってこの辺りでも普通に手に入るんだ?」
「基本的には金属と石だからな。砕いて混ぜるんじゃなくて、石の力を武器に通すんだ。雷精以外の武器ってのは最近は作ってないが、何か欲しい精霊の力が宿った武器があるのか?」
「自分は既に氷精と陰精習得してるから、何が相性いいか分からないんだよね」
「ああ、そうなのか、まあイタチのところにいけば、あの辺りは石と鉱石が生えてくるからな。後、塩もだが」
「・・・ん?精霊の力が宿る石って宝石だよね?どんな宝石が生えて来るの?」
「そりゃ色々だが?世界樹様の力で色々生えてくる。ダイヤとかサファイアとかも少ないが出てくるし、雷精ならトルマリンだろ?」
「貴石も出るのかよ・・・そいつはやっぱり地下深くとか死者が何人も出るようなダンジョンの果てとか」
「何言ってるんだ?掘れば出るぞ。当たり外れが多くて狙って出せないだけで、選別すればある筈だ。ただ使いどころが無いから、多分適当に山になってる」
「ああん?貴石が掘れば出るって?嘘だったら・・・自分の心を弄んだら、どうなるか分かってんのか?あん?」
「いや、何キレてるんだ?使わないから除けてあるってだけの話だろ?」
「そ、そうか。もし自分みたいな余所者が来た時、そいつが悪い奴だったら困るから予め言っておくと、貴石は外じゃ高級品だからな。交換レートは気をつけろよ」
「そうなのか?まあこの辺りでも少ないは、少ないからな。米だっけ?あれ一俵と交換とかにするわ」
「お馬鹿!米一俵なんて外にいきゃ山ほど手に入るの!自分のポケットマネーだけで何千人食わせられると思ってるの?」
「まあ、世界樹様の力で手に入る物だし、そんな釣上げてもな。一度見て来たらいいじゃないか、欲しい物があればイタチと交渉して食料と交換すればいい。装備品に使いたければここで加工してやるし、それも食料と交換でいい、それならいいだろ?」
「そんな・・・そんな事が許されるのか?いや、待て、自分は石は何でも好きさ!選べなくなって困るのがオチだ。やめておこう」
「じゃあ、選ばずに縁に任せて拾ったっていいじゃないか。例えばその剣に石精の力を通してもっと重く固くしてもいいんだぞ?」
「いや、自分基本軽量片手武器だから重くされても困る」
「???」
「???」
「まあ、いいさ。運と縁に任せて手に入れた石をうまく使ってみようぜ」
「ちょっくら、イタチの所行ってくる」