435.フランクなNPC
ふむ、やっぱり好感度0じゃ、情報収集もままならないね~。
とはいえ、いきなり0からやり直せって事は無いだろうし、何か切っ掛けとか無いかな~。
「な・・・あんた!余所者か!」
はい!来たー!、ぐいぐい来たぞ!めっちゃ肩を掴まれ揺らされる。イタチの居住区から出ようって時に、めっちゃ掴まれた。
「そう・・・だよ」
「だよな!耳丸いもんな!やっぱり外にもヒトがいるってのは本当だったんだ!どうやって入ってきたんだ?外ってのは世界樹が無くなって、地獄の様なんだろ?確かにあんたやばそうな匂いぷんぷんするもんな!」
「まあ、落ち着こうか。自分は西の端の壁を滑り落ちてきた。外?かな?自分のいたところが煩わしくなっちゃってね、ちょっと一人になりたくて」
「そうなのか?もったいない!こんなつまんない所に来ても何も無いぞ?そりゃよ。悪ささえしなけりゃ困ることも無いが、でもそれだけだ」
「え?でもつまらないなら、外に出ればいいじゃん」
「どうやってだよ?」
「いや、分からないけど、でも大昔ここから来たヒトがいるって聞いて、逆に自分はここに来たんだけど」
「なーーーにーーー!やっぱり出る方法はあるんだ!」
その時、年嵩と思われるイタチがやってきて、一喝。
「コラ!仕事サボって出かけたと思ったら、騒ぎやがって」
「何言ってんだ!俺はいつも皆の倍仕事してるんだから、その分しか出かけてねぇよ!」
「いいから、さっさと家に戻れ!外に出るなんていつまで子供みたいな事を言ってるんだ。いつか外の世界が平和になったら行けるって、大昔の大巫士様が予言されてるんだから、それまではこの地で静かに暮らせばいいんだ」
怒られて、とぼとぼ帰っていくイタチ。
「うーん刺激しないでくれってこの事か?」
「そうだな。あんたも色々有るんあろうが、あまり関わらないでやってくれ」
独り言を聞かれ、忠告されてしまった。
なるほどね、外に出たくても出られない環境。だから当分は戻れませんってか。
でも、出る方法はあるんだろうな。
『出る方法はあるよ?出たい?』
「いや、でもあのイタチに教えてあげるのは有かな?」
『それは無しかな。何度も言うけど僕はこの辺りじゃ凄く弱い。誰も僕の言う事なんて聞かないよ』
「でも、自分が間に入ればまた別なんじゃない?」
『ダーメー』
ふむ、駄目か。まあ、無理強いはしない。
単純にそういうのが嫌いってのはあるけど、多分この陰はプレイヤーの案内係じゃなかろうか?
仲間がいるって言いつつも会った事ないのは、プレイヤーごとにくっつくからじゃなかろうか?
いざと言う時の脱出手段持ちで、尚且つここのクエストか、問題解決のためのアドバイザー。
何せ、隔絶された世界だ。己のステータスや持ち込んだ装備やアイテム以外は0からやらねばならない。
自分みたいに食料持ち込むプレイヤーばかりとも限らない。
そもそも大霊峰の頂上まで登れるプレイヤーが何人いるかって言う問題も有るんだけどさ。
<登攀>を鍛えてちゃんと装備を整えれば、登れない事ない筈なんだが、自分の周りに登ったと言う人はいない。
でも、まあ、山があれば登る人もいるだろう。
いや、でもそうなると、そういうプレイヤーしか入れない国とかフィールドって事か?
流石にレアフィールド過ぎないか?
そんな凄い物が眠ってる土地なのか・・・。そんなの独占したらまた煩くなるじゃん。
少し、先走りすぎたな。
取り合えず、手紙配達完了報告のために帰ろう。
帰り道は、ガンガン飛ばしたので、自分に追いつける陰も無く、街に戻った。
ポータルがあるわけでも、王様がいるわけでも無さそうだし、街でいいよね。
何かやばそうなヒトでも出てきて喧嘩売ってきたら、剣で殴る。そして銃を乱射する。
酒場に戻れば、例の女のヒトが待ち構えていたので、板切れを渡す。
「お待たせ」
「随分早かったから、途中で投げ出したのかと思ったが、ちゃんと完了したみたいだね。報酬だよ」
そう言って、銀貨を一枚渡された。例の見慣れぬ形のやつだ。
そのまま、酒場から立ち去る女性。
もしかしたら、これからも依頼を受けるかもしれないし、風体を覚えておく。
細身で高身長のエルフ?頭には中折れ帽子、ベストとぴったりしたズボン。
腰に交差するように二本ダガーを差して、スカーフが陰で出来てる。
そんな所かね。
さて、情報収集の為にもご飯作りますか。
「なぁ、この前食べた奴じゃなくてもいいから、植物の飯が食いたいな。どうしても羊ばっかりだからよ」
「そうなの?じゃあ、その辺の習慣とか教えてもらおうか、今から何か作るから」
そうだな~。まずはカブの紫蘇和えなんかいいかな。和えるだけだし。
後は、芋とピーマンとニンニク炒め。挽肉入れても美味しいんだけど、野菜がお好みみたいだからな。
これも塩コショウで味付けしながら炒めるだけ。
超簡単に作ってしまったが、おいしそうに食べるおじさん。
一応【森国】の日本酒もつけておいたら、ちびちびやりながら、ここらの習慣について教えてくれる。
「大した話じゃ無いがな。この地は世界樹様のおかげで必要な物資があるから、多くを求めず、静かに暮らす事が美徳って言われてるな。何せ遠い昔俺達の先祖が世界樹様の根を使い切っちまったんだ。それでも今では俺達を生かしてくれる世界樹様には感謝しかないさ」
「ふーん、やっぱり原初のヒトの子孫なんだ。相当遠い昔の話だって聞いてるけど」
「俺もそう聞いてる。その辺の歴史は【巫士】様にでも聞くといい。この辺りは【巫士】様を中心としてる。理由は簡単だ稀に神様のお告げがある時は【巫士】様に届くからだ。そして、食習慣だよな」
「そうそう、羊ばっかり食べてるって聞いたから」
「まず、アルキノコが歩き回ると草が生える。その草を羊が食う。それをヒトが食う。そう言うことだ」
「他にも木の実みたいなのもあったけど?」
「数が少ないんで、集まりの時なんかに振舞われるな。普段は水しか必要ない茸達が管理してる」
「じゃあ、確かに羊ばっかりになるか、それは中々しんどいな」
「まあ、草も酒になるから、酒も皆飲むし、酒が飲めなくても代わりになるものはあるさ。贅沢したり勝手に増えなきゃ誰も餓えない」
「出産制限て事?」
「まあ、流石に食える人数は決まってるからな。とは言え、そんなにカツカツなもんじゃない。どの種族にもある程度通達されてる程度の物だ」
「なるほどね。贅沢を言わなければか。もし破ったらどうなる?」
「追放だな」
「出れないって聞いたけど?」
「そうさ、どこにも行く場所が無い。食う物も例えば陰を倒しまくって稀に出てくる食料で食いつなげるか?無理さ。水源を荒らせばムシャマッシュに勝てるか?無理さ」
ムシャマッシュはやっぱり強かったのか、まあ自分も理不尽を言われなければ、暴れる気は無いし。
当分は真面目に仕事をこなすとしますか。