437.食糧難
「えっと、自分は手紙を届けに来ただけなんですけど」
「いいから!私の仲間が飢え死にしそうだって言うのに、何にも無い訳?血とか涙とか」
「でも、さっきから話が徐々にそれてるし、嘘ついているように見えるんですけど?」
「嘘じゃないわよ!」
白アラクネがめっちゃ怒り始めた。
「初めて会った者にすら見抜かれてるでは無いか、こやつは昔からこうやってごねて徐々に釣上げていくんだ」
「何よ!仕方ないじゃない!私達の種族は一番数が少ないのよ!」
「仕方ないでは無いか、そなた達の生み出す糸は多少余り気味なのだ」
「ああ、羊の毛でも衣服は作れそうですもんね」
「ムキー!!!じゃあ、私達が滅びてもいいって言うのね!」
「そんな事は言ってないだろう。折角この地で何とか生き延びてる仲間が滅びていいなどと思うものか」
「じゃあ、もっと羊頂戴よ!」
「だから、勝手に仲間を増やすから足りなくなるのだろう。そして、すぐには羊も草も増えんと言っている」
「ムキー!長耳!あんたもなんか・・・耳が丸いわね?大丈夫?いじめられてない?」
「いや、別にいじめられたりはしてないですけど、自分がいた所は割りと皆耳が丸いので」
「もしかして余所者なの?道理で変な格好してると思ったわ。でも、歓迎は出来ないわよ!ただでさえ食べるものが不足してるのに」
「それは、お前達が割り当て以上に仲間を増やすからだ」
ふむ、取り合えず食べる物が足りないのは、困るよな。解決すれば少しは好感度の足しになるかね?
「一応、自分は今のところ持ち込んだ物食べてるので、迷惑は掛けてないですけど、これから世話になるんだし、分けましょうか?ただ、自由に行き来できる訳じゃ無いし、ある分が終わればそこまでなので、その辺は理解してもらいたいんですけど」
「いいの?さっきも言った通り、世代交代さえ終われば、何とかなるのよ。そうね羊5頭分も食料があれば!」
「おい!」
「ちょっと、余裕が欲しかっただけじゃない。3頭分もあれば、食いつなげるわ」
「なるほど、それは困ったな・・・」
3トンとか言われても、普段自分は袋とか箱で買ってるので、何キロなのか分からない。
う~む・・・多分自分が戦闘団を率いて一日100キロ位食べさせてるのかな?
そうなると、30日分か?ちょっと少ない気もするけどな。スープとか作ることが多いから水で嵩増ししてる所為か?
アラクネはちょっとデカイからな特に下半身の蜘蛛部がさ。
「なに?無理そう?糸なら余ってるから交換でもいいわよ?」
「あの、食べるのは羊肉だけ?」
「いや、大抵の物は食べるわよ。肉でも植物でも」
「芋とかは?」
「土を掘ると出てくるやつよね。それで食いつないでるし、食べられるわよ」
それじゃ、芋ばっかりじゃ嫌か。
羊肉は自分が買う一塊が、多分30キロくらいじゃないかなと思うんだよな~。
一トン分だと30塊くらいかな?少し多めに、50塊出すかね。1スタックに99塊入ってるし。
「じゃあ、取り合えず肉ね。羊が食べ慣れてるみたいだから、羊の成体の肉ね。子羊は無いよ」
自分で食べる分はちょっとだけあるけどね~【馬国】だと大人の羊肉を売ってることが多いんだよな~。
「え?この量・・・」
後は~、芋は食べれるんだから・・・。一袋50キロと仮定して、20袋かこれも余裕見て50位にしておこう。
それに、玉ねぎだな!やっぱり力つけるには玉ねぎとニンニク!50袋づつ。
「葉野菜とかは保存利くのかな?」
「き・・・北の氷室に置けば保つけど・・・?」
じゃあ、冬野菜は白菜だな!後は大根と、蕪がいいかな。50箱づつ!
「そうだ!お酒は?飲むよね?」
「飲まないことも無いけど・・・」
ふむ、ラム酒とワインでいいかな。50樽づつ!
「おい!流石にこれは・・・」
「ああ、そうか分かったデザートか!忘れてた」
瓜があったな。何か豊作で品質はいいのに余っちゃったっていうから買占めた気がするんだよな~。
50箱置いていきますか!
「(ねぇ、どういう事なの!?)」
「(知る訳無かろう。多分外は血で血を洗う地獄の様な場所だと聞くし、体を使うから、たくさん食べるんじゃ無いか?)」
「(でもこんな小さいのに食べるわけ無くない?)」
「(しかし、我らではどうにもならない巨大な世界樹すら倒しに邪神の化身と言うのが、外を跋扈してると言うでは無いか)」
「ね、ねぇ、あんた!邪神の化身と言うのは見たことあるの?」
「ああ、アレは大変でしたよ」
「そう?私達見たこと無いんだけど、やっぱり大きいの?」
「山でしたね!でも何とかなりましたよ。危ない所だったけど」
「山みたいなの倒せるわけ無いじゃない!何言ってるの」
「称号見せますか?いや、この辺りで称号って通じるのか?」
「稀な物ではあるが分からない事は無いぞ、神の認めたその者の身分だ」
そう言うことなので〔討天君の称号〕を見せると、二人とも顔が引きつる。
「ところで、食料はこんなもんで足ります?もうちょい出しますか?」
「いいいいいいや、だいじょうううううぶよ!すぐ仲間を呼んで運ばせるわ!」
「(おい!)」
「(後でちゃんと各種族におすそ分けするわよ!)ちょっとだ~れか~!」
白アラクネがヒトを呼ぶと、どこからとも無く別の白アラクネが走ってきた。
「何でしょう!族長!」
「うん、うちにある糸を根こそぎ持ってきて、尚且つこの食料を氷室に持って行く人数を集めて!」
「わ~かりました~!やっとお腹いっぱいご飯食べれるぞ~」
白アラクネが走り去り、その間に手紙を黒アラクネに渡して、また木板に傷をつけてもらう。
少し待っていたら、何か山と積まれた糸を差し出される。
まあ、交換て話だし、レートは向こう任せでいいか。別に糸がたくさんあっても自分には使い道ないし。
鞄の肥やしが増えちゃったな~。
白黒蜘蛛と別れ、エルフ?の街に帰るとする。