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434.面倒臭い陰

 真っ直ぐ進んでいると、陰が一つのそりと立ち上がり、行く手を阻む。


 面倒なので、避けようとしても移動してわざわざ道を塞がれた。


 『我を従えたければ、力を示せ!我は弱い者には従わぬ!陰の力を借りずに己の力のみで、向かって来い』


 「いや、従える気ないので、通っていいですかね?」


 『駄目だ!力を示せ!』


 「じゃあ、遠回りするからいいです」


 『駄目だ!我と戦うのだ!』


 相手は巨人とでも言うのか、二足歩行の人型で自分の倍近い背の高さだ。


 誰がこんなのと戦うのだろうか?


 「一応聞きたいんですけど、陰の力は借りないとして武器は使ってもいいんですか?」


 『無論!武器を扱うのも力の内だ。我はこれを使う』


 そう言って、陰で出来た棍棒を一振りする。


 先に行くほど太くなる、まるでどこかから引っこ抜いてきた丸太を振るっているようにも見えなくもない。


 「じゃあ、やりますか。ただ手紙を届けなきゃいけないので、それからでもいいですか?」


 『駄目だ!今だ!力を示せ!』


 駄目だこりゃ。何言っても駄目だ!って言われちゃう。


 剣を抜くと、巨人の陰も構えた。


 さっと距離を詰めるが、相手も巨体に似合わぬ動きで、自分を阻むように棍棒を振り回す。


 とは言え自分のスピードの方が圧倒的、軽く緩急をつけて避け、


 不用意に振り回したのが仇になったね!一応こっちもそれなりに膂力持ってるのよ。


 と、相手の力の入りそうの無い方向から棍棒を打ち上げ、


 そのまま裸足の小指を剣でぶっ叩く。


 『アイター!!!』


 片足上げて飛び跳ねた所に、反対脚の脛を体ごと回転して、遠心力でぶん殴る。


 引っこ抜かれるように足が浮き、うつぶせに転んだ所で脚を適当に<掴み>


気脈術 冷気


 凍って動かなくなった所で、狙うのは人体急所・・・、尾骶骨


 <犠牲>で生命力を捧げ、


武技 縮砲


 人なら動けなくなる尾骶骨をぶち折る。


 誰でも尻餅を着いた時、尾骶骨を打って動けなくなった事の一度や二度はあるだろう。


 うつぶせのまま震え、動けなくなる巨人。


 転がることすら出来ずに、呻いている。


 「どうする?続ける?もっと痛いことも出来るよ?」


 『うぐぐ、ふんぐ・・・』


 「そう・・・じゃあ、続けるね」


 やっぱり頭かな~と剣をくるくる回しながら、近づくと、明らかに怯み始める陰。


 『や、やめろ・・・分かった。お前は強い。望みを言え』


 「じゃあ、今後自分がこの道通っても邪魔しないでね」


 『分かった!邪魔しない。それで我の力は必要か?』


 「いや、別に。今は自分なりに 色々やってみたいから、いいや」


 『それだけの強さがありながら、まだ強さを求めるとは感心した!我もついていこう』


 「いや、もう同伴者いるからいいや」


 『ごめんね!今僕が一緒だから、もっと気の合うヒトが現れるまで、我慢してね』


 『なんと~・・・』


 そう言って、その場で不貞寝し始める巨人の陰。


 単純に強いだけなら、寧ろ自分は自分を鍛えてる所だから、ノーセンキュー。


 イタチがいると言う北に向かう。


 しかし、まぁ、陰は塩対応じゃないけど、個性が強いな。


 一方的だけど、対応できればリターンが有るって言うね。


 今のところ、そんなに強い陰に会ってないのは運がいいのか悪いのか。


 しかし、普通のプレイヤーならあんなに痛がらないし、面白いっちゃ面白いよな~。


 別に痛めつけて楽しむとかじゃなくて、リアクションがさ!


 そして、居住地っぽい場所に辿り着く。


 エルフ?風の居住地と比べるとかなり原始的。差別か?


 強制労働の無理強いとかか?ちょっと自分そういうの嫌いだぞ!


 居住区を覗くと割りと普通の様子のイタチ。


 汚い色のオコジョみたいだが、別に薄汚れているとかじゃなく、普通にそういう色のヒトサイズのイタチ。


 「何か用か?」


 ちょっと高めの可愛い声のイタチに横から声を掛けられた。


 「どうも、手紙を届けに来たんですけど」


 「そうか、あの少し大きめの家に持っていけ」


 それだけ言って、立ち去ってしまったので、大きめの家に向かう事にする。


 余所者が来ても過剰反応は無し、か。


 大きな家だが、水源近くの長い草を編んだような質素な家。


 ノックのしようも無いので、外から声を掛ける。


 「すみませ~ん!お手紙です~」


 「入ってきな」


 中から声が掛かるが、しわがれたお婆ちゃん風の声だ。


 扉と言うほどの物でもないが、草をかき上げ中に入り、手紙と木板を差し出す。


 中央に半球状に掘られた浅い穴で何かを煮炊きしてるようだが、


 あっさり手紙を受け取り、木切れに長い爪で、何か傷つけると返してきた。


 会話をする暇も無い。


 「それじゃ、失礼します」


 「あんた、余所者だね」


 「ええ、まあ、よく分かりましたね」


 「ここいらじゃ、余所者は珍しいからね。うちにも外に興味がある若いやつはいるが、あまり刺激しないでおくれよ」


 「はぁ、ちょっと何の事か分からないですけど、心得ました」


 なんか、一言忠告されたけど、どういうことだろう?


 外に出たけりゃ、出ればいいのに。やっぱり強いられてるのかな?

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[良い点] あ し の こ ゆ び [一言] >「何か様か?」 用か? ではないでしょうか
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