438.情報集め
「あっ塩渡し忘れた!」
「どうしたんだ?」
「いや、食糧難の白蜘蛛に食料渡したんだけど、塩渡し忘れた」
「そうなのか、まあ、大丈夫だろう。それで今日はどんな情報がいいんだ?」
「そうだね~。色々気になってることはあるんだけど」
エルフ?の街に戻っていつものおじさんにご飯奢りつつ情報を集めようって時に大事な事を思い出した。
「なあ、俺達も食わせてくれないか?」
いつだか、絡んできた三人だ。一人には別に何もされて無いけどさ。
「別にいいよ。情報と交換ね」
「酒を多く飲む場合は金か?」
そうか、ご飯でお金稼ぐのも有りなのか。
「そいつはちょっと待ってもらおうか」と酒場のマスター
「ですよね、勝手に酒場でお酒売ったら、商売上がったりですもんね」
「俺の仕事はここの管理と酒の配給管理だ。別に商売云々は関係ないが、酒を勝手に大量流通されても困る」
「ふむ、じゃあまとめてお酒を渡すので、調理場とか食器とかまとめて借りたり出来ません?」
「そうだな、そうしよう」
ラム酒やワインや氷結酒に米酒を適当に樽で渡す。何かマスターの顔が引きつってるが何だろう?
「じゃあ、そう言うことだからお酒はマスターから買ってね」
「ああ、飯だけでいい。何でも話すし足りなきゃ金で払う」
「いくら位が、妥当なのかね~」
「銀貨一枚が一食分て決まってるから、その金で出来る分を作ってくれればいいぞ」
「じゃあ、取り合えず、知りたいのは『塩の事』『北と南の事』『魔物の事』『外に出る方法か出たヒトの事』『種族の事』これ位かな」
「いいぜ、飯食って酒呑みながら答えるぜ、多いからここにいる全員で答えるってんでもいいか?」
「いいよ。マスターも食べるでしょ?」
「いいのか?じゃあ俺も補足できる事はしようじゃないか」
すると、タイミング悪く女性が入ってくる。
「また手紙?」
「いや、私も飯食って行っていいかい?条件は表で聞いてた」
「別にいいけど、どういう風の吹き回し?」
「あんたが、白蜘蛛に渡した食料が出回ってね。だけど料理の仕方も良く分からない物ばかりだから、あんたが作った物の方がうまいだろうと思ってね」
「ああ、使い方説明しなかったな~。まあ適当に食べられる物ばかりだし大丈夫か」
ふむ、やっぱり食料難解決が信頼度ボーナスだったんだな。急に皆フレンドリーだもん。
さて、何作るかな。あげても使いづらいものを自分は使うか。
まず米!これは焚くだけ。
次に魚の干物!これも焼くだけ。
ほうれん草のおひたし!これは塩をちょっとだけ入れたお湯で茹でて。絞った後、出汁につけておくんだけど、まあ軽くでいいか。
最後にわかめの簡単味噌汁!
と、まあ、完全な和食なんだけど口に合うか試してみよう・・・。
出すなり、全部がっつかれた。速攻空じゃん。
情緒も何もない。
「米酒で食った方が、合うのに」
「食ってから言うなよ」
「言う前に食ったじゃん」
追加で同じものを作ったら、お金で皆再注文。次は流石に日本酒でゆっくり味わって食べながら話し始めた。
「それで、塩の事だったな。岩塩はイタチの集落の辺りで鉱石やなんかと一緒に生えてくるから量は採れるし、流通量もあるから問題ない。因みにイタチは穴を掘るのが得意だから、そういう土から生えるものを集める仕事をしてる」
ほ~ん、ミネラル生えるのか。
「次は北と南だね。イタチの集落より北はどんどん寒くなって行って、地面も凍る地になっていくよ。氷室があって食料保管に使われてて、便利なんだけど。北辺は氷の巨大な壁、触れるだけで手が凍てついて、焼けた様になるらしい。ここより少し明るいらしいが、絶対越える事の出来ない壁に映るのは自分の絶望した顔のみ。それゆえ『絶望の地』と呼ばれてる」
「逆に南は灼熱の地、噴出す汗が一瞬で蒸発し、さらに汗が出て、あっという間に干上がる。触れるだけで死んでしまう赤い川が流れてる。南もここより明るいな。世界樹すら根つかない、死の土地。因みに魔物ってのはその灼熱の地周辺に生息しているぞ」
ふむ、気温的には北の方が過ごしやすそうけど、南に行けば魔物がいるのか。スキル育てるのが捗りそうだな。
「種族ってのは、俺達エルフが手先が器用で物作り担当、イタチは穴を掘るのが得意、白蜘蛛が糸生産、黒蜘蛛が羊の管理、茸は水源管理だな」
やっぱりエルフでよかったのか。なるほどな。
「エルフってのは世界樹と共に生きてる種族でな。遠い先祖が邪神の化身と戦った時に根を使い切って、世界樹が飛んで行ってしまったので、それを追って世界樹の根を育むのを手伝いながら生きてきたんだ」
「他の種族は元からこの地にいたらしいが、どういう由来の種族かは分からん。元々世界樹があった土地は今は何も無く争いが絶えない危険な地になったと聞いているな」
「まあ、争いはあるけどそこまで酷いものでもないと思うけど」
「そうなのか?外が平和になったら出られると聞いているんだがな・・・」
「最後にここから出られた者は分からん。いるんじゃないかとは言われているが、行って戻ってきた者はいないだろう。極々稀に余所者が来るが、俺は初めて見た」
「確かに俺も初めて見た」
「そうだね。でも余所者のおかげでうまい飯にありつけるんだ。何も問題は無いがね」